はねかけ式潤滑:エンジンの潤滑方式
車のことを知りたい
先生、「はねかけ式潤滑方式」って、オイルを霧みたいに飛ばして潤滑する方法ですよね?それって、エンジン全体をそれで潤滑しているんですか?
車の研究家
いい質問だね。オイルを霧状にする、つまりオイルミストを作って潤滑するという意味では合っているよ。ただ、エンジン全体をそれで潤滑しているかというと、そうではないんだ。
車のことを知りたい
じゃあ、エンジンの一部だけ?どこを潤滑しているんですか?
車の研究家
ポンプでオイルを送り込む「強制潤滑方式」で届かない場所、例えば、シリンダーとピストンの間などを潤滑しているんだ。クランクシャフトが回転するときに、コンロッドという部品がオイルを跳ね上げて、それが霧状になって潤滑するんだよ。強制潤滑方式と併用されていると考えていいよ。
はねかけ式潤滑方式とは。
エンジン内部の部品に油を塗る方法の一つに「はねかけ式潤滑方式」というものがあります。これは、オイルを霧のように飛び散らせて潤滑する方法です。エンジンオイルを圧力で送り込んで潤滑する「強制潤滑」とは異なる方法です。具体的には、エンジンのクランクシャフトとコンロッドをつなぐ部分に、オイルをためておく小さなへこみがあります。そこに溜まったオイルを、回転する部品がひっかけることで、オイルが霧状に飛び散り、エンジン内部のすみずみまで油が行き渡る仕組みです。強制潤滑方式では、オイルを圧力で送り込めない場所、例えばピストンとシリンダーの間などは、オイルを霧状にして潤滑しています。この場合は「はねかけ潤滑」ではなく「霧状潤滑」と呼ぶことが多いです。
潤滑方式の種類
車の心臓部であるエンジンの中には、たくさんの金属部品が複雑に組み合わされています。これらの部品は高速で回転したり、上下に動いたりするため、激しい摩擦によって摩耗してしまうと、エンジンの性能が低下したり、最悪の場合は故障してしまいます。そこで、部品同士の摩擦と摩耗を減らすために、潤滑油、つまりエンジンオイルが使われます。このオイルをエンジン内部に行き渡らせる方法には、いくつかの種類があり、これを潤滑方式と呼びます。大きく分けると、強制潤滑方式とはねかけ式潤滑方式の二種類があります。
強制潤滑方式は、オイルポンプを使ってオイルを必要な場所に送り届ける方法です。ポンプでオイルを圧送するので、エンジンの隅々まで確実にオイルを行き渡らせることができます。まるで体中に血液を送り出す心臓のように、オイルポンプはエンジンにとって無くてはならない存在です。この方式は、現在のほとんどの車に使われており、安定した潤滑を実現できることが大きな利点です。高回転で回るエンジンや、大きな力を出すエンジンでも、しっかりと部品を保護することができます。
一方、はねかけ式潤滑方式は、エンジンの回転運動を利用してオイルをまき散らす方法です。回転する部品に付着したオイルが遠心力で飛び散り、周りの部品を潤滑します。この方式は、構造が簡単で費用を抑えられるという利点があります。しかし、オイルを確実に供給することが難しく、高回転で回るエンジンや大きな力を出すエンジンには適していません。そのため、現在では一部の小型エンジンや、あまり高性能を必要としないエンジンで使われています。
このように、潤滑方式にはそれぞれ特徴があり、エンジンの種類や用途に合わせて使い分けられています。高度な技術が求められる現代の自動車エンジンには、確実な潤滑を実現できる強制潤滑方式が主流となっています。
潤滑方式 | 説明 | 利点 | 欠点 | 適用エンジン |
---|---|---|---|---|
強制潤滑方式 | オイルポンプでオイルを圧送し、エンジン全体にオイルを行き渡らせる。 | エンジンの隅々まで確実にオイルを行き渡らせることができる。安定した潤滑を実現できる。 | – | 高回転/高出力エンジン、現代のほとんどの車 |
