二つの顔を持つサスペンション
車のことを知りたい
先生、デュアルモードサスペンションって、どういう仕組みなんですか?名前からすると、サスペンションを切り替えられるんですよね?
車の研究家
その通り!サスペンションの特性を状況に合わせて切り替えられる仕組みだよ。昔、三菱ミラージュっていう車に搭載されていたデュアルモードサスペンションは、計器盤のスイッチで切り替えて、ショックアブソーバーの硬さとスタビライザーの働き具合を変えていたんだ。
車のことを知りたい
へえー、スイッチで切り替えるんですね!具体的にどんな風に変わるんですか?
車の研究家
例えば、スポーツモードにすると、サスペンションが硬くなって、カーブでのふらつきが少なくなる。一方、ツーリングモードにすると、サスペンションが柔らかくなって、乗り心地が良くなるんだ。最近は電子制御で細かく調整できるものが主流になっているよ。
デュアルモードサスペンションとは。
車の用語で『二つの状態にできるサスペンション』というものがあります。これは、サスペンションの働きを二つの状態に切り替えられる仕組みのことです。1987年に三菱ミラージュに搭載された二つの状態にできるサスペンションは、運転席にあるスポーツとツーリングの切り替えボタンで、前後輪の衝撃を和らげる部品の強さと、前輪の揺れを抑える部品の働き具合を変える仕組みでした。揺れを抑える部品は、繋ぎ目に油圧の筒を取り付けて、ねじり棒の太さを変えられるようにしていました。一方、ほぼ同じ時期に発売された三菱ギャランの活動的なサスペンションには、高さ、スポーツ、自動、やわらかさの四つの状態を選べるボタンがついていて、車の姿勢と衝撃を和らげる強さを四つの状態から、車高を三つの状態から選べるようになっていました。今では、電気で制御する方式や、ある程度自動で制御するサスペンションの状態切り替えが主流となっています。
サスペンションの役割
車は道路を走る際に、どうしても道路の凸凹や段差といった様々な衝撃を受けてしまいます。これらの衝撃は、乗っている人の快適さや車の安定した走行に悪い影響を与えます。そこで、車体とタイヤの間には、これらの衝撃を和らげるための装置であるサスペンションが取り付けられています。サスペンションは、ちょうどクッションのように、路面からの衝撃を吸収し、乗っている人が快適に過ごせるようにするだけでなく、タイヤを路面にしっかり接地させることで、車の操縦安定性を保つという重要な役割も担っています。
サスペンションは、主にばねと緩衝器という二つの部品から構成されています。ばねは、金属で出来たコイルや板状のものが用いられ、路面からの衝撃を吸収する役割を担います。ばねは衝撃を受けると縮み、その衝撃のエネルギーを蓄えます。そして、蓄えたエネルギーを使って元の長さに戻ろうとします。この伸縮運動によって、路面からの衝撃を和らげます。しかし、ばねだけでは、一度縮んだ後に何度も伸縮を繰り返してしまい、車が揺れ続けてしまいます。そこで、ばねの動きを制御するのが緩衝器の役割です。緩衝器は、ばねの振動を抑制する装置で、ばねが伸び縮みする際に発生するエネルギーを熱に変換して吸収し、振動を素早く収束させます。
ばねと緩衝器が協調して働くことで、快適な乗り心地と安定した走行性能が両立されています。道路の状態や走行状況は常に変化するため、サスペンションにはどんな状況にも対応できる柔軟性が求められます。そのため、近年ではコンピューター制御でサスペンションの硬さを自動的に調整する技術なども開発され、様々な車に搭載されています。これらの技術により、乗員は快適な乗り心地を維持しながら、より安全で安定した運転を楽しむことができるようになっています。
二つのモードを持つサスペンション
二つの顔を持つ仕掛け、それが二つのモードを持つサスペンションです。この仕組みは、路面からの衝撃を和らげる部品の硬さを、状況に応じて変えることができます。まるで硬くなったり柔らかくなったりするバネのようです。
街中をのんびり走りたい時、路面には小さな凹凸がたくさんあります。そんな時はサスペンションを柔らかくすることで、まるで絨毯の上を走るように揺れを少なくできます。体の揺れが少ないので、同乗者も快適に過ごせるでしょう。
一方、速い速度で走る時、例えば高速道路や曲がりくねった山道などでは、車体が傾きすぎると危険です。このような場面では、サスペンションを硬くすることで車体の傾きを抑え、しっかりと路面を捉え続けることができます。安定した走りで、運転する人も安心です。
この二つのモードの切り替えは、車種によって様々です。自動で切り替わるものもあれば、運転席のボタンで自分で切り替えるものもあります。
例えば、車速やハンドル操作、路面の状況などを自動で判断して、最適なモードに切り替える車種もあります。また、運転者の好みに合わせて、ボタン一つで切り替えられる車種もあります。街乗りでは柔らかく、山道では硬くと、まるで自分の運転に合わせてくれる相棒のようです。
