懐かしの足回り:ダイヤゴナルリンク式サスペンション

懐かしの足回り:ダイヤゴナルリンク式サスペンション

車のことを知りたい

先生、『ダイヤゴナルリンク式サスペンション』って、どんなものかよくわからないのですが…

車の研究家

そうだね、少し難しいね。簡単に言うと、昔の車、特に後ろにエンジンがある車に使われていたサスペンションの一種だよ。左右のタイヤがそれぞれ独立して動くようになっていて、部品の数を減らして費用を抑える工夫がされていたんだ。

車のことを知りたい

費用を抑える工夫ですか?でも、何か欠点もあったんですよね?

車の研究家

その通り。カーブを速く曲がるときに、車体が外側に傾きやすくなってしまうという欠点があったんだ。いすゞのベレットという車は、バネを工夫することでこの欠点を抑えていたんだよ。今では、もっと性能の良いサスペンションが開発されたから、ダイヤゴナルリンク式は使われていないけどね。

ダイヤゴナルリンク式サスペンションとは。

およそ50年前、後部エンジン車の後輪を支える仕組みに、「斜めにつなぐ方式の緩衝装置」というものがありました。これは、片持ち式の振り子の軸を、揺れ動く車軸のつなぎ目と同じ位置に合わせた、独立した吊り下げ方式です。当時高価だった、滑らかに動く速度調節の部品を省くことができました。しかし、強い力で曲がるとき、外側のタイヤが接地している点が支点となって持ち上がる力が働き、車体が浮き上がり、傾きを大きくしてしまう欠点がありました。前部エンジン後輪駆動車にも使われた例があり、1963年に発売されたいすゞのベレットは、緩衝装置の一部を、横に置かれた板バネに交換することで、車体の傾きにくさを抑え、安定性を高めました。現在では、回転速度を一定に保つためのつなぎ目が普及したため、片持ち式や、複数のつなぎ目を持つ方式が主流となっています。

機構の概要

機構の概要

斜めにつなぐ腕という名の、板ばねを使った繋ぎ方式は、半世紀ほど前に、後ろの車輪を動かす仕掛けを持つ車、特に後ろに機関のある車でよく使われていました。この繋ぎ方は、板ばねが斜めに配置されることで、車輪の上下運動と回転運動を同時に制御するという、独創的な構造を持っています。

具体的に説明すると、左右の後輪にはそれぞれ腕のような部品がついており、この部品が車体の中心に対して斜めに取り付けられています。この腕のような部品が、板ばねの役割を果たし、路面からの衝撃を吸収する役割を担います。この斜めの配置が、「斜めにつなぐ腕」の名前の由来となっています。

左右の車輪はそれぞれ独立して動くため、片方の車輪が段差に乗り上げても、もう片方の車輪には影響を与えず、安定した走行を続けることができます。また、独立して動くことで路面からの衝撃を効果的に吸収し、車内の揺れを抑え、乗り心地を良くします。

さらに、この方式には、当時高価だった部品を使う必要がないという大きな利点がありました。部品点数を減らすことで、製造費用を抑えることができ、より多くの人に利用しやすい車を作ることが可能となりました。

このように、斜めにつなぐ腕という名の繋ぎ方式は、独創的な構造と乗り心地の良さ、そして製造費用を抑えることができるという利点から、半世紀前の車において画期的な技術として広く採用されました。

特徴 説明
名称 斜めにつなぐ腕(板ばね式サスペンション)
構造 左右の後輪に斜めに取り付けられた板ばね状の腕が、車輪の上下運動と回転運動を同時に制御
機能・効果
  • 片輪が段差に乗り上げても、もう片方の車輪に影響を与えない安定した走行
  • 路面からの衝撃を効果的に吸収し、車内の揺れを抑え、乗り心地を向上
メリット 高価な部品を必要とせず、製造費用を抑えることが可能
普及時期 半世紀前
搭載車種 後輪駆動車(特に後部エンジン車)

利点と欠点

利点と欠点

斜め連結式懸架装置の最大の利点は、高額な滑り式等速継手が不要なことです。これは製造原価の抑制に大きく貢献し、当時の自動車製造会社にとって大きな利点となりました。部品数が少なく、構造も単純なため、組み立て工程も簡素化され、生産効率の向上にも繋がりました。また、滑り式等速継手のような複雑な部品を用いないため、故障のリスクも低く、整備の手間も軽減されました。これは、使用者にとっても維持費用を抑えることができるという点で大きなメリットでした。

しかし、この方式には大きな欠点も存在しました。それは、高速で曲がる際の車体の不安定さです。強い横方向の力が加わると、外側の車輪の接地点を支点として車体が持ち上がり、横揺れが増幅される現象が発生しました。これは、旋回時に外側の車輪に大きな荷重がかかり、懸架装置がそれを支えきれずに車体が傾いてしまうことが原因でした。具体的には、斜め連結式の構造上、外側の車輪が沈み込む際に、車軸が上方に移動する動きを伴います。この動きが、車体を支えるバネや緩衝器に横方向の力を発生させ、車体を傾ける方向に作用してしまうのです。