はねかけ式潤滑方式 | エンジンの回転運動を利用し、オイルをまき散らす。 | 構造が簡単。費用を抑えられる。 | オイルを確実に供給することが難しい。 | 小型エンジン、低出力エンジン |
はねかけ式潤滑の仕組み
くるまの心臓部である原動機には、なめらかに動くために潤滑油が欠かせません。潤滑油は金属同士の摩擦や摩耗を防ぎ、原動機の寿命を延ばす重要な役割を担っています。潤滑油を原動機の隅々まで届ける方法のひとつに「はねかけ式潤滑」と呼ばれるやり方があります。
はねかけ式潤滑は、原動機の回転運動を利用して潤滑油を飛び散らさせ、各部品に油を供給する仕組みです。原動機の土台部分には潤滑油をためておく油ますがあります。そして、原動機の主要な回転部品であるクランク軸には、コンロッドと呼ばれる棒状の部品が取り付けられています。このコンロッドの下部には、オイルジッパーと呼ばれる突起がついています。
原動機が動くと、クランク軸が回転し、コンロッドは上下に動きます。このとき、コンロッドの先にあるオイルジッパーが油ますに貯まった潤滑油をかき上げます。かき上げられた潤滑油は、まるで水がはねるように、細かい粒となって原動機内部に飛び散ります。この飛び散った潤滑油が、原動機の内部の壁や、クランク軸、コンロッド、そしてその他の可動部分に付着し、潤滑油の膜を作ります。この油の膜が金属同士の直接的な接触を防ぎ、摩擦や摩耗を低減するのです。
オイルジッパーの形状や大きさ、油ますの潤滑油の量は、原動機の特性に合わせて細かく調整されています。原動機の回転数や種類、使用する潤滑油の種類など、様々な条件を考慮して最適な設計を行うことで、はねかけ式潤滑でも十分な潤滑効果を得ることが可能になります。はねかけ式潤滑は、構造が単純で費用を抑えられるという利点があるため、小型の原動機などで広く使われています。
強制潤滑との違い
エンジンオイルはエンジンの血液とも呼ばれ、円滑な動作や冷却、摩耗を防ぐなど、重要な役割を担っています。そのオイルをエンジン内部に行き渡らせる潤滑方式には、様々な種類がありますが、代表的なものに「はねかけ式潤滑」と「強制潤滑」があります。
はねかけ式潤滑は、クランクシャフトの回転によってオイルを跳ね飛ばし、エンジン内部にオイルを届ける仕組みです。まるで水を上からまいて庭に水をやるように、比較的シンプルな構造となっています。この方式は部品点数が少なく、製造の手間もそれほどかからないため、小型エンジンや出力の低いエンジンに向いています。例えば、芝刈り機や耕運機などに使われているエンジンで見かけることがあります。しかし、高回転になるとオイルが遠心力で外側に偏ってしまい、必要な場所にオイルが届かなくなる可能性があります。また、潤滑できる範囲も限られるため、複雑な構造のエンジンには不向きです。
一方、強制潤滑はオイルポンプを使ってオイルをエンジン内部の隅々まで圧送する方式です。まるで水道管を使って各家庭に水を届けるように、確実にオイルを供給できます。この方式は、高回転時でも安定してオイルを供給できるため、高出力・高回転のエンジンや複雑な構造のエンジンに適しています。例えば、自動車やオートバイのエンジンなどによく採用されています。オイルポンプやそれに付随する部品が必要となるため、はねかけ式に比べると構造は複雑になり、製造の手間もかかりますが、確実な潤滑性能を得られることが大きな利点です。
このように、はねかけ式潤滑と強制潤滑はオイルの供給方法が大きく異なり、それぞれに利点と欠点があります。エンジンの種類や用途に合わせて、最適な潤滑方式が選ばれています。
項目 | はねかけ式潤滑 | 強制潤滑 |
---|---|---|
仕組み | クランクシャフトの回転でオイルを跳ね飛ばす | オイルポンプでオイルを圧送 |