このように、二つのモードを持つサスペンションは、様々な路面や運転の状況に合わせて、快適性と走行性能の両立を目指した、賢い仕組みと言えるでしょう。
モード | 路面状況 | サスペンション | 効果 |
---|---|---|---|
ソフト | 街中、小さな凹凸 | 柔らかい | 揺れが少ない、快適な乗り心地 |
ハード | 高速道路、山道 | 硬い | 車体の傾きを抑える、安定した走り |
初期の二つのモードを持つサスペンション
昭和六十二年に三菱自動車工業から売り出されたミラージュには、二つの姿を持つ画期的な仕掛けが備わっていました。それは、計器盤のスイッチ一つで、乗り心地と操縦性を大きく変える、二つのモードを持つサスペンションです。この仕掛けの心臓部は、ショックアブソーバーと呼ばれる、路面の凹凸を吸収する部品と、スタビライザーと呼ばれる、車体の傾きを抑える部品でした。 ショックアブソーバーは、路面からの衝撃を和らげる働きをしますが、その吸収力は、スイッチ操作によって変化させることができました。
ミラージュの二つのモードを持つサスペンションのもう一つの特徴は、スタビライザーの働きを油圧の力で巧みに操ることでした。スタビライザーは、左右の車輪を繋ぐ棒のような部品で、カーブを曲がるときに車体が傾くのを抑える役割を果たします。ミラージュでは、油圧の力を用いて、このスタビライザーの効き具合を変化させることで、乗員に優しい穏やかな乗り心地と、スポーティな走りを両立させていました。
同時期に売り出されたギャランには、さらに進んだ「動くサスペンション」が搭載されていました。この「動くサスペンション」は、車高やショックアブソーバーの減衰力だけでなく、車体の姿勢までを総合的に制御する画期的なシステムでした。四つの走行モードから選ぶことができ、高速道路での安定した走りから、山道での軽快な走りまで、様々な路面状況に合わせて、最適な乗り心地と操縦性を実現していました。
ミラージュの二つのモードを持つサスペンションと、ギャランの「動くサスペンション」は、共に当時の最先端技術を結集した画期的なシステムでした。これらの技術は、後に電子制御サスペンションへと発展し、現在の自動車の乗り心地と操縦性を向上させる礎となりました。まさに、自動車技術の進化における重要な一歩と言えるでしょう。
車種 | サスペンションの種類 | 特徴 | 制御対象 | モード数 |
---|---|---|---|---|
ミラージュ | 2モードサスペンション | スイッチ操作で乗り心地と操縦性を変更 ショックアブソーバーの吸収力とスタビライザーの効き具合を油圧で制御 |
ショックアブソーバーの吸収力、スタビライザーの効き具合 | 2 |
ギャラン | 動くサスペンション | 車高、ショックアブソーバーの減衰力、車体の姿勢を総合的に制御 | 車高、ショックアブソーバーの減衰力、車体の姿勢 | 4 |
現在の二つのモードを持つサスペンション
近年の車は様々な電子技術が用いられ、車体を守るしくみもより複雑になっています。特に、路面からの衝撃を吸収するサスペンションは、電子制御によって大きく進化しました。現在主流となっているのは、二つの走行状態を選べるサスペンションです。
一つは、全てを自動で制御する方式です。これは、様々な場所に設置された装置が路面の状況や車体の動きを測り、その情報をもとに計算機が最適な衝撃の吸収具合を自動的に調整するしくみです。路面が平らな場所では柔らかく、凸凹のある場所では硬くと、瞬時に状態に合わせて変化することで、常に快適な乗り心地と安定した走行を両立できます。
もう一つは、半分自動で制御する方式です。こちらは、衝撃を吸収する部品の硬さを電気的に変化させることで、様々な路面状況に対応します。全て自動の方式と同じように、路面に合わせて最適な硬さに調整されますが、制御の方法は少し異なります。
どちらの方式も、従来の機械仕掛けだけのものと比べて、より細かな制御が可能です。これにより、乗り心地と走行性能は格段に向上しました。さらに、運転手が自分で状態を選べる車もあり、道路状況や自分の好みに合わせて自由に設定を変更できます。例えば、高速道路では安定性を重視した硬めの設定に、街中では快適性を重視した柔らかめの設定にと、状況に応じて切り替えることで、より快適で安全な運転を楽しむことができます。
サスペンションの種類 | 制御方式 | 特徴 |
---|---|---|
全自動制御式 | 路面状況や車体の動きをセンサーで測定し、コンピュータが最適な衝撃吸収具合を自動調整 | 路面状況に合わせて瞬時に硬さを変化させ、常に快適な乗り心地と安定した走行を両立 |
