ルーツブロア:車の心臓部

ルーツブロア:車の心臓部

車のことを知りたい

先生、「ルーツブロア」って送風機の一種ですよね?どんな仕組みなんですか?

車の研究家

そうだね。ルーツブロアは、中でふたつの回転体がお互いにくっつかないように回りながら風を送る送風機だよ。それぞれの回転体の形や羽根の数によって種類があるんだ。

車のことを知りたい

回転体がくっつかないように回るのは、何か特別な仕組みがあるんですか?

車の研究家

そう!回転体の軸には「タイミング歯車」という歯車が付いていて、それが回転体の動きを合わせて、くっつかないようにしているんだ。歯車のおかげで、回転体はなめらかに回ることができるんだよ。

ルーツブロアとは。

車の部品である『ルーツ送風機』について説明します。ルーツ送風機とは、中でふたつの回転体がお互いにぶつからないように、同じ速さで回転して風を送る装置です。アメリカのジョーンズさんが考えたものを、1866年にルーツ兄弟が改良しました。回転体の形によって、『サイクロイド型』、『エンベロープ型』、『インボリュート型』の3種類に分けられます。回転体の羽根の数は2枚から4枚のものが使われています。ルーツ送風機は歯車ポンプの仲間ですが、歯車の数が少ないため、回転体の軸の端にタイミング歯車というものを付けて、回転体同士がぶつからず滑らかに回るようにしています。回転体同士の間、そして回転体と周りの囲いの間の隙間が小さいほど、風を送る効率は良くなります。しかし、運転中の熱で膨張したり、タイミング歯車の隙間を考慮して、ぶつからない程度の間隔が設定されています。

ルーツブロアの仕組み

ルーツブロアの仕組み

自動車の心臓部である原動機には、燃料を燃やすためにたくさんの空気が必要です。その空気を送り込む大切な装置が、ルーツブロアです。ルーツブロアは、魔法瓶のような形をした容器の中に、二つの羽根車を備えています。この羽根車の形は少し変わっていて、三つの膨らみを持つクローバーのような形をしています。二つの羽根車は、容器の中で向かい合わせに配置され、互いに噛み合うように回転します。しかし、羽根車同士が実際に接触することはありません。まるで社交ダンスの名手のように、絶妙な間隔を保ちながら滑らかに動きます。

ルーツブロアの吸気口から空気が入ると、二つの羽根車に囲まれた空間に入り込みます。羽根車が回転するにつれて、この空気は羽根車の回転方向に押し出されます。羽根車が回転するごとに、一定量の空気が圧縮されながら排気口へと送られます。この動作は、人が呼吸をするように、吸って、吐いてを繰り返すことで、原動機へ絶え間なく空気を供給しています。ルーツブロアの内部には、歯車などの複雑な機構は存在しません。羽根車の回転のみで空気を送るため、構造が単純で、故障が少ないという利点があります。

ルーツブロアの性能は、羽根車の形や大きさ、回転速度などによって大きく変わります。これらの要素は、原動機の特性に合わせて緻密に計算、設計されています。高度な技術によって作り出されたルーツブロアは、原動機に安定して空気を供給し、自動車がスムーズに、そして力強く走れるように陰で支えているのです。

項目 説明
形状 魔法瓶のような形をした容器の中に、二つの羽根車を備えている
羽根車 三つの膨らみを持つクローバーのような形。羽根車同士は接触しない
動作 羽根車が回転し、吸気口から入った空気を圧縮して排気口へ送る
機構 歯車などの複雑な機構はなく、羽根車の回転のみで空気を送る
利点 構造が単純で、故障が少ない
性能 羽根車の形や大きさ、回転速度によって変わる
役割 原動機に安定して空気を供給