このため、高速走行時の安定性や操縦性に問題を残すこととなりました。特に、高速道路のような高い速度で走行する状況では、この不安定さが顕著に現れ、安全な運転を阻害する要因となりました。そのため、この懸架装置は、高速走行性能が求められるスポーツカーなどには採用されず、主に小型車や経済性を重視した車に用いられました。その後、技術の進歩により、より安定した独立懸架式が主流となり、斜め連結式は徐々に姿を消していきました。現在では、その簡素な構造から、一部の軽自動車や特殊用途車両などで採用される例があるものの、一般的な乗用車ではほとんど見られなくなっています。

項目 説明
利点
  • 高額な滑り式等速継手が不要
  • 製造原価の抑制
  • 部品数が少なく、構造が単純
  • 組み立て工程の簡素化、生産効率向上
  • 故障リスク低、整備の手間軽減
  • 使用者にとって維持費用抑制
欠点
  • 高速で曲がる際の車体の不安定さ
  • 横方向の力に対し、外側の車輪を支点に車体が持ち上がり、横揺れ増幅
  • 旋回時に外側の車輪に大きな荷重がかかり、懸架装置が支えきれずに車体が傾く
  • 高速走行時の安定性や操縦性に問題
結果
  • 高速走行性能が求められるスポーツカーなどには不採用
  • 主に小型車や経済性を重視した車に採用
  • 独立懸架式が主流となり、斜め連結式は徐々に姿を消す
  • 現在では、一部の軽自動車や特殊用途車両などで採用される例あり

採用事例

採用事例

斜め連結式の懸架装置は、昭和三十年代半ばに見られる機構で、いすゞ自動車の小型乗用車「ベレット」などが採用していました。昭和三十八年発売のベレットは、後輪にこの機構を取り入れていました。

斜め連結式の懸架装置は、左右の後輪を繋ぐ一本の板ばねを用いることで、部品点数を少なくし、簡素な構造を実現した画期的なものでした。しかし、高速走行時の旋回においては、車体が傾きやすく、不安定になるという課題がありました。そこで、ベレットでは、この問題を解消するために、板ばねの一部を横に配置した板ばね変更するという、独自の工夫が凝らされていました。

一般的に、車体の横揺れを防ぐための横揺れ剛性は、高い方が安定性が増すと考えられています。しかし、ベレットでは、あえて横揺れ剛性を弱めることで、車体の安定性を高めるという逆転の発想を採用しました。横に配置した板ばねは、車体が傾こうとする際に、適度に力を逃がす役割を果たします。これにより、過度な傾きを抑え、安定した走行を実現することができました。

この、横揺れ剛性をあえて弱めるという手法は、当時の自動車技術としては非常に斬新なものでした。ベレットは、この機構により、高速走行時の安定性と快適な乗り心地を両立し、高い評価を得ました。この技術は、後の自動車開発にも大きな影響を与え、様々な形で応用されていくことになります。ベレットの革新的な技術は、日本の自動車史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

名称 特徴 メリット デメリット 対策
斜め連結式懸架装置 左右の後輪を繋ぐ一本の板ばねを使用 部品点数が少なく、簡素な構造 高速走行時の旋回において、車体が傾きやすく、不安定 板ばねの一部を横に配置に変更
ベレットの改良型斜め連結式懸架装置 板ばねの一部を横に配置 横揺れ剛性を弱め、適度に力を逃がすことで、過度な傾きを抑え、安定した走行を実現 横揺れ剛性が低い

現在への影響

現在への影響

駆動軸と同じ速度で回転する連結部品である等速継手が、低価格で大量生産できるようになったことが、自動車の足回り、つまりサスペンションの仕組みを大きく変えました。かつて主流だった斜めに交差した棒を使う形式、ダイヤゴナルリンク式サスペンションは、現在ではほとんど見かけることがなくなりました。

この方式は、構造が単純で丈夫という利点がありました。部品点数が少なく、製造費用も抑えられました。しかし、路面の凹凸による車体の傾きや揺れを抑える能力は、あまり高くありませんでした。また、タイヤが路面をしっかりと捉える力、つまりグリップ力も十分とは言えず、車の操縦性に限界がありました。

現代の車は、より複雑な構造を持つサスペンションを備えています。例えば、半ば引きずるような動きをするアームを使う形式や、複数の棒を組み合わせた形式などが主流です。これらの方式は、多くの部品と高度な設計技術によって、車体の安定性と操縦性を飛躍的に向上させました。路面の凹凸を滑らかに吸収し、ドライバーの意図通りに車を操ることを可能にしています。

ダイヤゴナルリンク式サスペンションは、現代の車ではほとんど採用されていませんが、かつては自動車技術の進化を支えた重要な存在でした。単純な構造ながらも、乗り心地と操縦性の向上に貢献したその功績は、自動車の歴史の中で忘れられることはないでしょう。未来の技術革新の礎となった過去の技術として、その存在を記憶にとどめておくべきです。

