車の燃費向上!可変補機駆動
車のことを知りたい
『可変補機駆動』って、エンジンの回転数を調整するんですよね?
車の研究家
エンジンの回転数そのままで、補機への動力の伝わり方を調整する装置です。エンジン回転数に関係なく必要なだけ補機を動かすので、無駄な力を使わずに済むんです。
車のことを知りたい
どういう仕組みで動力の伝わり方を調整するんですか?
車の研究家
いくつか方法がありますが、例えば、液体の入ったつなぎめを使ったり、ベルトの張り具合を変えたりすることで動力の伝わり方を調整します。そうすることで、補機の回転数を抑えたり、完全に切り離したりもできるんですよ。
可変補機駆動とは。
エンジンの回転数に関係なく、必要なだけ補助装置を動かす仕組みを『可変補機駆動』と言います。エンジンが速く回っている時でも、発電機やハンドル操作を補助する装置、冷房装置などが無駄に速く回らないように、エンジンの回転力を伝える部分を調整する仕組みです。調整の方法には、動かすか止めるかの二種類と、細かく調整する二種類があります。細かく調整するタイプでは、回転力を伝える軸の中に液体を使った連結装置を設けたり、Vベルトを使った滑車を使って回転数が上がりすぎないようにしたりしています。また、電磁石を使ったクラッチで段階的に切り替える方法も考えられています。
無駄をなくす技術
車の心臓部である原動機は、車輪を回して車を走らせるだけでなく、様々な機器にも動力を供給しています。電気を起こす発電機や、ハンドル操作を軽くする装置、冷暖房の空気を圧縮する装置など、これらはまとめて補助機器と呼ばれます。
従来、これらの補助機器は原動機の回転数に比例して回転していました。原動機の回転数が上がれば補助機器の回転数も上がり、下がれば同様に下がります。しかし、車の走行状態は常に一定ではありません。例えば、信号待ちなどで停車している時は、発電機はある程度動いて電気を供給する必要がありますが、ハンドル操作を補助する装置や冷暖房の装置はそれほど高い回転数で動く必要はありません。
そこで開発されたのが「回転数を変える補助機器駆動」という技術です。これは、原動機の回転数に関係なく、補助機器が必要とするだけの動力を供給する仕組みです。
具体的には、従来のように原動機と補助機器をベルトで直接つなぐのではなく、電気を介したり、油の圧力を介したり、磁力を介したりすることで、補助機器の回転数を自在に制御します。
この技術により、原動機は余分な力を出さなくて済むようになり、結果として燃費が向上します。また、原動機にかかる負担が減るため、静粛性の向上にも繋がります。
近年、環境問題への意識の高まりから、燃費の良い車はますます重要になっています。「回転数を変える補助機器駆動」は、燃費向上に大きく貢献する技術として、多くの車に搭載されています。
従来の補助機器駆動 | 回転数を変える補助機器駆動 |
---|---|
原動機の回転数に比例して補助機器が回転 | 原動機の回転数に関係なく、補助機器が必要とするだけの動力を供給 |
原動機と補助機器をベルトで直接接続 | 電気、油圧、磁力などを介して接続 |
燃費があまり良くない | 燃費が良い |
静粛性が低い | 静粛性が高い |
動力の制御方式
車の動力をうまく操る仕組みには、大きく分けて二つのやり方があります。一つは「オン・オフ型」と呼ばれるもので、まるでスイッチのように、動力を送るか送らないかを切り替える単純な方法です。エンジンから補機、例えばエアコンの圧縮機や発電機などに動力を送るときは接続し、送らないときは完全に切り離します。この方法は仕組みが単純で扱いやすい反面、こまやかな制御は苦手です。
もう一つは「連続制御型」と呼ばれるもので、動力の伝達量を自在に変化させることができます。ちょうど水道の蛇口のように、動力の流れを細くしたり太くしたりすることで、よりきめ細かい制御を実現します。この連続制御型には、いくつか種類があります。
