進化する四輪駆動:可変配分型の解説

進化する四輪駆動:可変配分型の解説

車のことを知りたい

先生、「可変配分型常時4輪駆動」って、普通の4輪駆動と何が違うんですか?

車の研究家

良い質問だね。普通の4輪駆動だと、常に前後のタイヤに同じだけの力がかかるのに対し、「可変配分型常時4輪駆動」は、状況に応じて前後のタイヤにかかる力を変えられるんだよ。

車のことを知りたい

状況に応じてって、どういうことですか?

車の研究家

例えば、雪道でスリップしそうになったら、後ろのタイヤにもっと力を送って安定させたり、乾燥した道路を走る時は前のタイヤに多くの力を送って燃費を良くしたりできるんだ。状況に合わせて前後の力の配分を変えるから「可変配分型」って言うんだよ。

可変配分型常時4輪駆動とは。

四輪駆動の仕組みの一つである『前後のタイヤへ力を自在に変えられる四輪駆動』について説明します。これは、普段はエンジンの力を前か後ろのどちらかのタイヤに直接伝えて走り、もう片方のタイヤは、クラッチという部品で繋いで動かす方式です。あるいは、前後輪に動力を分配する装置(センターデフ)に、左右のタイヤの回転差を制限する装置が付いた四輪駆動方式です。どちらの方式も四輪駆動が必要な時に、前後のタイヤに必要な力を配分します。

クラッチの制御がないタイプでは、タイヤの回転速度に応じて自動的に作動する仕組みが用いられています。例えば、粘り気のある液体を使うもの、油圧を使うもの、回転する羽根を使うものなどがあります。

力の大きさに応じて作動する仕組みには、トルセンデフやトルセンLSDなどがあります。

電子制御されているタイプでは、油圧や電磁石で動くクラッチが使われています。

制御がないタイプは『受動的な力配分四輪駆動』、電子制御されているタイプは『能動的な力配分四輪駆動』とも呼ばれています。

四輪駆動とは

四輪駆動とは

四輪駆動とは、読んで字のごとく四つの車輪すべてにエンジンの動力を伝える駆動方式です。通常、乗用車では前輪もしくは後輪の二つの車輪だけを駆動させる二輪駆動が主流ですが、四輪駆動はこれとは異なり、前輪と後輪の両方に駆動力を分配します。これにより、二輪駆動よりもはるかに強力な推進力を得ることができ、ぬかるみや雪道といった悪路でも安定した走行を可能にするのです。

舗装路を走る通常の二輪駆動車は、路面との摩擦抵抗が十分に確保できるため、二つの車輪だけで十分な駆動力を得られます。しかし、雪道や砂利道など、摩擦抵抗の低い路面では、二輪駆動だとタイヤが空転しやすく、思うように前に進めないことがあります。このような状況で四輪駆動は真価を発揮します。四つの車輪すべてに駆動力が伝わることで、タイヤが空転するのを抑え、しっかりと路面を捉えることができるため、二輪駆動では走行が困難な悪路でも走破できるのです。

また、四輪駆動は安定性も向上させます。雪道や凍結路面など、滑りやすい路面では、二輪駆動車の場合、駆動輪がスリップして車が横滑りする危険性が高まります。しかし、四輪駆動は四つの車輪すべてで路面を捉えるため、スリップしにくく、安定した走行を維持できます。

四輪駆動は、オフロード車やスポーツ多目的車(SUV)だけでなく、近年では一般的な乗用車にも搭載されるようになってきています。雪国に住む人々にとっては、冬場の安全な運転に欠かせない技術と言えるでしょう。また、アウトドアを楽しむ人にとっても、山道や砂浜など、様々な道を走破できる四輪駆動車は心強い相棒となるはずです。

