安全を守る車の工夫:フェイルセーフ設計
車のことを知りたい
先生、『フェイルセーフ設計』って、どういう意味ですか?
車の研究家
簡単に言うと、車が故障した時に、より危険な状態にならないようにするための設計だよ。一部が壊れても、全体が壊れたり、危険な動きをしたりしないようにするんだ。
車のことを知りたい
具体的にはどんなものがありますか?
車の研究家
例えば、四輪操舵という、前輪だけでなく後輪も操舵する車があるよね。この車が故障した場合、後輪をまっすぐ固定して、普通の二輪操舵と同じ状態にすることで、安全性を確保しているんだ。ブレーキの安全装置も同じように、故障した場合は普通のブレーキとして使えるように設計されているよ。
フェイルセーフ設計とは。
車が壊れたときに、全体が危険な状態にならないようにするための設計について説明します。この設計は『フェイルセーフ設計』と呼ばれ、車が安全に動くための仕組みをあらかじめ組み込んでおくことです。特に、コンピューターで制御されている部分に使われています。例えば、四輪操舵(全てのタイヤが操舵できる仕組み)の車では、コンピューターが壊れたときに、後ろのタイヤをまっすぐな位置に固定して、二輪操舵(前のタイヤだけが操舵する、普通の車と同じ状態)になるように設計されています。また、ブレーキがロックするのを防ぐ装置(ABS)では、装置が壊れたときに、普通のブレーキとして使えるように設計することで、安全を確保しています。
はじめに
車は、私たちの暮らしになくてはならないものとなり、遠くへの移動を楽にしてくれるだけでなく、日々の買い物や送り迎えなど、様々な場面で活躍しています。近年、車の技術は大きく進歩し、様々な装置が電子制御によって動くようになっています。この電子化によって、車の性能は向上しましたが、同時に、システムが故障した際の危険性も増しています。そこで重要になるのが、「何か不具合が起きた時に安全な状態を保つようにする」という考え方である「フェイルセーフ設計」です。
例えば、ブレーキシステムを考えてみましょう。ブレーキを踏むと、油圧によってブレーキパッドがディスクを挟み込み、車を停止させます。もし、この油圧系統に何らかの不具合が生じて油圧が下がってしまうと、ブレーキが効かなくなり、大変危険です。そこで、フェイルセーフ設計では、油圧が下がった場合でも、ある程度の制動力が得られるような仕組みが備えられています。例えば、複数の油圧系統を備え、一つが故障しても、もう一つが作動するように設計されている車種もあります。また、油圧が下がったことを運転手に知らせる警告灯を点灯させることで、危険を回避する仕組みもフェイルセーフ設計の一つです。
フェイルセーフ設計は、ブレーキシステムだけでなく、エンジン、ステアリング、エアバッグなど、車の様々なシステムに用いられています。エンジンの場合は、冷却水が漏れた際にエンジンを停止させ、オーバーヒートによる火災を防ぎます。ステアリングの場合は、パワーステアリングが故障しても、ハンドル操作ができるように設計されています。エアバッグの場合は、衝突時に確実に展開するように、複数の点火回路を備えるなど、様々な工夫が凝らされています。
このように、フェイルセーフ設計は、車の安全性を確保するために不可欠なものです。車を選ぶ際には、どのようなフェイルセーフ設計がされているかにも注目することで、より安全な車選びができるでしょう。
システム | フェイルセーフの例 |
---|---|
ブレーキシステム |
|
エンジン | 冷却水漏れ時のエンジン停止(オーバーヒートによる火災防止) |
ステアリング | パワーステアリング故障時のハンドル操作確保 |
エアバッグ | 複数点火回路装備(確実な展開) |
フェイルセーフ設計とは
物が壊れたり、うまく動かなくなったりした際に、大きな事故につながらないように工夫された仕組み作り、それが安全確保を優先した設計、いわゆる「フェイルセーフ設計」です。 この設計では、不具合が起きた時でも、全体としては危険な状態にならないように考えられています。 万一、部品の一部が壊れても、安全な状態を保つか、速やかに安全な状態に移行することで、大きな事故や被害を防ぐことを目指しています。
