滑らかな走りを実現する流体動力
車は、静止状態から滑らかに動き出し、自在に速度を変えることができます。この快適な運転を支える技術の一つに、「流体の力」を使った動力伝達機構があります。これは、水や空気のように流れる性質を持つ物質、すなわち流体が持つ運動の力を利用する仕組みです。
自動で変速する装置を持つ車では、この流体の力を用いて、回転する力を持つ機械からタイヤへと動力を伝えています。具体的には、回転する機械の回転力はまず、羽根車を持つ「ポンプ」と呼ばれる装置に伝わります。この羽根車は、ちょうど扇風機のように、回転することで周りの空気を動かします。しかし、扇風機が空気を動かすのに対し、ポンプは油を動かします。ポンプの中の羽根車が回転すると、中の油に勢いがつき、油は運動の力を持つようになります。この油が持つ運動の力こそが、流体の力です。
回転する機械の力は、ポンプによって油の力に変換され、この油の力はさらに別の羽根車を持つ装置である「タービン」へと伝えられます。タービンはポンプとは逆に、油の流れを受けることで羽根車を回転させます。まるで、水路を流れる水が水車を回す様子を思い浮かべてみてください。勢いよく流れる油がタービンの羽根車を回転させることで、回転する機械の力は最終的にタイヤへと伝わり、車は動き出します。
このように、流体の性質を利用することで、滑らかで力強い発進と加速が可能になります。油の流れを調整することで、エンジンの回転力を効率的にタイヤに伝えることができ、スムーズな運転を実現しているのです。まるで、自転車のギアチェンジのように、状況に応じて適切な力の伝達を可能にしていると言えるでしょう。