隠された足回り:インボードサスペンション

隠された足回り:インボードサスペンション

車のことを知りたい

先生、「インボードサスペンション」って、普通のサスペンションと何が違うんですか?

車の研究家

良い質問だね。普通のサスペンションはタイヤのすぐ近くにばねや緩衝器が付いているよね。インボードサスペンションは、これらを車体の内側に配置したものなんだ。

車のことを知りたい

車体の内側に入れると、どんな良いことがあるんですか?

車の研究家

空気抵抗が少なくなるし、タイヤの動きが軽快になるんだよ。ただ、構造が複雑になって整備が難しくなるという欠点もあるんだ。

インボードサスペンションとは。

車のパーツである『車体内部サスペンション』について説明します。これは、主にレースカーで使われるもので、空気抵抗を減らすための工夫です。ふつう、車のタイヤ付近には、路面の衝撃を吸収する『ばねとショックアブソーバー』が備わっています。しかし、これらが車体から外に出ていると、空気の流れを乱してしまい、スピードが落ちることがあります。そこで、この『ばねとショックアブソーバー』を車体内部に収めることで空気抵抗を減らすのが、『車体内部サスペンション』です。

車体内部に収めるためには、『揺れ棒』という部品を使い、『ばねとショックアブソーバー』をこの『揺れ棒』に取り付けます。この『揺れ棒』の配置方法によって、『揺れ棒式』、『押し棒式』、『引き棒式』といった種類があります。

空気抵抗が少ない上に、タイヤより下の部分の重さを軽くできるため、フォーミュラーカーでよく使われています。しかし、構造が複雑で、『ショックアブソーバー』の冷却効果が低いという欠点もあります。初めて使われたのは1961年のロータス21という車です。

空気抵抗を減らす工夫

空気抵抗を減らす工夫

車は走る時、空気の壁を押し分けて進まなければなりません。この時に生じる抵抗が空気抵抗で、速度が上がるほど大きくなります。空気抵抗が大きくなると、車はより多くの力を使って進まなければならず、燃費が悪化したり最高速度が下がったりします。そのため、少しでも空気抵抗を減らす工夫は、車作りにおいて非常に重要です。

レースの世界では、ほんの僅かな時間の差が勝敗を分けるため、空気抵抗の低減は特に重要視されています。様々な工夫が凝らされていますが、その一つに隠された足回り、「車体内蔵式懸架装置」があります。

一般的な車は、車輪と車体を繋ぐ懸架装置が車体の外側に付いています。この装置は、路面の凹凸を吸収し、乗り心地を良くする役割を果たしていますが、同時に空気抵抗を増大させる原因にもなります。

車体内蔵式懸架装置は、その名の通り、懸架装置の主要部分を車体の内側に配置する特殊な構造です。これにより、車体表面の出っ張りが少なくなり、空気の流れが整えられます。結果として、空気抵抗を減らす効果が得られます。

車体内蔵式懸架装置は、製造コストや整備の複雑さといった課題があるため、現在のところ一般車にはあまり普及していません。しかし、レースで培われた技術は、いずれ一般車にも応用される可能性があります。空気抵抗の低減は燃費向上にも繋がるため、環境問題への意識が高まる現代において、車体内蔵式懸架装置のような技術は、今後の車作りにおいて重要な役割を果たしていくと考えられます。

項目 説明
空気抵抗 車が空気中を進む際に受ける抵抗。速度が速いほど大きくなり、燃費悪化や最高速度低下につながる。
空気抵抗低減の重要性 燃費向上や最高速度向上に繋がり、レースでは勝敗を分ける重要な要素。
車体内蔵式懸架装置 懸架装置を車体内部に配置することで、車体表面の出っ張りを減らし、空気抵抗を低減する技術。
一般的な懸架装置 車輪と車体を繋ぎ、路面の凹凸を吸収する装置。空気抵抗を増大させる要因の一つ。
車体内蔵式懸架装置の課題 製造コストや整備の複雑さから、一般車への普及は進んでいない。
車体内蔵式懸架装置の将来性 レースで培われた技術が一般車に普及する可能性があり、燃費向上による環境問題への貢献も期待される。

ばね下重量の軽減

ばね下重量の軽減

車は、路面を走る際に様々な振動を受けます。この振動は、乗り心地や操縦安定性に大きな影響を与えます。路面からの衝撃を吸収する役割を担うのがサスペンションですが、サスペンションよりも下の部分、つまりタイヤやホイール、ブレーキなど、路面に接する部分の重さを「ばね下重量」といいます

