燃費に影響するブレーキの引きずり抵抗
車のことを知りたい
先生、「引きずり抵抗」っていうのがよくわからないんです。ブレーキを踏んでいないのに、ブレーキがかかった状態になっているということですか?
車の研究家
そうだね。ブレーキペダルから足を離しているのに、完全にブレーキが解放されずに、少しだけブレーキがかかり続けている状態のことを「引きずり抵抗」と言うんだ。自転車で例えると、ブレーキレバーを握っていないのに、ブレーキパッドが少しだけリムに当たって抵抗になっている状態に似ているよ。
車のことを知りたい
なるほど。自転車でそういう状態になったことはあります。でも、なぜそんな状態になるんですか?
車の研究家
いくつかの原因が考えられるけど、例えば、ディスクブレーキの場合は、ブレーキを解除した時にピストンが完全に元の位置に戻らず、ブレーキパッドがディスクに少しだけ接触したままになっていることがよくある。他にも、ブレーキパッドの偏摩耗なども原因になるよ。このような「引きずり抵抗」があると、燃費が悪くなるなどの影響があるんだ。
引きずり抵抗とは。
ブレーキを踏んでいない普通の走行状態でも、ブレーキの効きが少し残ってしまうことを「引きずり抵抗」と言います。これは、ブレーキを離しても完全に効きが消えず、常に少しブレーキがかかった状態になっているためです。この「引きずり抵抗」を回転する軸の力に置き換えて表現したものを「引きずりトルク」と言います。
例えば、ディスクブレーキという種類のブレーキでは、ブレーキペダルを離した時に、ブレーキを動かす部品(ピストン)が十分に戻らないと、この「引きずり」が大きくなります。ピストンの戻り具合はペダルを踏み始めた時の動きに大きく影響するため、「引きずり」とペダルの遊び具合のバランスを取ることが大切です。また、ブレーキパッドが片減りしていると、「引きずり」が大きくなることもあります。
ドラムブレーキという種類のブレーキでは、ブレーキ部品(シュー)の中心がずれていると「引きずり」が発生することがありますが、通常は問題にならない程度です。
この「引きずり抵抗」は燃費にも影響します。
ブレーキの引きずり抵抗とは
車は止まるためにブレーキを使います。ブレーキを踏むと、摩擦材と呼ばれる部品が回転する円盤やドラムに押し付けられ、その摩擦によって車を止めます。ペダルを離せば、本来この摩擦材は円盤やドラムから離れ、自由に回転するはずです。しかし、様々な理由で摩擦材が完全に離れず、少しだけ接触したままになっていることがあります。これをブレーキの引きずり抵抗と言い、常に軽くブレーキを踏んでいるような状態です。
この引きずり抵抗は、回転する物体の動きを邪魔する力であり、専門的には「トルク」という単位で測られます。ブレーキにおけるこのトルクを「引きずりトルク」と言います。引きずりトルクが大きければ大きいほど、車の動きを邪魔する力が強くなります。
引きずり抵抗があると、いくつかの問題が生じます。まず、燃費が悪くなります。常にブレーキがかかった状態なので、エンジンはより多くの力を使って車を動かさなければならず、結果として多くの燃料を消費します。また、ブレーキ部品の摩耗も早くなります。摩擦材や円盤、ドラムが常に擦れ合っているため、これらの部品が早くすり減ってしまいます。さらに、ブレーキの温度が上昇し、ブレーキの効きが悪くなる可能性もあります。これをブレーキフェードと言い、大変危険です。
引きずり抵抗の原因は様々です。ブレーキの部品の動きが悪くなっていたり、ブレーキフルードと呼ばれる液体の圧力が高すぎたり、ブレーキペダルの調整が不適切だったりするなどが考えられます。これらの原因を特定し、適切な修理や調整を行うことで、引きずり抵抗を解消し、燃費の向上、ブレーキ部品の寿命の延長、そして安全な運転を実現することが出来ます。そのため、日頃から車の状態に気を配り、少しでも異常を感じたら、整備工場で点検を受けることが大切です。
引きずり抵抗(ブレーキの引きずり) | 問題点 | 原因 | 対策 |
---|---|---|---|
摩擦材が回転円盤/ドラムから完全に離れず、軽くブレーキがかかった状態 |
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整備工場で点検・修理 |
引きずり抵抗の発生原因
車の減速時に重要な役割を果たすブレーキですが、そのブレーキに引きずり抵抗という現象が発生することがあります。この引きずり抵抗は、ブレーキを踏んでいない時にもブレーキがわずかに効き続けている状態で、燃費の悪化やブレーキ部品の摩耗を早める原因となります。引きずり抵抗の発生原因は、ブレーキの種類によって異なります。