サスペンションの形式 特徴 メリット デメリット
ダイヤゴナルリンク式 斜めに交差した棒を使う単純な構造 構造が単純で丈夫、部品点数が少なく、製造費用が安い 路面の凹凸による車体の傾きや揺れを抑える能力が低い、グリップ力が不足、操縦性に限界がある
現代の主流な形式 (例: 半引きずるアーム式、多リンク式) 複雑な構造、多くの部品、高度な設計技術 車体の安定性と操縦性が飛躍的に向上、路面の凹凸を滑らかに吸収、ドライバーの意図通りに車を操ることができる (記述なし)

技術の進歩

技術の進歩

乗り物の土台を支える技術は、常に進歩を続けています。かつて主流だった斜めにつなぐ板バネ式の緩衝装置は、車体の傾きや揺れを抑えきれないという難点がありました。しかし、技術の進歩により、これらの欠点は克服され、より優れた緩衝装置が次々と開発されてきました。

例えば、コンピューター制御の緩衝装置は、道の状態や車の動きに合わせて、バネの硬さや衝撃の吸収力を自動的に調整します。これにより、どんな道でも快適な乗り心地と安定した走りを実現しています。また、路面の凹凸をあらかじめ感知し、車体の傾きを積極的に制御する装置も登場しました。この装置は、急カーブでも車体を水平に保つことができ、高い走行性能と安全性を両立しています。

これらの技術革新は、ただ単に快適性や走行性能を向上させるだけではありません。ブレーキをかけた際の安定性向上や、車体の揺れを抑えることによる乗員の疲労軽減にも大きく貢献しています。また、近年注目されている自動運転技術においても、これらの緩衝装置の役割は非常に重要です。自動運転車は、人間の運転よりも精密な制御が必要となるため、高度な緩衝装置が不可欠です。

このように、乗り物の土台を支える技術は、安全性、快適性、そして未来の車社会の実現に欠かせない要素となっています。今後も更なる技術革新により、私たちの移動手段はより進化していくことでしょう。

緩衝装置の種類 特徴 効果
板バネ式 斜めにつなぐ板バネを使用 車体の傾きや揺れを抑えきれない
コンピューター制御式 道の状態や車の動きに合わせて、バネの硬さや衝撃の吸収力を自動調整 快適な乗り心地と安定した走り、ブレーキ時の安定性向上、乗員の疲労軽減
路面状態予測式 路面の凹凸をあらかじめ感知し、車体の傾きを制御 急カーブでも車体を水平に保ち、高い走行性能と安全性を両立、自動運転に不可欠

未来の展望

未来の展望

自動車の未来像は、電気で動く、自ら走るといった技術革新と共に大きく変わりつつあります。こうした変化は、車体を支え、乗り心地や操縦安定性を左右するサスペンションにも大きな影響を与えます。

まず、電気自動車では重い電池を積むため、従来よりも車体が重くなります。そのため、車体の重さに耐えつつ、軽くて丈夫なサスペンションが必要になります。軽くて丈夫な素材を使う、部品の配置や構造を見直すなど、様々な工夫が求められます。

次に、自動で運転する車では、乗る人の快適さがより重要になります。車は単なる移動手段ではなく、くつろぎの空間へと変わっていきます。そのため、路面の凹凸を吸収し、滑らかな乗り心地を実現する高度なサスペンションが求められます。路面状況や乗員の好みに合わせて、サスペンションの硬さを自動で調整する技術なども開発されています。

これらの技術革新を実現するために、様々な新しい素材や制御技術の開発が進んでいます。例えば、軽いのに強度が高い炭素繊維などの素材や、路面状況を細かく感知してサスペンションを制御する技術などが研究されています。これらの技術が組み合わさることで、未来の車は、より快適で安全な乗り心地を提供してくれるでしょう。

一方で、古い技術の中にも未来へのヒントが隠されているかもしれません。例えば、かつて使われていたダイヤゴナルリンク式サスペンションは、独特な構造を持っていました。この技術を現代の技術で再解釈することで、新しいサスペンションの開発に繋がる可能性もあります。過去の技術を学ぶことは、未来の技術を切り開く鍵となるかもしれません。

変化の要因 サスペンションへの影響 求められる技術
電気自動車の普及(重いバッテリー搭載) 車体の重さに耐えつつ、軽量で丈夫なサスペンションが必要 軽量で高強度な素材の利用、部品配置・構造の見直し
自動運転技術の発展 乗員の快適性向上のための高度なサスペンションが必要 路面状況や乗員の好みに合わせたサスペンション硬さの自動調整技術
技術革新 新しい素材や制御技術の開発が必要 炭素繊維などの軽量高強度素材、路面状況を感知するセンサーと制御技術
過去の技術の再評価 古い技術から新しい発想を得られる可能性 ダイヤゴナルリンク式サスペンションなどの再解釈と応用