具体的には、いくつかの方法があります。 まず、装置を停止させる方法です。 一部に不具合が生じた場合は、すぐに装置全体を止めて、危険な動作を未然に防ぎます。 例えば、エレベーターのブレーキシステムが故障した場合、かごが落下するのを防ぐため、緊急停止装置が作動してかごを固定します。次に、機能を制限する方法です。全ての機能を停止するのではなく、安全に動作できる範囲で機能を絞り込みます。 例えば、飛行機のエンジンが一つ停止した場合でも、残りのエンジンで飛行を続け、安全に着陸できるように設計されています。 最後に、予備の装置に切り替える方法です。 普段使っている装置が故障した場合、あらかじめ用意しておいた予備の装置に切り替えて、システム全体の機能を維持します。 例えば、車のブレーキシステムには、主系統と副系統の二重構造になっているものがあります。主系統が故障した場合、自動的に副系統に切り替わり、ブレーキが効かなくなる事態を防ぎます。
このように、フェイルセーフ設計は、様々な場面で安全を守るために重要な役割を担っています。 特に、人命に関わる乗り物や装置には、この考え方が欠かせません。 様々な工夫を凝らすことで、安全性を高め、安心して使える製品を生み出すことに繋がっています。
フェイルセーフ設計の方法 | 説明 | 例 |
---|---|---|
装置を停止させる | 一部に不具合が生じた場合、装置全体を停止させ、危険な動作を未然に防ぐ。 | エレベーターのブレーキシステム故障時、緊急停止装置が作動 |
機能を制限する | 全ての機能を停止するのではなく、安全に動作できる範囲で機能を絞り込む。 | 飛行機のエンジンが一つ停止した場合、残りのエンジンで飛行 |
予備の装置に切り替える | 普段使っている装置が故障した場合、予備の装置に切り替えてシステム全体の機能を維持する。 | 車のブレーキシステムの主系統と副系統 |
自動車における具体例
車は、安全に走るために様々な工夫が凝らされています。その一つに、「何かが壊れても安全を保つ仕組み」、つまり壊れても安全な設計があります。
例えば、車を止めるための仕組みであるブレーキを考えてみましょう。ブレーキは、複数の部品が組み合わさって一つの装置として働いています。一つの部品が壊れても、他の部品が代わりに働くことで、ブレーキが完全に効かなくなることを防ぎます。仮に、油圧でブレーキを動かす管の一つが壊れて油が漏れてしまったとしましょう。この時、全ての管から油が漏れてブレーキが全く効かなくなると大変危険です。しかし、壊れても安全な設計がされている車は、壊れた管とは別の管を使ってブレーキを動かすことができます。これにより、完全にブレーキが効かなくなる事態を防ぎ、安全に車を止めることができます。
もう一つの例として、ハンドルを動かす仕組みである操舵装置を見てみましょう。最近の車には、電動でハンドル操作を補助する仕組みを持つものがあります。これは、駐車時などハンドル操作が重い時に、楽にハンドルを回せるようにするものです。しかし、電気系統に不具合が生じると、この補助機能が働かなくなる可能性があります。そうなると、ハンドル操作が急に重くなり、運転が難しくなるかもしれません。そこで、電動の補助装置が壊れた時でも、ハンドルを直接操作できるように設計されています。電気の力を使わなくても、自分の力でハンドルを回して車を操縦できるのです。これにより、万が一の故障時でも、安全に車を走らせることができます。
このように、車は様々な場面で壊れても安全な設計が取り入れられています。普段はあまり意識することはありませんが、これらの工夫によって、私たちは安全に車に乗ることができているのです。
装置 | 故障 | 安全対策 |
---|---|---|
ブレーキ | 油圧ブレーキ管の破損 | 他の管を使ってブレーキを動作させる |
操舵装置 | 電動パワーステアリングの故障 | ハンドルを直接操作できるように設計 |
四輪操舵システムにおける適用
四輪操舵システムは、前輪だけでなく後輪も操舵することで、車の動きをより自由に制御する技術です。従来の二輪操舵車では、小回りが利きにくい、高速走行時の安定性に課題があるといった点が指摘されてきました。四輪操舵システムはこれらの課題を解決し、より快適で安全な運転を実現するために開発されました。
低速走行時、例えば駐車場での切り返しや狭い道での旋回では、後輪を前輪と逆方向に操舵します。これにより、回転半径が小さくなり、小回りが格段に向上します。まるで車体が縮んだかのようにスムーズに方向転換できます。一方、高速走行時、例えば高速道路での車線変更などでは、後輪を前輪と同じ方向に操舵します。これにより、車体の安定性が増し、スムーズな車線変更が可能になります。横風など外乱の影響を受けにくくなり、より安全な運転が可能になります。
