10モード排出ガス規制とは

10モード排出ガス規制とは

車のことを知りたい

先生、「10モード」って、どういう意味ですか? 車の排出ガスについて調べていたら出てきたのですが、よくわかりません。

車の研究家

10モードとは、昔、車の排出ガス量を測るために使われていた試験方法のことだよ。簡単に言うと、車を試験装置の上に置いて、決まったパターンで運転させて、どれだけの排出ガスが出るのかを測る方法なんだ。

車のことを知りたい

決まった運転パターンというのは、どういうものですか?

車の研究家

街中を走る時の運転を再現したパターンで、最高速度は時速40キロメートルなんだ。このパターンを10種類組み合わせたから「10モード」という名前になったんだよ。今はもっと複雑な方法で測っているけどね。

10モードとは。

「10モード」とは、日本で初めて車の排気ガス規制が始まった時に、排気ガスの量を測る試験方法の一つです。この試験では、車をローラーの上に乗せて、エンジンを温めた状態から走らせ始めます。そして、一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物といった排気ガスの量を測り、1キロメートルあたり何グラム排出したかを計算します。10モードは、ガソリンやLPGを燃料とする2.5トン以下の車に対し、1973年に街中を走る時と同じような走り方(最高速度は時速40キロメートル)を想定した試験方法として使われ始めました。その後、ディーゼル車などにも使われましたが、1991年には10・15モードという新しい試験方法に変わりました。

初めての排出ガス規制

初めての排出ガス規制

かつて、自動車の普及とともに、排気ガスによる大気汚染が深刻な社会問題となっていました。工場の煙突から出る煙のように目に見えるものではありませんでしたが、自動車から排出される目に見えない有害物質が、私たちの健康や環境に大きな悪影響を与えていたのです。そこで、大気を守り、人々の健康を守るために、国は自動車から排出される有害物質の量を規制する必要性に迫られました。そして、1973年、日本では自動車の排出ガス規制が初めて導入されることになりました。これは、日本の自動車の歴史における大きな転換点であり、環境保護への意識が高まり始めた時代を象徴する出来事と言えるでしょう。

この初めて導入された排出ガス規制では、「10モード」と呼ばれる試験方法を用いて、排出ガス量を測定することになりました。10モードとは、一定の速度変化と停止を繰り返す運転パターンを模擬した試験方法です。実際の走行状態を再現することで、より正確な排出ガス量を測定することを目指しました。しかし、この10モード試験は、実際の道路状況を完全に再現するには至らず、測定値と実際の排出ガス量との間にずれが生じることもありました。

当時は、排出ガス規制に対応するための技術も未熟で、自動車メーカー各社は、規制値をクリアするために様々な試行錯誤を繰り返していました。例えば、エンジンの燃焼効率を改善したり、排気ガスを浄化する装置を開発したりと、様々な技術革新が行われました。今では当たり前となっている排出ガス規制ですが、当時はまだ始まったばかりで、多くの課題を抱えていたのです。しかし、この初めての排出ガス規制が、その後のより厳しい規制へとつながり、日本の自動車の環境性能向上に大きく貢献したことは間違いありません。今では、より高度な試験方法が導入され、排出ガス規制も強化されています。この歴史を振り返ることで、環境保護の重要性を改めて認識し、未来のよりクリーンな自動車社会の実現に向けて、努力を続ける必要があると言えるでしょう。

年代 出来事 詳細 課題
1973年 日本の自動車排出ガス規制導入 10モード試験方法による排出ガス量の測定開始
  • 10モード試験は実際の道路状況を完全に再現できていなかったため、測定値と実際の排出ガス量との間にずれが生じる可能性があった。
  • 排出ガス規制に対応するための技術が未熟だった。

10モード試験の方法

10モード試験の方法

10モード試験は、自動車から出る排出ガスに含まれる有害物質の量を調べる試験方法です。この試験では、車を専用の装置であるシャーシダイナモメーターに固定します。シャーシダイナモメーターは、タイヤを回転させる大きなローラーがついた装置で、実際に車を走らせなくても、様々な走行状態を再現できます。

試験を始める前に、まずエンジンの温度を上げます。エンジンが温まった状態から、あらかじめ決められた10種類の運転パターンで試験を始めます。この10種類の運転パターンは、街中での一般的な運転を想定して作られています。信号待ちで止まっている状態や、発進、加速、減速、定速走行など、様々な状況が含まれています。それぞれの運転パターンを「モード」と呼び、10個のモードを順番に繰り返して、排出ガスを測定します

