車づくりの原点:クレイモデル
車作りは、まるで芸術作品を仕上げるような、幾重もの工程を経て完成へと至ります。その中でも、車の外観デザインを決める作業は、車の印象を決定づける重要な出発点と言えるでしょう。デザイナーが頭に描いたイメージを現実世界へと具現化するために、様々な手法が用いられます。近年ではコンピューター技術が発達し、画面上で精巧な3次元模型を自由に操ることも可能になりました。しかし、実物大の模型を作るという昔ながらの作業工程は、今もなお重要な役割を担っています。粘土のような素材を用いて実物大の模型を作る工程は、デザイナーの頭に描いたイメージを手で触れられる形へと変えていく、まさに「ものづくり」の原点と言えるでしょう。この模型は、単なる飾り物ではありません。デザイナーだけでなく、開発技術者や会社の経営陣など、様々な立場の人々がこの模型を囲み、様々な角度から眺め、光を当てて陰影の変化を確かめ、時には実際に触れてみて、意見を出し合います。画面上では決して得られない、実物ならではの質感を確かめることで、デザイン上の問題点を早期に発見し、修正していくことができるのです。例えば、微妙な曲線の美しさや、光の反射具合、全体のバランスなど、画面上では気付きにくい細かな部分も、実物大の模型を通して確認することで、初めて見えてくるものがあります。このような模型を使った共同作業を通して、関係者全員が納得できるまで検討を重ね、最終的な車の形が決定されていくのです。まさに、車づくりの心臓部とも言える工程と言えるでしょう。