しかし、高度な技術であるがゆえに、システムの故障リスクも考慮しなければなりません。電子制御システムの不具合発生時、後輪の操舵が不安定になる可能性があります。このような事態に備えて、四輪操舵システムにはフェイルセーフ設計が組み込まれています。システムに異常が検知されると、直ちに後輪を固定する機構が作動します。これにより、通常の二輪操舵状態に切り替わり、予期せぬ挙動を防ぎ、安全な走行を維持できます。安全性を最優先に考えた設計により、安心して四輪操舵システムの恩恵を受けることが可能になります。
走行速度 | 後輪操舵方向 | 効果 |
---|---|---|
低速 | 前輪と逆方向 | 回転半径縮小、小回り向上 |
高速 | 前輪と同じ方向 | 車体安定性向上、スムーズな車線変更 |
フェイルセーフ |
---|
異常検知時、後輪固定、二輪操舵状態へ移行 |
アンチロックブレーキシステムにおける適用
車輪が滑ってしまうのを防ぐ装置、つまりアンチロックブレーキシステム(一般的にはABSと略されます)について説明します。この装置は、急ブレーキを踏んだ際にタイヤがロックし、転がるのをやめてしまうのを防ぐ働きをします。タイヤがロックしてしまうと、ハンドル操作がきかなくなり大変危険です。ABSはこの危険を回避し、安全な運転を助ける重要な装置です。
ABSは、車輪の回転速度を常に監視しています。もし急ブレーキによって車輪の回転が急に遅くなったり、止まったりした場合、ブレーキの油圧を自動的に調整します。これにより、タイヤがロックするのを防ぎ、ハンドル操作を維持しながら安全に減速できます。路面が凍結していたり、濡れていたりする状況では、タイヤがロックしやすいため、ABSの役割は特に重要になります。
しかし、ABSも機械であるため、故障する可能性はあります。ABSが故障した場合、ブレーキが全く効かなくなるといったことはありません。安全のために、ABSには予備の機能が備わっています。これは、ABSが故障した場合、通常のブレーキシステムに自動的に切り替わる仕組みです。通常のブレーキシステムではABSのように油圧を自動調整することはありませんが、ブレーキペダルを踏むことでブレーキをかけることができます。つまり、ABSが作動しない状態でも、ブレーキ操作自体は変わらず行えます。
ABSが故障した場合は、警告灯が点灯します。警告灯が点灯したら、速やかに整備工場で点検を受けるようにしてください。安全な運転を続けるためにも、日頃から車の点検整備は欠かせません。ABSは安全運転を支える重要な装置なので、しっかりと機能を理解し、適切なメンテナンスを行うように心がけましょう。
今後の展望
車は、これからますます自動で走る技術が進化していくと考えられています。人の操作なしで車が走るようになることで、これまで以上に電子制御の技術が重要になってきます。電子制御とは、コンピューターを使って車の様々な部品を動かすことです。例えば、ブレーキやハンドル、アクセルなども電子制御によって動かされるようになります。
電子制御化が進むと、同時に安全対策もより一層重要になってきます。その安全対策の1つが、「何か不具合が起きても安全を保つ仕組み」、つまり「フェイルセーフ」です。フェイルセーフとは、車が故障した場合でも、大きな事故につながらないように安全な状態を保つための仕組みです。
例えば、自動運転中にシステムの一部が壊れてしまったとします。その時に車が急に止まったり、暴走したりすると大変危険です。フェイルセーフがしっかりしていれば、システムに異常が発生した場合でも安全に停止したり、人間が運転を引き継げるように設計されています。
これからの自動運転車は、たくさんの複雑なシステムが互いに連携して動いています。ブレーキ、ハンドル、センサー、カメラなど多くの部品が複雑に連携することで自動運転が可能となります。そのため、1つの部品に不具合が生じても、全体に影響が出ないようにフェイルセーフの仕組みが不可欠です。
フェイルセーフを実現するためには、システムの冗長化が有効です。冗長化とは、同じ機能を持つ部品を複数用意しておくことです。1つが壊れても、もう1つが代わりに動くことで、安全を確保できます。例えば、ブレーキシステムを2系統用意しておけば、片方が故障してももう片方でブレーキをかけることができます。
また、万が一システムが完全に停止した場合でも、安全に車を停止させる仕組みも必要です。緊急時に作動する特別なブレーキシステムや、車を安全な場所に停止させるための自動制御システムなどが考えられます。
今後、自動運転技術が発展していくためには、フェイルセーフ技術の更なる進化が不可欠です。より安全で信頼性の高い自動運転を実現するために、様々なフェイルセーフ機構の開発が期待されています。