測定する排出ガスは、主に一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった有害物質です。これらの物質は、大気汚染や健康被害の原因となるため、排出量を少なくすることが重要です。10モード試験では、各モードで排出されるこれらの有害物質の量を精密に測定し、走行距離1キロメートルあたりのグラム数(グラム毎キロメートル)で表します。この数値が小さいほど、排出ガスが少ないことを示します。

10モード試験は、当時の技術で可能な限り実際の走行状態を再現し、排出ガス規制の効果を確かめる上で大切な役割を果たしました。しかし、技術の進歩とともに、より実際の走行状態に近い試験方法が求められるようになり、今では使われていません。それでも、過去の排出ガス規制の歴史を知る上で重要な試験方法と言えるでしょう。

項目 説明
試験の目的 自動車の排出ガスに含まれる有害物質の量を測定
試験装置 シャーシダイナモメーター(タイヤを回転させるローラー付き装置)
試験手順 エンジンを温めた後、10種類の運転パターン(モード)を繰り返し、排出ガスを測定
運転パターン 街中での一般的な運転を想定(信号待ち、発進、加速、減速、定速走行など)
測定物質 一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物
測定単位 グラム毎キロメートル(g/km)
試験の意義 過去の排出ガス規制の歴史を知る上で重要
現状 現在はより高度な試験方法に移行

規制の対象となる自動車

規制の対象となる自動車

昭和四十八年に初めて導入された十種走行モード排出ガス規制は、市街地の大気汚染を改善することを主な目的としていました。当時、最も普及していた乗用車、すなわちガソリン車と液化石油ガス車を燃料とする車両重量二・五トン以下の自動車が規制の対象となりました。これは、交通量が多く、排気ガスによる影響が大きいと考えられた市街地を走る、一般的な自動車を規制することで、より大きな効果を期待したためです。

この規制は、主に窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素といった有害物質の排出量を制限するものでした。規制値は、当時の技術水準を考慮して設定され、自動車メーカーは、規制をクリアするために、エンジンの改良や排気ガス浄化装置の開発を進めました。

その後、ディーゼルエンジンを搭載した乗用車の普及に伴い、これらの車両も排出ガス規制の対象となりました。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて窒素酸化物や粒子状物質の排出量が多い傾向があるため、ガソリン車よりも厳しい規制値が適用されました。

時代が進むにつれて、環境問題への意識の高まりとともに、排出ガス規制は強化され、対象となる自動車の種類も拡大していきました。今では、普通乗用車だけでなく、貨物自動車やバス、二輪車なども規制の対象となっており、より幅広い種類の自動車が環境規制の遵守を求められています。このように、排出ガス規制は、大気環境の保全に向けて、時代に合わせて変化し、より多くの自動車を対象とすることで、私たちの健康と安全を守っています。

規制対象 規制物質 規制値 備考
車両重量2.5トン以下のガソリン車、液化石油ガス車 窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素 当時の技術水準を考慮 市街地の大気汚染改善を目的
交通量が多く、排気ガスによる影響が大きいと考えられた市街地を走る一般的な自動車を規制
ディーゼル乗用車 窒素酸化物、粒子状物質 ガソリン車より厳しい ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べ窒素酸化物や粒子状物質の排出量が多い傾向があるため
普通乗用車、貨物自動車、バス、二輪車など 窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素、粒子状物質など 時代に合わせて強化 環境問題への意識の高まりとともに規制強化、対象拡大

10モード試験の限界

10モード試験の限界

かつて、車の排ガス量を測る方法として、10モード試験というやり方が使われていました。この試験は、当時の技術ではとても画期的な方法だったのですが、実際の道路を走る時の状態をすべて再現するには、どうしても限界がありました。

例えば、この試験では一番速い速度が時速40キロメートルまでに決められていました。ですから、高速道路のように速く走る時の排ガスの状態は、この試験では分からなかったのです。また、急に速度を上げたり、急にブレーキを踏んだりするような、複雑な運転の時の排ガスの量も測れませんでした。

人々が実際に車を運転する時の色々な状況を考えると、10モード試験だけでは本当の排ガスの量を正確に知ることは難しかったのです。この試験では、止まっている状態や、ゆっくりと走る状態、そして少し速く走る状態、といったいくつかの決まったパターンでしか排ガスの量を測っていませんでした。しかし、実際の道路では、もっと色々な運転の仕方があります。信号で止まったり、急に発進したり、坂道を上ったり下りたり、カーブを曲がったりと、状況は常に変化します。

10モード試験は、このような複雑な運転状況を再現できていなかったため、実際の排ガスの量とはずれが生じてしまうことがありました。例えば、渋滞が多い道路をよく走る車と、高速道路をよく走る車では、排ガスの量は違います。しかし、10モード試験では、そのような違いを正確に捉えることができませんでした。