半自動制御式 | 衝撃吸収部品の硬さを電気的に変化させ、様々な路面状況に対応 | 全自動制御式と同様に路面状況に最適化、制御方法が若干異なる |
今後の展望
自動車のこれからを考える時、欠かせないのがサスペンションの進化です。これまで、サスペンションは路面の凸凹を吸収し、乗員の揺れを抑えることが主な役割でした。しかし、自動運転技術の進歩に伴い、サスペンションには更なる高性能化が求められています。
近年の自動運転技術は、周囲の状況を認識し、適切な運転操作を行うまでに進化しています。この技術と連動することで、サスペンション制御は新たな段階へと進むでしょう。路面状況や走行環境を予測し、前もってサスペンションを調整することで、これまでにない安全で快適な乗り心地を実現できる可能性を秘めています。例えば、カーブに差し掛かる前にサスペンションを硬くすることで、車体の傾きを抑え、安定した走行を可能にします。また、路面の凸凹を予測し、あらかじめサスペンションを柔らかくすることで、振動を吸収し、快適な乗り心地を実現します。
さらに、サスペンションは環境性能の向上にも貢献できる可能性を秘めています。路面からの振動エネルギーは、通常は熱として失われてしまいますが、これを回収して発電に利用する技術が研究されています。この技術が実用化されれば、燃費向上に繋がり、地球環境への負荷軽減に貢献できるでしょう。
快適な乗り心地と優れた走行性能を両立させるデュアルモードサスペンションも、進化を続けていくでしょう。状況に応じてサスペンションの硬さを自動的に調整するこの技術は、今後の自動車開発において重要な役割を担うと考えられます。より高度な制御技術や、軽量かつ高強度な新素材の開発などを通して、サスペンションは更なる進化を遂げ、自動車の未来を形作っていくと期待されています。
ポイント | 説明 |
---|---|
サスペンションの進化 | 自動運転の進歩に伴い、更なる高性能化が求められている。 |
路面状況や走行環境の予測 | カーブや路面の凸凹を予測し、事前にサスペンションを調整することで、安全で快適な乗り心地を実現。 |
環境性能の向上 | 振動エネルギーを回収し発電に利用する技術を研究。燃費向上に貢献。 |
デュアルモードサスペンション | 状況に応じてサスペンションの硬さを自動調整。 |
まとめ
自動車の乗り心地と操縦安定性を両立させる夢の技術、それが二つの顔を持つ緩衝装置です。この画期的な装置は、路面の凹凸を吸収して乗員に快適な乗り心地を提供するだけでなく、カーブや加減速時にも車体の傾きを抑え、安定した走行を実現します。
初期の頃は、機械的な仕組みで二つのモードを切り替えていました。例えば、油圧や空気圧を利用して、高速走行時には硬く、低速走行時には柔らかく緩衝装置の特性を変化させていました。しかし、この方式では切り替えに時間がかかり、複雑な路面状況に瞬時に対応することは困難でした。
近年、電子制御技術が飛躍的に進歩したことで、二つの顔を持つ緩衝装置は劇的な進化を遂げました。電子制御式の緩衝装置では、様々な状況に合わせて瞬時に緩衝装置の硬さを調整することが可能です。路面の凹凸や車速、ハンドル操作、ブレーキ操作など、様々な情報をセンサーが感知し、コンピューターが最適な緩衝装置の状態を判断して制御します。これにより、滑らかで快適な乗り心地と、スポーティーな操縦安定性を両立することが可能になりました。
例えば、高速道路を走行する際には、緩衝装置を硬くすることで車体の安定性を高め、ふらつきを抑制します。一方、街中を低速で走行する際には、緩衝装置を柔らかくすることで路面の凹凸を吸収し、快適な乗り心地を実現します。急ブレーキを踏んだ際や急なハンドル操作を行った際にも、車体の傾きを瞬時に制御し、安定した姿勢を保ちます。
この二つの顔を持つ緩衝装置は、運転する人の好みや、その時々の道路状況に合わせて細かく調整できるため、乗る人すべてに最適な乗り心地を提供することができます。さらに、自動運転技術との連携も期待されており、より安全で快適な自動運転の実現に貢献する可能性を秘めています。様々な自動車製造会社がこの革新的な技術の開発にしのぎを削っており、今後の更なる進化から目が離せません。
項目 | 説明 |
---|---|
機能 | 路面の凹凸吸収による乗り心地向上と、車体傾き抑制による操縦安定性向上を両立 |
初期の方式 | 機械的な油圧・空気圧制御によるモード切替。切替速度が遅く、複雑な路面状況への対応は困難 |
電子制御式 | センサー情報に基づきコンピューター制御で緩衝装置の硬さを瞬時に調整。路面状況、車速、ハンドル・ブレーキ操作等に対応 |
電子制御式のメリット | 高速走行時の安定性向上、低速走行時の乗り心地向上、急ブレーキ・急ハンドル時の車体傾き制御 |
その他 | 運転者の好みや道路状況に応じた調整が可能。自動運転技術との連携にも期待 |