すぐ歯傘歯車

記事数:(2)

駆動系

差動歯車: 車の動きを支える縁の下の力持ち

車は曲がる時、内側の車輪と外側の車輪では進む距離が違います。内側の車輪は曲がる円の半径が小さいため、短い距離を進みます。反対に外側の車輪は半径が大きいため、長い距離を進まなければなりません。もし左右の車輪が同じ速さで回転するように固定されていたらどうなるでしょうか。 想像してみてください。左右の車輪が同じ速さで回っている状態で無理やりカーブを曲がろうとすると、内側の車輪は進むべき距離よりも多く回転しようとし、外側の車輪は進むべき距離よりも少なく回転しようとするため、どちらかの車輪が地面を滑ってしまうでしょう。あるいは、車体が傾いたり、がたがたと揺れたり、最悪の場合には横転してしまう危険性もあります。 このような問題を解決するのが「差動歯車」です。差動歯車は、左右の車輪に別々の回転速度で力を伝えることができる装置です。 差動歯車は、複数の歯車がかみ合って構成されています。中央にある「かさ歯車」はエンジンの動力を左右に分配する役割を果たします。かさ歯車につながる「遊星歯車」は、左右の車軸につながる「サイドギア」とかみ合っています。 直進している時は、左右の車輪には同じ回転数が伝わり、遊星歯車は自転しません。しかし、車がカーブを曲がり始めると、内側の車輪の回転速度が遅くなります。すると、遊星歯車が自転を始め、外側の車輪に多くの回転数を伝えるようになります。これにより、内側の車輪はゆっくりと回転し、外側の車輪は速く回転することが可能になります。 このように、差動歯車は左右の車輪の回転速度の差を自動的に調整することで、スムーズで安定したコーナリングを実現しています。普段何気なく運転している車にも、このような複雑で精巧な仕組みが備わっていることを考えると、技術の素晴らしさを改めて感じることができます。
駆動系

クルマの駆動を支える歯車:内端円錐

かさ歯車は、円すい形をした歯車であり、回転軸が交わる二軸間で動力を伝えるために使われます。このかさ歯車において、歯のかみ合い具合や強度に大きく関わるのが内端円すいです。 かさ歯車の歯は、円すいの母線に沿って作られています。円すいの母線とは、円すいの頂点と底面の円周上の点を結ぶ直線のことです。そして、基準となるピッチ円すいがあります。ピッチ円すいとは、かみ合う二つの歯車の歯の大きさを決めるための仮想的な円すいです。内端円すいは、この基準ピッチ円すいの母線上で、歯の先端、つまり頂点に最も近い歯の母線に垂直な母線によって作られる円すいです。少し分かりにくいので、別の言い方をすると、歯の先端を通り、基準ピッチ円すいの母線に垂直な線が、内端円すいの母線となります。 この内端円すいの位置は、歯車の設計において非常に重要です。内端円すいの位置が変わると、歯の形や大きさが変わり、その結果、歯の強さやかみ合い精度に影響を与えます。もし内端円すいの位置が適切でないと、歯が欠けたり、かみ合いが悪くなって騒音が発生したり、動力の伝達がうまくいかないといった問題が起こる可能性があります。 適切な内端円すいの設定は、円滑な動力伝達を実現するために欠かせません。かさ歯車は、さまざまな機械で使われていますが、特に自動車の差動装置では重要な役割を担っています。差動装置は、左右の車輪の回転速度を調整する機構で、カーブを曲がるときなどに左右の車輪の回転差を吸収する働きをしています。この差動装置にかさ歯車が組み込まれており、内端円すいを適切に設定することで、スムーズで静かな走行を実現しています。このように、内端円すいは、円すい形の歯車であるかさ歯車の設計において、重要な要素となっています。