ルーツブロアの種類

ルーツブロアの種類

空気を圧縮して送り出す機械であるルーツブロアには、主に三つの種類があります。それぞれの羽根車の形が異なり、それによって性能や用途が変わってきます。

一つ目は、サイクロイド型です。この型のルーツブロアは、羽根車がサイクロイド曲線という、なめらかな曲線を描いています。サイクロイド曲線は、数学的にも美しい形であるだけでなく、空気を滑らかに送る効果があります。この滑らかな空気の流れにより、運転音が静かになるという利点があります。また、脈動が少ないため、安定した空気を供給することが求められる用途に適しています。例えば、水処理施設でのエアレーションや、食品工場での搬送などに利用されています。

二つ目は、エンベロープ型です。この型は、羽根車の形が封筒に似ていることから、その名前が付けられました。封筒で物を包むように、空気を包み込むように取り込み、効率的に圧縮します。サイクロイド型に比べて、同じ大きさでより多くの空気を送ることができるという特徴があります。そのため、大きな風量が必要な用途、例えば、工場での排気処理や、建物の換気などに用いられています。

三つ目は、インボリュート型です。この型のルーツブロアは、羽根車がインボリュート曲線という、複雑な曲線を描いています。この曲線は、高度な計算に基づいて設計されており、他の二つの型よりも高い圧縮効率を実現しています。高い圧縮効率とは、同じ動力でより高い圧力を生み出すことができるということです。そのため、高圧が必要な用途、例えば、化学プラントでの圧送や、医療機器への空気供給などに利用されています。このように、ルーツブロアは種類によって得意なことが異なり、用途に合わせて最適な型を選ぶことが重要です。

種類 羽根車の形 特徴 用途
サイクロイド型 サイクロイド曲線(なめらか)
  • 運転音が静か
  • 脈動が少ない
  • 水処理施設でのエアレーション
  • 食品工場での搬送
エンベロープ型 封筒型
  • 同じ大きさでより多くの空気を送ることができる
  • 大きな風量が必要な用途
  • 工場での排気処理
  • 建物の換気
インボリュート型 インボリュート曲線(複雑)
  • 高い圧縮効率
  • 高圧が必要な用途
  • 化学プラントでの圧送
  • 医療機器への空気供給

羽根車の数と同期

羽根車の数と同期

空気の力を高めるための装置、ルーツ送風機。その心臓部には、羽根車と呼ばれる部品が欠かせません。羽根車の枚数は、送風機の働きに大きく影響します。一般的には二枚から四枚の羽根車が使われます。羽根車の枚数が少ないと、構造が簡単になり、作るための費用も抑えられます。しかし、少ない枚数では、空気を押し縮める力が弱くなります。逆に、羽根車の枚数が多いと、空気を細かく、力強く押し縮めることができるため、エンジンの力を高める効果があります。ただし、部品点数が多くなるため、複雑な構造となり、製造費用も高くなります。

ルーツ送風機には、二つの羽根車が組み込まれています。この二つの羽根車は、お互いにぶつかることなく、ごくわずかな隙間を保ちながら、同じ速さで回転する必要があります。まるで、二人三脚で歩くように、二つの羽根車の動きをぴったりと合わせることが、ルーツ送風機を安定して動かす鍵となります。この重要な役割を担うのが、同期歯車と呼ばれる、特別な歯車です。同期歯車は、古い時計の歯車のように、精密に組み合わさって回転します。一つの羽根車が回転すると、同期歯車を介してもう一方の羽根車も同じ速さで回転する仕組みになっています。この同期歯車のおかげで、二つの羽根車は常に一定の間隔を保ちながら回転し、ルーツ送風機は安定した性能を発揮できるのです。まるで、指揮者がオーケストラをまとめるように、同期歯車はルーツ送風機の調和を保つ、なくてはならない存在と言えるでしょう。

項目 枚数少ない 枚数多い
構造 簡単 複雑
費用 安い 高い
空気圧縮 弱い 強い
部品 役割
二つの羽根車 わずかな隙間を保ちながら同じ速さで回転し、空気を送る
同期歯車 二つの羽根車の回転速度を同期させる

間隙と効率の関係

間隙と効率の関係

送風機、特に根っこを空気に触れさせる装置の働きは、中の回る羽と周りの囲い、そして羽同士の間のすきまに大きく左右されます。このすきまが小さいほど、空気が漏れることなく、しっかりと圧縮され、送風機の力が強くなります。ちょうど、風船の口をしっかり閉じると空気が漏れないのと同じです。