駆動方式 駆動輪 メリット デメリット 適した路面
二輪駆動 前輪または後輪 燃費が良い、構造が簡単 悪路走破性が低い、滑りやすい路面で不安定 舗装路
四輪駆動 四輪すべて 悪路走破性が高い、安定性が高い 燃費が悪い、構造が複雑 雪道、砂利道、悪路全般

可変配分型の仕組み

可変配分型の仕組み

可変配分型四輪駆動は、刻々と変わる道路状況に合わせて、前後の車輪への動力の送り分けを自動で調整する、賢い仕組みです。普段、乾いた舗装路を走るような状況では、燃費を良くするために、主に前輪あるいは後輪のどちらか一方に動力を送ります。これは二輪駆動と同じ状態なので、無駄な燃料消費を抑えることができます。

しかし、雪道や凍結路など、滑りやすい道を走るときや、砂利道やぬかるみといった悪路を走るときには、四つの車輪すべてに適切な動力を配分する必要があります。このような状況になると、可変配分型四輪駆動は、瞬時にその状態を判断し、前後の車輪への動力の送り分けを自動で切り替えます。これによって、タイヤが空転するのを防ぎ、しっかりと路面を捉えることで、安定した走行を可能にします。

この切り替えは、コンピューターを使った電子制御システムや、機械的な装置によって行われています。ドライバーは何も特別な操作をする必要はありません。システムが自動的に道路状況を判断し、最適な動力の配分を行います。

例えば、発進時や加速時には後輪にも動力を配分することで力強い走り出しを実現し、カーブでは内側と外側の車輪への動力の配分を調整することでスムーズな旋回を可能にします。また、ブレーキ時には四輪すべてに制動力を均等に配分することで、安定した制動性能を発揮します。このように、可変配分型四輪駆動は、様々な状況下で最適な走行性能と安全性を提供する、大変優れた仕組みと言えるでしょう。

状況 駆動方式 目的
乾いた舗装路 二輪駆動(前輪または後輪) 燃費向上
雪道、凍結路、砂利道、ぬかるみ 四輪駆動 安定した走行
発進時・加速時 後輪にも動力を配分 力強い走り出し
カーブ 内外輪への動力配分調整 スムーズな旋回
ブレーキ時 四輪への制動力を均等配分 安定した制動性能

制御方式の種類

制御方式の種類

車は、四つの車輪すべてで地面を蹴って走ります。四輪駆動車は、この四つの車輪すべてにエンジンの力を伝えることで、力強い走りを実現します。この時、四つの車輪への力の配分方法が重要になります。大きく分けて、人の操作を介さないものと、コンピューター制御によって人の操作を介在させるものの二種類があります。

人の操作を介さないものは、機械的な仕組みで自動的に力の配分を調整します。例えば、粘り気のある液体を利用した仕組みがあります。これは、通常の状態では前後の車輪への力の配分が決まっていますが、片方の車輪が滑り出すと、粘り気のある液体がその抵抗によって固くなり、滑っていない車輪に多くの力を伝える仕組みです。また、車輪の回転する速さの違いを利用した仕組みもあります。これは、左右の車輪の回転速度の差を検知して、回転速度の遅い車輪、つまり、しっかりと地面を捉えている車輪に、より大きな力を配分する仕組みです。これらの仕組みは、構造が単純で壊れにくいという利点があります。

一方、コンピューター制御によって人の操作を介在させるものは、様々な状況に応じて、コンピューターが最適な力の配分を判断します。路面の滑りやすさや、車の速度、ハンドルを切る角度など、様々な情報をセンサーで集め、その情報に基づいて、電気的に制御される装置を使って、前後の車輪、あるいは左右の車輪への力の配分を細かく調整します。この方法では、状況に応じて最適な力の配分を行うことができるため、安定した走行性能と燃費の向上を両立することができます。例えば、乾燥した舗装路では、燃費を良くするために前の車輪だけに力を伝え、滑りやすい雪道では四つの車輪すべてに均等に力を伝えたり、カーブでは外側の車輪により多くの力を伝えるといった制御が可能です。このように、コンピューター制御によって力の配分を細かく調整することで、より安全で快適な運転を実現しています。