構造 | シンプル | 複雑 |
メリット | 部品点数が少なく、製造が容易 小型・低出力エンジン向け |
確実な潤滑 高出力・高回転、複雑なエンジン向け |
デメリット | 高回転時に潤滑不足になる可能性 潤滑範囲が限られる |
構造が複雑 製造の手間がかかる |
例 | 芝刈り機、耕運機 | 自動車、オートバイ |
はねかけ式潤滑の適用範囲
はねかけ式潤滑は、回転する部品が油の入った容器に一部浸かっていることで、油を拾い上げて他の部品にまき散らすことで潤滑を行う仕組みです。この方法は、構造が単純で費用も抑えられるため、比較的小さなエンジンや出力の低いエンジンによく使われます。具体的には、農作業に使う機械や工事現場で活躍する機械、電気を起こす機械などに搭載されているエンジンで見かけることがあります。
これらのエンジンは、高速で回転したり大きな力が出せるエンジンとは異なり、潤滑に対する要求はそれほど高くありません。そのため、比較的簡易なはねかけ式潤滑でも十分な働きをすることができます。また、構造が単純ということは、部品点数が少なく、組み立てや修理がしやすいという利点もあります。誰でも簡単に点検や部品交換ができるため、維持管理の手間や費用を減らすことができます。
しかし、近ごろは小さなエンジンでも、ポンプを使って油を循環させる強制潤滑方式を採用する例が増えています。これは、エンジンの性能をさらに向上させたい、あるいは排ガスに関する規制に対応するためです。強制潤滑方式は、はねかけ式潤滑よりも確実にエンジン内部に油を送り届けることができるため、より高い性能や耐久性を実現できます。また、油の循環を細かく制御できるため、無駄な油の使用を抑え、環境への負荷を低減することにも繋がります。
はねかけ式潤滑は、構造が単純で費用を抑えられる優れた方法ですが、エンジンの性能向上や環境規制への対応といった時代の流れの中で、次第にその活躍の場は狭まってきています。今後、ますます強制潤滑方式が主流になっていくと考えられます。それでも、はねかけ式潤滑は、特定の用途においては、依然として有効な潤滑方式であり続けるでしょう。
潤滑方式 | 特徴 | メリット | デメリット | 用途 |
---|---|---|---|---|
はねかけ式 | 回転部品が油を拾い、まき散らすことで潤滑 | 構造が単純、費用が安い、組み立て・修理が容易 | 高性能・高出力エンジンには不向き、環境負荷が大きい | 小型エンジン、低出力エンジン(農作業機械、工事現場機械、発電機など) |
強制潤滑式 | ポンプで油を循環させる | 高性能、高耐久、環境負荷低減 | 構造が複雑、費用が高い | 高性能エンジン、環境規制対応エンジン |
今後の展望
車は私たちの生活に欠かせないものとなっています。そして、車を動かすための心臓部である原動機には、円滑な動きを支える潤滑油が不可欠です。潤滑油を送る方式には、大きく分けて強制潤滑方式とはねかけ式潤滑方式の二種類があります。原動機技術の進歩とともに、潤滑油にもより高い性能が求められています。
強制潤滑方式は、ポンプを使って潤滑油を必要な場所に送り込む方式です。この方式は、潤滑油を確実に供給できるため、高い潤滑性能を実現できます。そのため、多くの乗用車や大型車などで広く使われています。近年の高性能な原動機には、ほとんどこの強制潤滑方式が採用されています。
一方、はねかけ式潤滑方式は、回転する部品から油を飛ばし、その油で潤滑する方式です。構造が単純で費用も抑えられますが、潤滑油が飛び散りやすく、潤滑性能は強制潤滑方式に劣ります。そのため、今後、多くの車ではねかけ式潤滑方式が採用される見込みは低いでしょう。