まず、ディスクブレーキの場合、最も多い原因はピストンシールの戻り不良です。ブレーキペダルを踏むと、ブレーキ液の圧力によってピストンが押し出され、ブレーキパッドが回転するディスクに押し付けられて減速します。ペダルから足を離すと、ピストンは元の位置に戻ることでパッドとディスクの接触が解除され、ブレーキが効かなくなります。しかし、ピストンシールが劣化したり、ブレーキ液が適切な状態ではないと、ピストンが完全に押し戻されず、パッドがディスクに軽く接触し続けます。このピストンの戻り量はフォールバックと呼ばれ、フォールバックが少ないほど引きずり抵抗は大きくなります。
また、パッドの偏った摩耗も引きずりを大きくする要因です。パッドが均一に摩耗していないと、ディスクとの接触面積が大きくなり、抵抗が増加します。パッドがディスクに常に接触している部分が限られていると、その部分の温度が上昇し、局所的な摩擦の増加につながる可能性があります。
一方、ドラムブレーキの場合は、ブレーキシューの取り付け位置のずれが主な原因です。シューがドラムの中心からずれていると、ドラムとの接触面積が増え、引きずり抵抗が発生します。これは、ドラムブレーキの構造上、シューがドラムの内側に広がるように作動するため、中心からずれていると一部がドラムに接触しやすくなるためです。ただし、ドラムブレーキは自己サーボ作用という特性があり、制動時にシューがドラムに押し付けられる力が強まるため、軽度の引きずりは自然に解消される場合もあります。そのため、ドラムブレーキでは、正常な状態であれば引きずり抵抗は無視できる程度です。
このように、引きずり抵抗の原因はブレーキの種類によって異なりますが、いずれの場合も定期的な点検と整備によって予防することができます。燃費の悪化やブレーキ部品の摩耗を防ぐためにも、ブレーキの違和感を感じたら早めに専門家に見てもらうことが大切です。
ブレーキの種類 | 引きずり抵抗の主な原因 | 詳細 |
---|---|---|
ディスクブレーキ | ピストンシールの戻り不良 | ブレーキペダルを離した際に、ピストンが完全に押し戻されないため、パッドがディスクに軽く接触し続ける。ピストンの戻り量(フォールバック)が少ないほど、引きずり抵抗は大きい。 |
ディスクブレーキ | パッドの偏った摩耗 | パッドが均一に摩耗していないと、ディスクとの接触面積が大きくなり、抵抗が増加する。 |
ドラムブレーキ | ブレーキシューの取り付け位置のずれ | シューがドラムの中心からずれていると、ドラムとの接触面積が増え、引きずり抵抗が発生する。ただし、自己サーボ作用により軽度の引きずりは解消される場合もある。 |
ペダル遊びとの関係
車のブレーキを踏む部分、足で操作する板状の部品、これを踏板と呼びますが、この踏板の遊び、つまり踏板を踏んでから実際にブレーキが効き始めるまでの踏みしろの量は、ブレーキの性能に大きく関わってきます。特に、円盤状の部品を挟み込んで車を止める仕組みである円盤ブレーキにおいては、この遊びの量は重要です。
踏板の遊びは、ブレーキの部品である作動筒を押し戻すための余裕として機能します。円盤ブレーキは、油の圧力を使って作動筒を動かし、摩擦材を円盤に押し付けて車を止めます。踏板を離すと、油の圧力は下がり、作動筒は元の位置に戻ります。この時、作動筒が完全に元の位置に戻らないと、摩擦材が円盤に軽く接触し続け、抵抗が発生します。これが引きずり抵抗です。引きずり抵抗があると、燃費が悪化したり、ブレーキ部品の摩耗が早まったりする原因となります。
踏板の遊びが適切であれば、作動筒は十分に押し戻され、摩擦材と円盤の接触は避けられ、引きずり抵抗を最小限に抑えることができます。しかし、踏板の遊びが少なすぎると、作動筒が完全に押し戻されず、引きずり抵抗が発生してしまいます。これは、常にブレーキを軽く踏んでいる状態と同じであり、燃費の悪化やブレーキ部品の過剰な摩耗につながります。
反対に、踏板の遊びが多すぎると、踏板を踏んでもすぐにブレーキが効かず、ブレーキの効きが悪くなります。これは、踏板を踏んでから作動筒が動き始めるまでに時間がかかるためです。ブレーキの効きが悪いと、危険な状況で十分な制動力が得られず、思わぬ事故につながる可能性があります。つまり、停止するまでの距離が長くなってしまうのです。
このように、引きずり抵抗を少なくし、かつ十分な制動力を確保するためには、踏板の遊びの量を適切に調整することが非常に重要です。最適な踏板の遊びの量は車の種類によって異なります。車の説明書や整備の手引書には、適切な遊びの量が記載されていますので、それを参考に調整するようにしてください。遊びの量の調整は、専門的な知識と技術が必要ですので、ご自身で調整するのではなく、整備工場などの専門業者に依頼することをお勧めします。
