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車の開発

車の音響測定:快適な車内空間を実現するために

音響測定とは、音を数値として捉え、その性質を明らかにする技術のことです。音は空気の振動であり、この振動の大きさや速さ、波の形といった様々な要素が組み合わさって、私たちの耳に届きます。しかし、人の耳による音の感じ方は、体調や気分、年齢などによって変化しやすく、客観的な評価は難しいものです。そこで、音響測定機器を用いることで、音の性質を物理的な量として正確に捉え、数値化することが可能になります。 音響測定で得られる数値は様々ですが、代表的なものとしては音の大きさ(音圧)、高さ(周波数)、音の強さ(音のエネルギー量)などが挙げられます。これらの数値を分析することで、騒音の発生源を特定したり、不快な音の原因を突き止めたりすることができます。自動車の開発においては、この音響測定技術が重要な役割を担っています。 例えば、車内を静かで快適な空間にするために、走行中の様々な騒音を測定し、その発生源を特定します。ロードノイズや風切り音、エンジン音など、様々な音が複雑に混ざり合って車内に響くため、音響測定によってそれぞれの音の大きさと周波数を分析し、どの音が騒音の原因となっているかを特定します。そして、吸音材や遮音材の配置などを工夫することで、騒音を効果的に低減することができます。 また、エンジン音や排気音は、自動車の個性や性能を表現する重要な要素です。音響測定を用いることで、これらの音を意図的に調整し、心地よい、あるいは力強い音を作り出すことができます。スポーツカーの迫力あるエンジン音や、高級車の静かで上品なエンジン音など、音響測定は自動車の音作りに欠かせない技術となっています。音響測定によって得られた客観的なデータは、自動車の快適性や性能向上に大きく貢献していると言えるでしょう。
車の構造

車の静粛性を高める制振材

車は、走っている間ずっと、エンジンや路面からの様々な揺れに晒されています。これらの揺れは、車体を伝わり、車内に不快な騒音や振動として伝わってきます。快適な運転を楽しむためには、これらの揺れをしっかりと抑え込むことがとても大切です。そこで活躍するのが「制振材」です。「制振材」は、車体に伝わる揺れの力を吸収し、熱に変えることで、揺れを小さくする材料です。 制振材には様々な種類があり、材質もゴムのようなものや樹脂のようなものなど、多岐に渡ります。それぞれ特性が異なり、使う場所や目的に合わせて最適なものを選ぶ必要があります。例えば、エンジンルームのような高温になる場所では、熱に強い制振材を選ぶ必要がありますし、床下などには、水や泥に強い制振材を選ぶ必要があります。 制振材の効果は、騒音や振動の低減だけにとどまりません。車体の強度を高める効果もあります。制振材を貼ることで、車体の鉄板が補強され、よりしっかりとしたボディになります。これは、走行時の安定性向上にも繋がります。 制振材は、新車を作る段階で、あらかじめ車体の様々な場所に貼り付けられています。ドアの内側や床下、天井など、見えない部分にもしっかりと制振材が貼られており、静かで快適な車内空間を実現しています。また、既に走っている車にも、後から制振材を追加で取り付けることができます。気になる箇所に制振材を貼ることで、更なる静粛性や快適性の向上を期待できます。このように、制振材は、快適な車内空間を作る上で、なくてはならない存在と言えるでしょう。
機能

加速時の車内騒音:快適な運転のための静音設計

車を走らせる時、車内の静かさはとても大切です。特に速度を上げる時は、エンジンの回転数が上がり、色々な音が発生しやすくなります。この加速時の騒音を抑えることは、運転する人と同乗する人が快適に移動するために欠かせません。ここでは、加速時に車内で聞こえる騒音がどのように発生するのか、そしてその騒音を小さくするための工夫について説明します。 まず、エンジン音が挙げられます。エンジンは、速度を上げるためにより多くの燃料を燃やし、激しく動きます。この動きによって振動が発生し、それが音となって車内に伝わります。特に高回転時には、この振動が大きくなり、より大きな音が発生します。次に、排気音です。燃えた燃料から出るガスは、排気管を通って車外に出されますが、この際にも音が発生します。速度を上げる時はより多くのガスが排出されるため、排気音も大きくなります。さらに、タイヤと路面の摩擦音も大きくなります。速度が上がるにつれて、タイヤと路面の間の摩擦が大きくなり、その分大きな音が発生します。路面の状況によってもこの音の大きさは変化し、荒れた路面ではより大きな音が発生します。 これらの騒音を小さくするために、様々な工夫が凝らされています。例えば、エンジンルームや車体内部に吸音材や遮音材を取り付けることで、音を吸収したり、音を遮断したりします。これらの材料は、音を熱エネルギーに変換することで吸収したり、音の通り道を塞ぐことで遮断したりする効果があります。また、排気管に消音器を取り付けることで、排気音を小さくします。消音器は、排気ガスの流れを調整したり、音を吸収する構造を持つことで、排気音を抑えます。タイヤについても、静粛性に優れたタイヤが開発されています。これらのタイヤは、特殊な溝のパターンやゴムの配合によって、路面との摩擦音を小さくする工夫がされています。その他にも、車体の形状を工夫することで、空気の流れをスムーズにして風切り音を小さくする技術も開発されています。