NSP

記事数:(1)

機能

ニュートラルステアポイント:車の操縦安定性の鍵

車を横から押すと、くるりと回ってしまうことがあります。まるでコマのように。しかし、押す場所をうまく調整すると、車は回転せずに、そのまま横に移動します。この、回転せずに済む特別な場所のことを、ニュートラルステアポイント(NSP)と言います。 車を上から見て、中心線を引いてみましょう。この線に対して横から力が加わると、車は回転しようとします。ところが、力が加わる場所がNSPと一致すると、回転する力が生まれないのです。まるで、シーソーの支点のように、バランスが取れた状態になります。 このNSPは、車の設計においてとても大切な要素です。なぜなら、NSPの位置によって、車の安定性が大きく変わるからです。NSPの位置が適切であれば、ドライバーは思った通りに車を操縦できます。急なハンドル操作でも、車が不安定になることなく、スムーズに曲がることができます。逆に、NSPの位置が適切でないと、少しのハンドル操作でも車がふらついたり、思った方向に進まなかったりして、大変危険です。 では、NSPの位置はどこで決まるのでしょうか?それは、車の様々な要素が複雑に絡み合って決まります。例えば、車の重心位置。重い荷物を積んだトラックと、軽い乗用車では、重心位置が違いますから、NSPの位置も変わります。また、タイヤの性能も重要です。グリップ力の高いタイヤと低いタイヤでは、同じ力でも車の動きが変わります。さらに、サスペンション、つまり、タイヤと車体をつなぐバネやダンパーの設計もNSPに影響を与えます。 自動車メーカーは、安全で快適な車を作るために、NSPの位置を最適な場所に設定しようと様々な工夫をしています。コンピューターを使った模擬実験や、実際の走行テストを繰り返し行い、最適なNSPを見つけるのです。NSPを理解することは、車の動きを理解する上でとても大切です。