車の乗り心地と固有振動数
物はすべて、外から力を加えなくても、ひとりでに揺れ続ける性質を持っています。この揺れのことを固有振動といい、揺れの速さを表すのが固有振動数です。身近な例で考えてみましょう。公園にあるブランコを一度押すと、しばらくの間は同じリズムで揺れ続けます。この一定のリズムこそがブランコの固有振動数です。ブランコの鎖の長さを変えると、揺れの速さも変わります。つまり、固有振動数は物の大きさや形で変わるのです。車にも、固有振動数があります。車は、多くの部品が組み合わさってできています。車体、座席、タイヤ、サスペンション(ばね)など、それぞれの部品が固有振動数を持っています。そして、車全体としても固有振動数を持っています。これは、車体の大きさや重さ、サスペンションの強さ、タイヤの空気圧など、様々な要素によって決まります。
車の固有振動数は、乗り心地に大きく関係します。道路の凸凹やエンジンの振動など、外からの振動が車の固有振動数と一致すると、共振という現象が起こります。共振が起こると、振動が大きくなり、不快な揺れを感じます。例えば、特定の速度で走っている時に、車体が大きく揺れたり、ハンドルが震えたりする場合は、共振が起こっている可能性があります。乗り心地の良い車は、固有振動数をうまく調整することで、共振しにくいように設計されています。具体的には、サスペンションの硬さを調整したり、車体の構造を工夫したりすることで、固有振動数を変化させ、共振を避けています。また、タイヤの空気圧も固有振動数に影響を与えます。適切な空気圧を保つことで、乗り心地を良くし、車の安定性を高めることができます。このように、固有振動数を理解することは、車の設計や運転において非常に重要です。