四輪駆動車の駆動力配分方式 種類 仕組み 利点
人の操作を介さないもの 粘性結合方式 粘性流体を利用し、片輪が滑ると抵抗が増し、滑らない車輪に駆動力が伝達される。 構造が単純で壊れにくい。
差動制限装置 左右車輪の回転速度差を検知し、遅い車輪(地面を捉えている車輪)に駆動力を配分。 構造が単純で壊れにくい。
コンピューター制御によるもの 電子制御式 センサー情報(路面状況、車速、ハンドル角度など)に基づき、コンピューターが最適な駆動力配分を判断し、電子制御装置で調整。 状況に応じて最適な駆動力配分が可能。安定した走行性能と燃費向上。 乾燥路:前輪駆動
雪道:四輪均等駆動
カーブ:外輪駆動

制御なしの方式

制御なしの方式

制御なしの方式、つまり機械仕掛けだけで前後の車輪へ動力を振り分ける四輪駆動は、人の手を借りず自動的に働く仕組みです。この仕組を受動型トルク配分四輪駆動とも呼びます。電子制御を用いないため、構造が単純で壊れにくく、長く使える利点があります。代表的なものに、粘り気を帯びた液体を用いる方式と、左右の車輪の回転の差を制限する装置を用いる方式の二種類があります。

粘り気を帯びた液体を用いる方式は、シリコンオイルのような粘度の高い液体を密閉容器に入れ、前輪と後輪の回転を伝える部品に繋いで用います。通常は前輪にのみ動力が伝わっていますが、雪道などで前輪が空回りし始めると、前輪と後輪の回転の差が生じます。この回転の差によって粘り気のある液体が摩擦熱で粘度を増し、後輪にも動力が伝わるようになります。この方式は構造が単純で、特別な調整を必要としないため、費用を抑えることができます。

もう一つの回転差制限装置を用いる方式は、通常走行時は前輪駆動ですが、前後の車輪の回転速度に差が生じると、自動的に後輪にも駆動力を配分する仕組みです。これは、左右の車輪の回転差を制限する装置とよく似た構造を持ち、四輪駆動にも応用されています。急なカーブなどで内側と外側の車輪の回転速度に差が出た際に、内側の車輪だけに動力が集中するのを防ぎ、安定した走行を可能にします。

これらの制御なしの方式は、電子制御を用いた複雑なシステムと比べて、部品点数が少なく故障しにくいという大きな利点があります。また、製造費用も抑えることができ、購入しやすい価格帯の車にも搭載しやすいという特徴があります。しかし、路面状況の変化への対応は、電子制御式の四輪駆動システムと比べると劣る部分もあります。

方式 原理 メリット デメリット
粘性結合方式 シリコンオイル等の粘度の高い液体を用いる。前輪が空回りすると、回転差により液体が摩擦熱で粘度を増し、後輪にも動力が伝わる。 構造が単純、特別な調整不要、費用が安い。 路面状況の変化への対応は電子制御式に劣る。
回転差制限装置方式 通常は前輪駆動。前後の車輪の回転速度に差が生じると、自動的に後輪にも駆動力を配分。 部品点数が少なく故障しにくい、製造費用が安い。 路面状況の変化への対応は電子制御式に劣る。

電子制御の方式

電子制御の方式

自動車の走行安定性や燃費向上に大きく貢献する電子制御技術の中でも、四輪駆動システムにおける電子制御方式は目覚ましい進化を遂げています。代表的な方式として、電子制御式の可変配分型四輪駆動、そしてアクティブトルクスプリット四輪駆動が挙げられます。これらのシステムは、車両に搭載された様々なセンサーの情報と高度なコンピューター技術を組み合わせることで、刻々と変化する路面状況や車両の状態をリアルタイムで監視し、瞬時に最適な駆動力配分を電子制御によって行います。