このばね下重量は、軽ければ軽いほど大きなメリットがあります。ばね下重量が軽い車は、路面からの衝撃を素早く、そして正確に吸収できます。まるで地面に吸い付くように、タイヤが路面にしっかりと接地し続けるため、高い操縦安定性と快適な乗り心地を実現できるのです。

逆にばね下重量が重いと、路面からの衝撃を吸収しきれず、車体が跳ねてしまいます。タイヤが路面から浮きやすくなり、操縦安定性が悪化し、乗り心地も悪くなってしまいます。

ばね下重量を軽減する技術の一つに、「インボードサスペンション」があります。これは、通常は車輪の近くにあるサスペンションの一部を、車体側に配置する構造です。これにより、ばね下重量を構成する部品の重量を減らし、路面への追従性を高めることができます。

インボードサスペンションを採用することで、ドライバーは路面の状態をより正確に感じ取ることができ、繊細な運転操作が可能になります。結果として、車全体の性能向上に繋がり、より快適で安全な運転を楽しむことができるのです。

項目 内容
ばね下重量 タイヤ、ホイール、ブレーキなど、路面に接する部分の重さ
ばね下重量が軽い場合のメリット
  • 路面からの衝撃を素早く、正確に吸収
  • 高い操縦安定性
  • 快適な乗り心地
ばね下重量が重い場合のデメリット
  • 路面からの衝撃を吸収しきれず、車体が跳ねる
  • タイヤが路面から浮きやすくなる
  • 操縦安定性の悪化
  • 乗り心地の悪化
ばね下重量軽減技術 インボードサスペンション
インボードサスペンション サスペンションの一部を車体側に配置する構造
インボードサスペンションのメリット
  • ばね下重量の軽減
  • 路面への追従性向上
  • 繊細な運転操作が可能
  • 車全体の性能向上
  • 快適で安全な運転

複雑な構造と冷却の問題

複雑な構造と冷却の問題

車輪を支え、路面からの衝撃を吸収する緩衝装置は、車にとって重要な部品です。その配置方式の一つに、インボードサスペンションと呼ばれるものがあります。これは、緩衝装置を車体側に取り付ける方式で、ばね下重量の軽減による路面追従性の向上や、空力特性の改善といった利点があります。しかし、同時に複雑な構造と冷却の問題という、避けて通れない欠点も抱えています。

インボードサスペンションは、通常のサスペンションに比べて部品点数や連結機構が複雑です。そのため、設計や製造の難易度が上がり、費用もかさみます。多くの部品が複雑に組み合わさるため、組み立てや調整にも高い精度と熟練した技術が必要です。また、日常の点検や部品交換といった整備作業も、複雑な構造であるがゆえに容易ではありません。これらの要因が、一般的な車への普及を妨げていると言えるでしょう。

インボードサスペンションのもう一つの課題は、緩衝装置の発熱です。緩衝装置は、路面からの衝撃を吸収する際に熱を発生させます。通常のサスペンションでは、この熱は走行風によって冷却されますが、インボードサスペンションでは緩衝装置が車体内部に配置されているため、冷却効率が低いという問題があります。熱くなった緩衝装置は性能が低下し、最悪の場合、破損してしまうこともあります。そのため、適切な冷却対策を施すことが不可欠です。例えば、冷却用の空気の通り道を設けたり、熱伝導率の高い材料を使用したりといった工夫が必要です。これらの対策には高度な設計技術と、熱の制御に関する専門知識が求められます。

このように、インボードサスペンションは優れた性能を持つ反面、複雑な構造と冷却の問題という、解決すべき課題も抱えています。これらの課題を克服するために、技術者たちは日々研究開発に取り組んでいます。

項目 内容 メリット デメリット
インボードサスペンション 緩衝装置を車体側に取り付ける方式 – ばね下重量の軽減による路面追従性の向上
– 空力特性の改善
– 複雑な構造:部品点数や連結機構が複雑で、設計・製造・組み立て・調整・整備が難しい

– 冷却の問題:車体内部に配置されるため冷却効率が悪く、適切な冷却対策が必要

様々な方式

様々な方式

車輪を支える仕掛け、特に独立懸架式においては、ばねとショックアブソーバーの位置と動きの伝え方が様々です。大きく分けて、車輪と同じ側にばねとショックアブソーバーを置く方式と、そうでない方式、つまり車体中心側に置く方式があります。後者の方式を車体中心懸架、またはインボードサスペンションと呼びます。インボードサスペンションは、様々な機構によって実現されますが、大きく分けて揺動腕式、押し棒式、引き棒式に分類できます。

