世界の道を駆ける:海外開発拠点の役割
車のことを知りたい
『海外開発拠点』って、なぜ海外に作る必要があるんですか?日本で開発すればいいんじゃないですか?
車の研究家
いい質問ですね。日本で開発してもいいのですが、その国で売る車を日本で開発すると、その国の環境や文化に合わない車になってしまうことがあるんです。例えば、日本ではあまり雪が降らない地域も多いですが、雪がたくさん降る国では、雪道に強い車を作る必要がありますよね。
車のことを知りたい
なるほど。雪道以外にも、何か違いはありますか?
車の研究家
他にも、例えば暑い国では冷房の効きが強い車が必要ですし、色の好みや車の大きさなども国によって違います。その国で売る車は、その国の人の好みに合わせて作る必要があるため、海外に開発拠点を作るんです。
海外開発拠点とは。
自動車を作る際に『海外開発拠点』という言葉があります。自動車の開発はその車が使われる社会と深く関わっているため、海外市場向けに作る場合は、その市場がある地域に開発の拠点を置く必要があります。これを指して『海外開発拠点』と言います。市場の自然環境や社会、文化、そして自動車や道路交通に関する法律など、共通点が多いことから、一般的に北アメリカ、ヨーロッパ、中国に開発拠点を置くことが多いです。自然環境に合わせたサビ止め対策や、埃対策、ギアの比率調整、サスペンションの調整などが必要となるほか、社会や文化に合わせたカタログの言語、車体のデザイン、色、内装など、車の仕様を決める要素は様々で、地域によって大きく異なります。さらに、その地域の役所から車の型式認定を受けることも、海外開発拠点の重要な仕事の一つです。
なぜ海外に開発拠点を置くのか
車は、ただ人を運ぶだけの道具ではありません。それぞれの国や地域で、文化や暮らしに深く結びついています。日本で考え出された車が、そのまま他の国で人気になるとは限りません。道路の状態、気候、人々の好み、法や規則まで、国によって大きく違います。
例えば、日本の道路は世界的に見ても変わっています。狭い道や曲がりくねった道が多い一方、高速道路も発達しています。このような環境で開発された車は、広々とした土地にまっすぐな道が続く国では、必ずしも良いとは言えません。また、高温多湿な東南アジアと、寒い北欧では、求められる車の性能も大きく違ってきます。
それぞれの地域に合った車を作るためには、現地の人の必要とするものを深く理解し、その環境に合わせた開発を行う必要があります。暑い国では、冷房の効きが良く、故障しにくい丈夫なエンジンが求められます。寒い国では、雪道や凍結した路面でも安全に走れる性能が必要です。さらに、国によって車の大きさやデザインの好み、安全基準も違います。
そのため、車を作る会社は世界各地に開発の拠点を置き、地域に密着した車作りを進めています。現地の技術者やデザイナーを取り入れることで、その土地の文化や習慣、細かいニーズを理解し、より良い車を作ることができるのです。さらに、現地で開発を行うことで、部品の調達や生産のコストを抑え、競争力を高める効果も期待できます。このように、海外に開発拠点を置くことは、それぞれの地域で愛される車を作る上で、非常に重要な戦略なのです。
項目 | 内容 |
---|---|
道路環境 | 日本:狭い道、曲がりくねった道、高速道路 その他:広々とした土地、まっすぐな道など |
気候 | 東南アジア:高温多湿 北欧:寒冷 |
求められる性能 | 暑い国:強力な冷房、故障しにくいエンジン 寒い国:雪道・凍結路面での走行性能 |
その他 | 車の大きさ、デザイン、安全基準 |
開発拠点 | 世界各地に設置、地域に密着した車作り |
開発拠点のメリット | 現地のニーズ理解、部品調達・生産コスト削減、競争力向上 |
世界の主要拠点:北米、欧州、中国
車を作る会社は、世界中に開発の拠点を置いています。中でも特に大切な拠点として、北米、ヨーロッパ、中国の三つが挙げられます。これらの地域は、世界の車市場で大きな割合を占めており、それぞれの文化や規則に合わせて車作りをする必要があるため、それぞれの地域に特化した開発拠点が必要となるのです。