しかし、小型の原動機や特殊な用途の原動機など、限られた場面では、はねかけ式潤滑方式の簡素さや低費用という利点が活かせる可能性があります。例えば、構造が単純であるという利点は、部品の数を減らし、軽量化にも貢献します。また、費用を抑えられるという点は、価格競争力の向上に繋がります。
さらに、はねかけ式潤滑方式の仕組みを応用した新しい潤滑技術が生まれる可能性も期待できます。技術革新は日々進んでおり、潤滑技術も例外ではありません。今後、より高性能で効率の良い潤滑技術が開発され、自動車技術の更なる発展に貢献していくことでしょう。
潤滑方式 | 説明 | メリット | デメリット | 用途 |
---|---|---|---|---|
強制潤滑方式 | ポンプを使って潤滑油を必要な場所に送り込む方式 | 高い潤滑性能を実現できる、確実な供給 | – | 多くの乗用車や大型車など |
はねかけ式潤滑方式 | 回転する部品から油を飛ばし、その油で潤滑する方式 | 構造が単純、費用が抑えられる、軽量化に貢献、価格競争力向上 | 潤滑油が飛び散りやすい、潤滑性能は強制潤滑方式に劣る | 小型の原動機や特殊な用途の原動機など |
まとめ
エンジン内部の潤滑方式には、様々な種類がありますが、その中でも「はねかけ式潤滑方式」は、構造が単純で費用を抑えられるという大きな利点があります。
この方式は、エンジンの回転力を利用してオイルを各部に飛ばし、潤滑を行います。クランクシャフトの下部に溜まったオイルを、クランクシャフトの回転によって拾い上げ、遠心力でエンジン内部に飛散させる仕組みです。まるで、水車のように回転しながら水を汲み上げる様子を想像すると分かりやすいでしょう。このシンプルな構造のおかげで、部品点数が少なく、製造コストも抑えられ、小型で軽量なエンジンに適しています。
しかし、潤滑性能という点では、ポンプでオイルを強制的に循環させる「強制潤滑方式」に劣る側面もあります。エンジンの回転数が低い時や、傾斜のある場所で使用する場合には、潤滑が不十分になる可能性があります。また、高温になる部分にはオイルが届きにくく、冷却効果も限定的です。そのため、高出力のエンジンや、過酷な条件下で使用されるエンジンには不向きです。
以前は、小型エンジンや出力の低いエンジンでは、このはねかけ式潤滑方式が多く採用されていました。例えば、芝刈り機や発電機、一部の小型バイクなどに利用されてきました。しかし、近年では、技術の進歩とともに、小型エンジンでも強制潤滑方式を採用する例が増えています。
今後、自動車のエンジンにおいて、はねかけ式潤滑方式が主流となる可能性は低いと考えられます。しかし、構造の単純さや低コストという利点は依然として魅力的です。そのため、簡易な構造で十分な一部の分野では、今後も利用され続けるでしょう。さらに、はねかけ式潤滑方式の原理を応用した、新しい技術が開発される可能性も期待されます。
自動車の技術は常に進化を続けており、その中で潤滑技術も重要な役割を担っています。それぞれの潤滑方式には利点と欠点があり、エンジンの特性や使用条件に合わせて適切な方式を選択することが、エンジンの性能と耐久性を向上させる上で非常に重要です。
潤滑方式 | メリット | デメリット | 適用例 | 将来性 |
---|---|---|---|---|
はねかけ式 | 構造が単純、低コスト、小型軽量エンジンに適している | 潤滑性能が低い、低回転・傾斜時に潤滑不足、高温部への冷却効果が限定的、高出力エンジンや過酷な条件に不向き | 芝刈り機、発電機、一部の小型バイク(以前は小型エンジンに多く採用) | 自動車エンジンでの主流は難しいが、簡易な構造で十分な分野では利用継続、応用技術の開発に期待 |
強制潤滑方式 | 潤滑性能が高い | (はねかけ式と比較して)複雑、高コスト | 近年は小型エンジンにも採用が増えている | 主流 |