車の転がり疲れ:そのメカニズムと影響
くるまを走らせるためには、様々な部品が滑らかに動くことが必要です。部品同士が触れ合う部分には、負担を軽くするために、軸受けと呼ばれる部品が使われています。軸受けには、小さな金属の球やローラーが入っていて、これらがくるくると回ることで、大きな部品もなめらかに動かすことができます。
しかし、重い部品を支えながら回転を続けると、小さな球やローラーの表面には、想像以上の力が加わります。これは、人がずっと同じ場所に立ち続けると、足の裏が疲れるのと同じです。軸受けの中の小さな球やローラーも、繰り返し強い力が加わることで、だんだん疲れてきます。これが「転がり疲れ」と呼ばれる現象です。
転がり疲れは、金属の表面に、目には見えない小さなひび割れを作ることから始まります。ひび割れは次第に大きくなり、やがて金属の表面が剥がれ落ちたり、割れたりすることがあります。これは、地面に何度も重いものを落とすと、地面がひび割れていく様子に似ています。
近年のくるまは、より速く、より力強く走るようになりました。そのため、エンジンや変速機といった、動力の流れを伝える部分にかかる力も、以前より大きくなっています。力が大きくなればなるほど、軸受けにかかる負担も増え、転がり疲れを起こしやすくなるのです。
転がり疲れを防ぐためには、強い材料を使う、表面を滑らかにする特別な処理をする、滑りを良くする油の性能を高めるなど、様々な工夫が凝らされています。まるで、足の裏を守るために、丈夫な靴を履いたり、滑り止めをつけたり、マッサージをしたりするようなものです。
転がり疲れは、部品の寿命を縮めるだけでなく、最悪の場合、くるまの故障につながり、安全な運転を脅かす可能性もあります。転がり疲れの発生を早期に見つけ、適切な対策をすることで、安全で快適な運転を続けることができるのです。