揺動腕式は、比較的簡単な構造をしています。揺動する腕のような部品を用いて、ばねとショックアブソーバーの動きを車輪に伝えます。この方式は、初期の車体中心懸架に多く採用され、構造が単純なため整備もしやすいという利点があります。しかし、車輪の動きに対するばねとショックアブソーバーの反応が単純であるため、路面からの細かい振動を吸収する能力は、他の方式と比べて劣る場合があります。

押し棒式と引き棒式は、揺動腕式よりも複雑な構造をしています。これらの方式では、棒を使ってばねとショックアブソーバーの動きを車輪に伝えます。押し棒式は棒を押し出すことで、引き棒式は棒を引っ張ることで力を伝えます。これらの方式は、部品の配置の自由度が高く、車輪の動きを細かく制御できるため、高い性能を引き出すことが可能です。しかし、構造が複雑なため、設計や整備には高度な技術が必要となります。

どの方式を選ぶかは、車の目的に合わせて、設計者が決めます。例えば、街乗り用の車であれば、乗り心地を重視して揺動腕式を選ぶかもしれません。一方、レース用の車であれば、高い運動性能を求めて押し棒式や引き棒式を選ぶかもしれません。近年では、計算機を使った模擬実験技術が発達しており、様々な条件下での車の動きを予測し、最適な方式を選ぶことが可能になっています。このように、車体中心懸架は様々な方式があり、それぞれに特徴があります。設計者は車の目的に合わせて最適な方式を選び、より良い車を作るために日々努力を重ねています。

方式 説明 利点 欠点
揺動腕式 揺動する腕のような部品でばねとショックアブソーバーの動きを車輪に伝える。 構造が単純で整備がしやすい。 路面からの細かい振動吸収性は低い。
押し棒式 棒を押し出すことでばねとショックアブソーバーの動きを車輪に伝える。 部品配置の自由度が高く、車輪の動きを細かく制御でき、高性能。 構造が複雑で設計・整備に高度な技術が必要。
引き棒式 棒を引っ張ることでばねとショックアブソーバーの動きを車輪に伝える。 部品配置の自由度が高く、車輪の動きを細かく制御でき、高性能。 構造が複雑で設計・整備に高度な技術が必要。

歴史と進化

歴史と進化

車輪を支える仕組である懸架装置、いわゆるサスペンションの歴史において、車体内部に収める構造のインボードサスペンションは大きな転換点となりました。その始まりは1961年、ロータス21という競技車両に初めて搭載されたことに遡ります。それまでの車は、車輪を支える装置が車体外部に露出しているのが一般的でした。そのため、空気抵抗が生じやすく、車の速さを追求する上で大きな課題となっていました。インボードサスペンションは、これらの装置を車体内部に組み込むことで、空気抵抗を減らし、車の性能向上に大きく貢献しました。競技車両の世界に衝撃を与えたこの技術は、瞬く間に広がり、他の競技車両にも採用されるようになりました。

初期のインボードサスペンションは、複雑な構造と高い製造費用が課題でした。しかし、技術の進歩と共に、これらの課題は克服されていきます。素材の軽量化は大きな進歩の一つです。軽い素材を使うことで、車の重量を軽減し、運動性能を向上させることが可能になりました。また、加工技術の向上も大きな役割を果たしました。精度の高い加工により、部品の耐久性が向上し、より信頼性の高いサスペンションが実現しました。

近年では、電子制御技術の発展も目覚ましいものがあります。コンピューター制御によって、路面状況や走行状況に合わせてサスペンションの硬さを自動的に調整することが可能になりました。これにより、どんな状況でも安定した走行性能を確保できるようになりました。滑りやすい路面や凸凹の激しい路面でも、ドライバーは安心して運転に集中することができます。かつては競技車両でしか見られなかったインボードサスペンションは、今では多くの市販車にも採用されています。快適性と安全性を両立するこの技術は、これからも進化を続け、未来の車にとって欠かせない存在となるでしょう。

時代 特徴 メリット デメリット/課題
1961年~ ロータス21に初搭載
車体内部に懸架装置を配置
空気抵抗軽減、性能向上 複雑な構造、高い製造費用
技術進歩後 素材の軽量化、加工技術の向上 軽量化による運動性能向上、耐久性向上、信頼性向上
近年 電子制御技術による自動調整機能 路面状況に応じた安定走行、快適性と安全性向上