一つは、流体カップリングという装置を使う方法です。これは、密閉された容器の中にオイルのような液体を入れて、羽根車を回すことで動力を伝えます。羽根車の回転速度を変えることで、送られる動力の量を調整できます。この方法は、滑らかな制御ができることが利点です。
もう一つは、Vベルトを使った可変プーリー式です。Vベルトは、プーリーと呼ばれる溝のある滑車に引っかけて動力を伝えます。このプーリーの溝の幅を変化させることで、ベルトのかかり具合を調整し、動力の伝達量を制御します。この方法は、構造が比較的簡単で、費用を抑えられることが利点です。
これらの連続制御型は、エンジンの回転数に合わせて動力の伝達量を調整することで、無駄なエネルギーの消費を抑え、燃費を向上させる効果があります。例えば、エンジンの回転数が低いときは、補機類にもそれほど多くの動力は必要ありません。このような場合に、動力の伝達量を減らすことで、エンジンの負担を軽くし、燃料の無駄な消費を抑えることができます。このように、動力の制御方式は、車の性能向上に大きな役割を果たしているのです。
流れる液体で動力を調整
車は様々な部品が組み合わさって動いていますが、それらの部品に動力を伝える仕組みも大切な要素です。その一つに、流れる液体を使って動力を調整する流体継手という方法があります。
流体継手は、二つの羽根車を備えた密閉された容器の中に、特殊な液体を入れておきます。この容器を想像してみてください。二つの羽根車は向かい合って配置されており、一つはエンジンに、もう一つは動力を伝えたい補機類につながっています。エンジンが回転を始めると、エンジンにつながった方の羽根車、つまり駆動側の羽根車が回転を始めます。すると、容器の中の液体が羽根車によってかき混ぜられ、流れが生まれます。この液体の流れが、もう一方の羽根車、つまり従動側の羽根車を回転させるのです。このようにして、エンジンからの回転力は液体を通して補機類に伝えられるのです。
この流体継手の特徴は、エンジンの回転数に合わせて、補機類に伝わる動力の大きさを調整できることです。エンジンの回転数が低い時は、液体の流れも緩やかになり、従動側の羽根車の回転もゆっくりになります。反対に、エンジンの回転数が高くなると、液体の流れも速くなり、従動側の羽根車の回転も速くなります。まるで、エンジンの回転数と補機類の回転数が、液体の流れという見えない糸でつながっているかのようです。
さらに、液体の粘度や羽根車の形を工夫することで、動力の伝わり方を細かく調整できます。例えば、粘度の高い液体を使うと、動力の伝達効率が上がり、力強い動きが得られます。逆に、粘度の低い液体を使うと、滑らかな動きが得られます。また、羽根車の形を変えることで、特定の回転数でより効率的に動力を伝えることも可能です。このように、流体継手は、様々な条件に合わせて最適な動力の伝達を実現できる、優れた仕組みなのです。
ベルトの幅で動力を調整
車を走らせるには、エンジンの回転する力をタイヤに伝える必要があります。そのために、様々な部品が組み合わさって働いていますが、その中の一つにベルトがあります。ベルトは、エンジンの回転する力を滑車を介して他の部品に伝える役割を果たします。このベルトと滑車の組み合わせで、動力の伝達量を調整する仕組みの一つに、ベルトの幅を変える方法があります。
Vベルトと呼ばれる断面がV字型のベルトと、溝の幅を変えることができる特別な滑車(可変プーリー)を使うことで、この仕組みを実現できます。エンジンの回転数が上がり、より大きな力を伝えたい時は、滑車の溝の幅を狭めます。溝が狭くなると、Vベルトは滑車に深く入り込み、よりしっかりと滑車に噛み合います。これにより、滑りが少なくなり、エンジンの回転する力を効率よく伝えることができます。
逆に、エンジンの回転数が下がり、伝える力を小さくしたい時は、滑車の溝の幅を広げます。溝が広くなると、Vベルトは滑車に浅く掛かるようになり、滑車の回転にあまり干渉しなくなります。つまり、エンジンの回転力を弱めて伝えることができるのです。このように、滑車の溝の幅を調整することで、ベルトの掛かり具合を変化させ、動力の伝達量を自在にコントロールすることができます。