例えば、乾いた舗装路を走行している際には、燃費性能を優先して前輪または後輪のみに駆動力を伝える、二輪駆動に近い状態にすることで無駄な燃料の消費を抑えます。一方、雨や雪で路面が滑りやすい状況になった場合は、四輪全てに駆動力を配分することで、高い走破性を発揮し、安全な走行を支援します。

さらに、カーブを曲がる際にも電子制御は効果を発揮します。旋回時には内輪と外輪で必要な駆動力が異なるため、この差を電子制御によって調整することで、スムーズで安定したコーナリングを実現します。例えば、外側に位置する車輪にはより多くの駆動力を伝え、内側に位置する車輪には駆動力を抑えることで、車両の旋回性を高め、より安定した走行を可能にします。

このように、電子制御式の可変配分型四輪駆動システムは、様々なセンサー情報と高度なコンピューター技術、そして電子制御技術を組み合わせることで、路面状況や走行状況に合わせて最適なトルク配分を行います。これにより、ドライバーの運転操作を支援するだけでなく、あらゆる状況下で高い走行安定性と燃費効率を実現し、安全で快適な運転体験を提供します。

状況 駆動力配分 効果
乾いた舗装路 二輪駆動(前輪または後輪) 燃費向上
滑りやすい路面(雨や雪) 四輪駆動 走破性向上
カーブ走行時 外輪 > 内輪 スムーズで安定したコーナリング

メリットとデメリット

メリットとデメリット

四輪を駆動する仕組みにはいくつかありますが、その中で路面の状態に合わせて駆動力を自動で振り分ける仕組みを持つものを、可変配分型四輪駆動と呼びます。この仕組みには、雪道やぬかるみといった悪路での走破性を高めるだけでなく、舗装路での安定した走行や燃費向上も期待できるという利点があります。

まず、路面状況に合わせて前輪と後輪への駆動力の配分を調整することで、タイヤの空転を抑え、力強い発進や安定した走行を実現できます。例えば、雪道発進時には四輪全てに駆動力を伝え、滑りやすい路面を確実に捉えます。また、高速道路などでは前輪に駆動力を集中させることで燃費を向上させ、街中では四輪にバランス良く駆動力を配分することで安定した走行を可能にします。このように、状況に応じて最適な駆動を実現することで、様々な場面で高い走行性能を発揮します。

一方で、複雑な電子制御や機械部品が必要となるため、製造費用がかさみ、車両価格が高くなる傾向があります。また、電子制御部品の故障リスクも考慮しなければなりません。部品点数が多くなるほど故障の可能性も高まるため、維持費用についても注意が必要です。しかし、近年の技術革新により、システムの信頼性は大幅に向上しており、故障発生率は低下傾向にあります。

このように、可変配分型四輪駆動はメリットとデメリットを併せ持つ機構ですが、高い走破性と走行安定性、そして燃費効率の向上という利点は、特に未舗装路や雪道を走行する機会が多い地域では大きな魅力です。そのため、多目的スポーツ車やオフロード車を中心に、多くの車種で採用されています。技術の進歩とともに信頼性も向上しているため、今後ますます普及していくと考えられます。

項目 内容
メリット
  • 雪道やぬかるみといった悪路での走破性向上
  • 舗装路での安定した走行
  • 燃費向上
  • 力強い発進
  • 状況に応じて最適な駆動を実現
デメリット
  • 製造費用が高く車両価格も高くなる傾向
  • 電子制御部品の故障リスク
  • 維持費用がかかる可能性
その他
  • 近年の技術革新により、システムの信頼性は向上、故障発生率は低下傾向
  • 未舗装路や雪道を走行する機会が多い地域では大きな魅力
  • 多目的スポーツ車やオフロード車を中心に、多くの車種で採用
  • 今後ますます普及していくと考えられる