北米は、広い土地を走る大きな車や荷台付きの車が人気です。そのため、安全で乗り心地が良いだけでなく、力強いエンジンの性能も求められます。広々とした高速道路を快適に長距離移動できること、荒れた路面でも安定した走りができることが重要視されます。また、トレーラーを牽引する需要も高く、高い牽引能力も求められます。
ヨーロッパでは、環境問題への関心が高く、燃費が良い、環境に優しい車が求められています。同時に、石畳の道や山道にも対応できるしっかりとした走行性能も重要です。ヨーロッパの道は、北米に比べて狭く曲がりくねっていることが多いため、小回りが利くことも重要になります。
中国では、近年、車の市場が急速に大きくなっており、街中で使いやすい小さな車や、最近は多目的乗用車の人気が高まっています。経済成長に伴い、マイカーを持つ人が増え、渋滞の激しい都市部での運転に適した小回りの利く車が好まれます。また、近年では経済的にゆとりがある層を中心に、多人数乗車可能な多目的乗用車の人気が高まっています。
このように、地域によって求められる車の特徴は大きく違います。それぞれの市場に合った車を作るためには、その地域に根ざした開発拠点が欠かせないのです。
地域 | 求められる車の特性 | 理由 |
---|---|---|
北米 | 安全で乗り心地が良い、力強いエンジン、広々とした高速道路での快適な長距離移動、荒れた路面での安定走行、高い牽引能力 | 広い土地、トレーラー牽引の需要 |
ヨーロッパ | 燃費が良い、環境に優しい、しっかりとした走行性能、小回りが利く | 環境問題への関心、石畳や山道、狭い道が多い |
中国 | 小回りが利く、多人数乗車可能な多目的乗用車 | 都市部での運転、経済成長に伴うマイカー増加、多人数乗車ニーズ |
開発拠点の主な業務内容
海外に設けられた開発の拠点は、その土地の需要を探るだけにとどまらず、幅広い仕事を受け持っています。市場の動向を調べる作業から始まり、車の形を決める構想、具体的な設計作業、試作車の試験、そして国への認可申請に至るまで、全ての段階に関わっています。
まず、市場調査では、現地の道路事情、気候条件、人々の好みなどを細かく調べます。舗装の状態が良いのか悪いのか、気温や湿度はどの程度か、人々は何を求めているのかといった点を明らかにすることで、その地域に合った車の基本的な考え方を作り上げます。
次に、この基本的な考え方に基づき、設計と開発の担当者が具体的な車の設計に取り掛かります。ここでは、車体全体の大きさや形、エンジンや変速機の仕組み、内装の素材や配置などを細かく決めていきます。同時に、その土地の部品製造業者と協力することも重要になります。部品の供給網を現地で整えることで、より効率的な生産体制を築き、地域経済にも貢献することができます。
設計・開発が完了した車は、いよいよ実際の道路での試験走行へと進みます。現地の様々な道路環境で、安全性や性能を徹底的に確かめます。急な坂道や曲がりくねった道、荒れた路面など、想定されるあらゆる状況下で試験を行い、問題点があれば改良を加えていきます。
そして、全ての試験をクリアした車は、各国の法令や規則に適合しているかどうかの最終確認を受けます。基準を満たしていることを証明する書類を作成し、国の機関へ認可申請を行います。認可が下りれば、いよいよその国での販売が可能になります。
このように、海外に置かれた開発の拠点は、その土地の需要を的確に捉え、最適な車を開発するために、なくてはならない役割を果たしているのです。
段階 | 内容 |
---|---|
市場調査 | 現地の道路事情、気候条件、人々の好みなどを調査し、地域に合った車の基本的な考え方を策定 |
設計・開発 | 車体、エンジン、内装など車の詳細設計。現地部品製造業者との連携 |
試験走行 | 現地の様々な道路環境で安全性や性能をテストし、問題点があれば改良 |
認可申請 | 各国の法令・規則への適合確認、書類作成、国の機関へ認可申請 |
地域の特色を反映した車づくり
車は、単なる移動手段ではなく、その土地の文化や暮らしを映す鏡とも言えます。世界各地で車は利用されていますが、求められる姿は様々です。海外の開発拠点では、その地域に根差した車づくりが熱心に行われています。