このベルトの幅で動力を調整する方法は、構造が単純で、制御も簡単という利点があります。特別な部品や複雑な仕組みは必要なく、滑車の溝の幅を変えるだけで動力の伝達量を調整できるので、費用を抑えることができます。また、制御も比較的簡単で、エンジンの回転数に合わせて滑車の溝の幅を調整するだけで済むため、多くの車で採用されています。このシンプルな仕組みが、車のスムーズな走りを実現する上で重要な役割を果たしているのです。
電磁力で動力を制御
磁石の力を利用して動力を調整する仕組みは、電磁継ぎ手と呼ばれる部品を使うことで実現できます。この電磁継ぎ手は、磁石の力を調整することで、動力のつながり具合をスムーズに変えることができます。
電磁継ぎ手は、摩擦を使って動力を伝える摩擦板と、磁力を発生させる電磁石、そして摩擦板を電磁石に押し付ける板バネで構成されています。電磁石に電気が流れると磁力が発生し、板バネを介して摩擦板が引き寄せられます。電磁石に流れる電気の量を調整することで、摩擦板同士の押し付ける力を変え、動力の伝達量を細かく制御することが可能になります。
この電磁継ぎ手の大きな利点は、素早く、正確に動力を制御できることです。機械的な部品を直接つなげる方式と比べて、摩耗も少なく、滑らかに動力を伝達できるため、乗り物の快適性向上にも役立ちます。
近年、この技術はさらに進歩しており、より細かく動力を制御することで、無駄なエネルギーの消費を抑えることが期待されています。例えば、自動車の燃費向上に大きく貢献する可能性を秘めています。また、この技術は、ハイブリッド自動車や電気自動車など、新しい乗り物にも応用され、環境に優しい乗り物の開発にも一役買っています。
電磁継ぎ手以外にも、磁石の力を利用した動力制御の方法は様々研究開発されています。今後、更なる技術革新によって、より効率的で、環境に優しい動力制御システムが登場することが期待されています。これらの技術は、自動車だけでなく、様々な機械や装置にも応用され、私たちの生活をより豊かに、そして快適にしてくれることでしょう。
環境への配慮
私たちの暮らす地球を守るために、自動車の環境への影響を少なくすることが大変重要になっています。自動車から排出される二酸化炭素は、地球温暖化の大きな原因の一つです。そこで、自動車メーカーは燃費を良くして二酸化炭素の排出量を減らす様々な技術開発に取り組んでいます。その一つが可変補機駆動です。
車はエンジンを動かすだけでなく、エアコンの冷房や発電機なども同時に動かしています。これらの装置はエンジンの動力を利用してベルトで駆動されますが、必要な時だけ動かすのではなく常に動いているため、エンジンの負担になって燃費が悪くなる原因の一つでした。可変補機駆動は、これらの装置を必要な時にだけ動かすことで、エンジンの負担を軽くし、燃費を向上させる技術です。例えば、エアコンの冷房が必要ない時はコンプレッサーを停止させ、エンジンの動力を節約することができます。発電機も同様に、バッテリーに十分な電気が蓄えられている時は発電を停止することで、エンジンの負担を減らし、燃費向上に貢献します。
可変補機駆動による燃費向上は、二酸化炭素の排出量削減に直接つながります。地球環境問題への関心が高まる中、自動車メーカーは更なる燃費向上を目指して、可変補機駆動技術の開発に力を入れています。例えば、より精密な制御システムを導入することで、エンジンの状態や走行状況に応じて、補機の駆動を最適に制御することが可能になります。また、ベルト駆動ではなく電気モーターで駆動する電動化技術も研究されており、将来的にはより効率的で環境に優しい車が実現すると期待されています。地球環境を守るため、可変補機駆動は、自動車にとってなくてはならない重要な技術と言えるでしょう。