踏板の遊び | 状態 | 結果 |
---|---|---|
適切 | 作動筒が十分に押し戻され、摩擦材と円盤の接触なし | 引きずり抵抗最小限、燃費良好、ブレーキ部品の摩耗抑制 |
少なすぎ | 作動筒が完全に押し戻されず、摩擦材と円盤が接触 | 引きずり抵抗発生、燃費悪化、ブレーキ部品の摩耗促進 |
多すぎ | 踏板を踏んでもすぐにブレーキが効かない | ブレーキの効きが悪い、制動距離が長くなる、危険 |
燃費への影響
車は走るために燃料を使いますが、その量は様々な要因で変わります。中でも燃費に大きな影響を与える要素の一つとして、ブレーキの引きずり抵抗が挙げられます。引きずり抵抗とは、ブレーキ部品が完全に解放されず、わずかにブレーキがかかった状態が続く現象です。たとえわずかな抵抗であっても、常にブレーキがかかっている状態は、車を走らせるための抵抗を増大させます。
エンジンは、この抵抗に打ち勝って車を動かすために、より多くの力が必要になります。必要な力が増えれば、当然、消費する燃料の量も増えます。これは、重い荷物を積んだトラックが、空のトラックよりも多くの燃料を消費するのと同じ原理です。引きずり抵抗は、常にわずかながら重い荷物を積んでいるのと同じような状態を作り出していると言えるでしょう。
特に、信号の多い街中や、渋滞の多い道路など、停止と発進を繰り返す状況では、引きずり抵抗の影響はより顕著になります。このような状況では、ブレーキを使う機会が多いため、引きずり抵抗が発生する可能性も高くなります。一回の停止や発進における燃料消費量の増加はわずかかもしれませんが、何度も繰り返されることで、最終的には無視できない量の燃料が無駄になります。
長距離の運転だけでなく、日常の短い距離の運転でも、引きずり抵抗は燃費に影響を与えます。毎日少しずつ無駄になる燃料も、長い目で見れば大きな量になります。家計への負担を軽減し、環境への影響を抑えるためにも、引きずり抵抗を最小限に抑えるよう心がけることが大切です。日頃からブレーキの点検整備を行い、異常を感じたらすぐに修理工場で点検してもらうことで、燃費の向上に繋がるだけでなく、安全運転にも繋がります。
点検と整備の重要性
車は、私たちの生活に欠かせない移動手段であり、安全で快適な運転を楽しむためには、定期的な点検と整備が非常に大切です。特に、ブレーキは安全運転に直結する重要な部品であり、万が一の事故を防ぐためにも、日頃から気を配り、適切な処置を行う必要があります。
ブレーキの点検では、まずブレーキパッドやブレーキシューのすり減り具合を確認します。これらは、ブレーキをかけた際に摩擦を起こして車を止める役割を果たす部品で、使い続けると徐々にすり減っていきます。すり減りがひどくなると、ブレーキの効きが悪くなるだけでなく、ブレーキディスクやドラムといった他の部品も傷つけてしまう可能性があります。そのため、定期的に点検し、必要に応じて交換することが重要です。
次に、ブレーキの液体の量と状態も確認する必要があります。ブレーキの液体は、ブレーキペダルを踏んだ力を各車輪のブレーキに伝える役割を果たしており、量が不足していたり、劣化していたりすると、ブレーキの効きが悪くなってしまいます。ブレーキの液体の量は、点検窓で確認できます。また、古くなったブレーキの液体は水分を含んでしまい、ブレーキの効きが悪くなる原因となりますので、定期的に交換することが大切です。
ブレーキを踏んだ時にペダルが動く範囲(遊び)も重要です。遊びが大きすぎるとブレーキの反応が遅れ、小さすぎるとブレーキが効きっぱなしの状態になる可能性があります。遊びの量は適切な範囲に調整する必要があります。
少しでも異常に気付いたら、すぐに専門の整備工場に相談しましょう。整備士は専門の知識と技術を持っており、ブレーキの状態を正確に診断し、適切な整備を行うことができます。適切な点検と整備を行うことで、ブレーキの性能を維持し、安全で快適な運転を楽しむことができます。日頃から車の状態に気を配り、安全運転を心がけましょう。
点検項目 | 内容 | 重要性 |
---|---|---|
ブレーキパッド/ブレーキシューのすり減り | ブレーキ時に摩擦を起こして車を止める部品の摩耗状態を確認 | すり減りがひどいとブレーキの効きが悪化し、他の部品を損傷する可能性あり |
ブレーキ液の量と状態 | ブレーキペダルの力を各車輪に伝える液体の量と劣化状態を確認 | 不足や劣化はブレーキの効きを悪くする |
ブレーキペダルの遊び | ペダルが動く範囲を確認 | 遊びが大きすぎると反応が遅れ、小さすぎるとブレーキが効きっぱなしになる可能性あり |
異常に気付いた場合の対応 | すぐに専門の整備工場に相談 | 整備士による正確な診断と適切な整備が必要 |