しかし、このすきまを狭くし過ぎると別の問題が出てきます。羽は回っているうちに熱を持ち、膨らみます。すきまが狭すぎると、膨らんだ羽が周りの囲いや隣の羽にぶつかってしまうかもしれません。また、羽を回すための歯車が少しでもずれても、羽同士がぶつかる危険性があります。

羽がぶつかってしまうと、装置が壊れてしまうばかりか、火事の原因になる可能性もあります。ですから、すきまの大きさを決めるのは大変重要です。羽が熱で膨らむこと、歯車がずれる可能性も考えて、慎重にすきまを設定しなければなりません。

ちょうど、綱渡りのように、効率を上げるためにはすきまを狭くしたい、でも安全のためにはある程度のすきまが必要という、相反する二つの条件のバランスを取らなければなりません。最適なすきまを見つけることで、強い送風力と安全性を両立させることができます。これは、長年の経験と、高度な技術によって初めて可能になる、繊細な技と言えるでしょう。

要素 すきまが狭い場合 すきまが広い場合 最適なすきま
送風力 強い(空気が漏れにくい) 弱い(空気が漏れる) 送風力と安全性のバランス
安全性 低い(羽がぶつかる可能性が高い) 高い(羽がぶつかる可能性が低い) 送風力と安全性のバランス
羽の膨張 問題となる(周りの囲いや隣の羽にぶつかる) 問題となりにくい 膨張を考慮したすきま
歯車のずれ 問題となる(羽同士がぶつかる) 問題となりにくい ずれを考慮したすきま
効率 高い 低い 安全性を確保した上での高い効率

ルーツブロアの改良の歴史

ルーツブロアの改良の歴史

ルーツブロアは、19世紀のアメリカで生まれました。その始まりは、ジョーンズという人が考え出した送風機です。この送風機は、まだルーツブロアと呼ぶには程遠いものでしたが、後のルーツブロアの開発に大きな影響を与えました。時代は進み、1866年、ルーツ兄弟がこの送風機に着目し、改良に乗り出しました。これが、現在私たちが知るルーツブロアの誕生です。

ルーツ兄弟は、送風機の心臓部である羽根車に注目しました。羽根車の形や配置を変えることで、送風効率を大きく高めることができると考えたのです。彼らは幾度となく試行錯誤を繰り返し、ついに最適な羽根車の形と配置を見つけ出しました。さらに、ルーツ兄弟は、羽根車を滑らかに回転させるためのタイミング歯車にも工夫を凝らしました。この歯車のおかげで、2つの羽根車が互いに干渉することなく、スムーズに回転するようになりました。これにより、送風機の騒音や振動が大幅に減少したのです。

ルーツ兄弟の改良によって、送風機の性能は飛躍的に向上しました。それまで、大型で複雑な構造の送風機しか存在しなかった時代に、小型で高性能なルーツブロアは画期的な発明でした。この革新的な技術は、様々な分野で活用されるようになりました。特に、自動車産業への貢献は目覚ましく、エンジンの過給機として広く採用されるようになりました。ルーツブロアの登場は、自動車の性能向上に大きく寄与し、現代の自動車産業の発展を支える礎となったのです。

ルーツブロアは、ルーツ兄弟の功績によって誕生した後も、改良が続けられています。現在では、様々な種類が登場し、用途に合わせて最適なルーツブロアを選ぶことができるようになりました。その歴史は、まさに技術の進歩の歴史と言えるでしょう。これからも、技術者たちのたゆまぬ努力によって、さらに高性能なルーツブロアが開発されていくことでしょう。

開発者 改良点 効果 応用例
ジョーンズ 19世紀 送風機の原型を発明 後のルーツブロアの開発に影響
ルーツ兄弟 1866年 羽根車の形と配置を改良
タイミング歯車を工夫
送風効率向上
騒音・振動減少
自動車のエンジン過給機
現代 様々な種類のルーツブロアが登場 用途に合わせた選択が可能