そのため、より正確に排ガスの量を測るためには、もっと色々な運転パターンを再現できる、新しい試験方法が必要になりました。10モード試験は、当時の技術では画期的でしたが、時代の流れとともに、その限界が明らかになってきたのです。

試験方法 内容 問題点
10モード試験 当時の技術では画期的。いくつかの決まったパターン(最高速度40km/hまで)で排ガス量を測定。
  • 高速走行時の排ガス状態がわからない。
  • 急加速・急ブレーキ時の排ガス量が測れない。
  • 複雑な運転状況を再現できないため、実際の排ガス量とずれが生じる。
  • 走行状況の異なる車による排ガス量の差を正確に捉えられない。

新たな試験方法への移行

新たな試験方法への移行

自動車の排出ガス測定試験は、時代と共に進化を続けてきました。かつては10種類の走行パターンで排出ガスを測定する、いわゆる10モード試験が主流でした。しかし、この試験方法では、実際の道路を走る状況を十分に再現できないという問題点がありました。例えば、ストップ・アンド・ゴーを繰り返す都市部での走行や、高速道路での走行といった、より複雑で多様な運転状況を反映できていなかったのです。

そこで、より実態に即した排出ガス量を把握するため、1991年から10・15モード試験が導入されました。この試験方法は、従来の10モードに加え、5つの走行パターンを追加することで、より高い速度域や加減速の状態を細かく設定したものです。具体的には、高速道路を想定したより高い速度域での走行や、より急な加減速といった、10モード試験ではカバーしきれなかった運転状況が追加されました。これにより、従来の試験方法よりも、実際の走行状態に近い排出ガス量を測定できるようになりました。

この変更は、自動車メーカーにとって、より厳しい排出ガス規制への対応を迫るものでした。しかし、より正確な排出ガス量の測定は、大気汚染の抑制という観点から非常に重要です。技術の進歩と共に、排出ガス測定方法は常に改良が加えられてきました。それは、より正確で信頼性の高い結果を得るためであり、環境保護への意識の高まりを反映したものです。今後も、技術革新と共に、排出ガス測定方法は更なる進化を遂げることでしょう。

試験方法 内容 メリット デメリット
10モード試験 10種類の走行パターンで排出ガスを測定 シンプルな試験方法 実際の道路状況を十分に再現できない
10・15モード試験 10モード試験に5つの走行パターンを追加
より高い速度域や急加減速の状態を測定
従来の試験方法よりも実際の走行状態に近い排出ガス量を測定できる
大気汚染の抑制に貢献
自動車メーカーにとって、より厳しい排出ガス規制への対応が必要

環境規制の進化

環境規制の進化

かつて、日本の自動車の排気ガスに関する様々な決まり事の始まりとして、10種類の運転状態を想定した試験による排気ガス規制がありました。この10モードと呼ばれる規制は、当時としては画期的なものでしたが、時代の流れとともに、技術の進歩や環境問題への関心の高まりを受けて、より厳しい規制へと変わっていきました。

まず、10モードにいくつかの運転状態を加え、より細かい状況を想定した10・15モードに改められました。これは、より実走行に近い形で排気ガスを測定しようという動きであり、規制強化への大きな一歩となりました。

その後、JC08モードと呼ばれる試験方法が導入されました。これは、市街地走行や郊外走行、高速走行など、より多様な運転状況を想定したもので、それまでの試験方法よりも複雑で、より現実に近い排気ガスの測定を可能にしました。

そして、世界的に統一された試験方法であるWLTCモードが採用されるようになりました。この方法は、世界各国で異なる試験方法を統一することで、国際的な環境基準への適合を容易にするだけでなく、より厳しい排出ガス規制を実現する上で重要な役割を果たしました。

このように、排気ガス規制は時代とともに進化を続け、その度に自動車を作る会社は、より環境に優しい技術を開発することを迫られました。この規制の進化が、より環境に配慮した自動車の普及を促し、私たちの周りの空気を綺麗にすることに大きく貢献してきたと言えるでしょう。今後も、技術革新や環境問題への意識の変化に合わせて、排気ガス規制はさらに進化していくと考えられます。

規制名 特徴
10モード 10種類の運転状態を想定した初期の排ガス規制。
10・15モード 10モードにいくつかの運転状態を追加。より実走行に近い測定を目指した。
JC08モード 市街地、郊外、高速など多様な運転状況を想定。より現実に近い排ガス測定が可能に。
WLTCモード 世界的に統一された試験方法。国際的な環境基準への適合を容易にし、より厳しい規制を実現。