例えば、色の好みは国によって大きく違います。日本では、落ち着いた色合いの車が好まれる傾向にあります。一方、太陽の光が降り注ぐ明るい地域では、鮮やかな色の車が人気を集めることもあります。また、同じ国の中でも、地域によって好まれる色が異なる場合もあります。開発拠点では、現地の市場調査を綿密に行い、消費者の好みに合った車を提供できるように努めています。
車の中の装飾や座席の布地なども、文化に合わせて工夫されています。細かい模様を施した豪華な装飾が好まれる地域もあれば、シンプルですっきりとした内装が好まれる地域もあります。さらに、宗教上の理由から、動物由来の材料を使えない場合もあります。革の代わりに人工の布地を使うなど、様々な工夫が凝らされています。
快適に運転できることも重要です。道路の舗装状態は地域によって大きく異なります。デコボコ道が多い地域では、悪路走破性の高い車が求められます。また、気温や湿度も重要な要素です。暑い地域では、強力な冷房装置は欠かせません。反対に、寒い地域では、暖房性能の高い車が求められます。このように、現地の気候に合わせて、快適な運転空間を提供できるように設計されています。
このように、細部に至るまで現地の文化や習慣、環境を考慮することで、人々に愛される車を作ることができるのです。そして、地域に寄り添った車づくりは、会社の評判を高めることにも繋がります。
要素 | 地域ごとの違い | 開発拠点の取り組み |
---|---|---|
色 | 日本:落ち着いた色合い、明るい地域:鮮やかな色 | 市場調査に基づいた色の選択 |
内装 | 豪華な装飾、シンプルな内装、宗教上の制約(動物由来素材の不使用) | 文化に合わせた装飾、素材の選択 |
走行性能 | 悪路が多い地域:悪路走破性の高さ | 悪路走破性の高い車の開発 |
快適性 | 暑い地域:強力な冷房装置、寒い地域:高い暖房性能 | 気候に合わせた冷暖房装置の搭載 |
型式認定の重要性
車を海外で売るためには、その国で定められた様々な決まりごとに合致していることを証明する型式認定を受けなければなりません。この型式認定は、販売を許可する上で非常に大切です。型式認定を受けるためには、安全に関する項目や環境への影響など、多岐にわたる厳しい審査を通過する必要があります。審査に合格しなければ、その国で車を売ることができません。
海外に開発の拠点を置いている自動車会社では、現地の決まりごとに精通した専門の担当者が型式認定取得のための業務を行っています。彼らは、車の設計段階から現地の決まりに合っているかを細かく確認し、必要に応じて設計変更などを行います。例えば、ある国では排気ガスに関する規制が厳しい場合、その国の規制に合うように排気ガス浄化装置の性能を高める設計変更を行う必要があるかもしれません。また、ヘッドライトの明るさや方向指示器の色など、細かな部分まで現地の決まりに合わせる必要があります。
型式認定を受けるためには、現地の行政機関との協力も不可欠です。専門の担当者は、行政機関との連絡を密に取り合い、書類作成や試験の手続きなどをスムーズに進めるように努めます。行政機関との良好な関係を築くことで、型式認定取得にかかる時間や手間を減らすことができます。
このように、型式認定を取得することは、海外市場への進出において非常に重要なプロセスです。海外の開発拠点は、現地の決まりに合わせて車を設計・開発するだけでなく、型式認定取得のための業務も担う重要な役割を担っていると言えるでしょう。そして、消費者の安全を守り、環境への負荷を低減するという観点からも、型式認定の重要性はますます高まっていると言えるでしょう。
項目 | 内容 |
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型式認定の重要性 | 海外で車を販売するために必須。安全基準、環境基準など様々な基準への適合を証明するもの。 |
型式認定取得プロセス |
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関係機関 | 現地行政機関 |
海外拠点の役割 | 現地規制に合わせた設計・開発、型式認定取得業務 |