エンジン故障

記事数:(7)

エンジン

ねじれ振動:車の隠れた振動

車は、エンジンが生み出した力をタイヤへと伝え、走ります。この力を伝える部品には、回転する棒状のものが多く使われています。これらの回転する棒は、クランクシャフトやプロペラシャフトと呼ばれ、重要な役割を担っています。しかし、ただ回転するだけでなく、実は常に「ねじれ振動」と呼ばれる現象と隣り合わせです。 ねじれ振動とは、棒状のものが、まるで雑巾を絞るように、ねじれる方向に細かく震えることです。この振動は、エンジンが動力を生み出すときや、路面からの衝撃など、様々な要因で発生します。回転する棒は、常に一定の回転速度を保っているわけではなく、エンジンの爆発力や路面の凹凸によって、回転速度がわずかに変化します。この回転速度の変化が、ねじれ振動の主な原因です。 ねじれ振動は、部品の寿命を縮める大きな原因となります。小さな振動であっても、それが何度も繰り返されると、金属疲労を起こし、最悪の場合は部品が折れてしまうこともあります。また、不快な音や振動を発生させる原因にもなります。静かで滑らかな乗り心地を損なうだけでなく、運転者の疲労にも繋がります。 このような問題を防ぐため、自動車メーカーは様々な工夫を凝らしています。例えば、ダンパーと呼ばれる部品を取り付けて振動を吸収したり、部品の形状や材質を工夫して振動しにくくしたりしています。また、コンピューターを使ってエンジンの制御を最適化し、振動の発生を抑える技術も開発されています。これらの技術によって、私たちは快適で安全な運転を楽しむことができるのです。
エンジン

異常燃焼:エンジンの静かな脅威

車は、エンジンの中で燃料と空気を混ぜて燃やし、その力で動いています。この燃焼がうまくいかないと、エンジンの調子が悪くなったり、壊れたりする原因になります。これを異常燃焼といいます。異常燃焼には、大きく分けてノッキングとデトネーションという二つの種類があります。 まず、ノッキングは、点火プラグで火花が散った後、混合気が燃え広がる途中で、一部の混合気が自然に発火してしまう現象です。この自己着火により、燃焼室内の圧力が異常に高まり、金属を叩くような音が発生します。ノッキングが継続すると、ピストンやシリンダーヘッドに損傷を与え、エンジンの寿命を縮める原因となります。 一方、デトネーションは、混合気が爆発的に燃焼する現象です。ノッキングよりも急激な圧力上昇を伴い、大きな衝撃音と振動が発生します。デトネーションは、エンジン部品に深刻なダメージを与え、最悪の場合はエンジンが壊れてしまうこともあります。 これらの異常燃焼は、燃料の質やエンジンの状態、運転方法など様々な要因で発生します。例えば、オクタン価の低い燃料を使用すると、ノッキングが発生しやすくなります。また、エンジンの点火時期が適切でなかったり、冷却水が不足していたりすると、異常燃焼のリスクが高まります。さらに、急加速や高負荷運転といった運転方法も、異常燃焼を招きやすいです。 異常燃焼を防ぐためには、適切なオクタン価の燃料を使用すること、エンジンの定期点検を行うこと、急激な運転を避けることなどが重要です。また、異常燃焼が発生した場合には、早めに修理工場で点検してもらうようにしましょう。日頃からエンジンの状態に気を配り、適切なメンテナンスを行うことで、大きなトラブルを防ぎ、車を長く快適に使うことができます。
エンジン

エンジンオイルとスラッジの関係

車の心臓部であるエンジン。その内部には、時に「スラッジ」と呼ばれる厄介な汚れが付着することがあります。スラッジとは、エンジンオイルの燃えカスや、燃料が燃焼した後に残る炭素などが、高温下で固まったものです。例えるなら、熱いフライパンに油や食べ物がこびり付き、焦げてしまう様子とよく似ています。このスラッジ、一体どのようにして発生するのでしょうか。 エンジンオイルには、エンジン内部の潤滑や冷却、洗浄といった重要な役割があります。しかし、オイル自身も高温にさらされ続けると劣化し、燃えカスが生じます。また、燃料が完全に燃焼しきれなかった場合にも、炭素を含む燃えカスが発生します。これらの燃えカスが、高温のエンジン内部で加熱され続けると、徐々に固まり始めます。そして、まるで鍋底の焦げ付きのように、ピストン、燃焼室、吸排気バルブといったエンジン内部の様々な部品にこびり付いていくのです。 スラッジの蓄積は、エンジンの性能に悪影響を及ぼします。例えば、ピストンにスラッジが付着すると、ピストンの動きが阻害され、エンジンの出力が低下します。また、燃焼室にスラッジが堆積すると、燃料が適切に燃焼しにくくなり、燃費が悪化したり、排気ガスが汚れたりする原因となります。さらに、吸排気バルブにスラッジが付着すると、バルブの開閉がスムーズに行われなくなり、エンジンの不調につながることもあります。 スラッジの発生を防ぐためには、定期的なエンジンオイルの交換が重要です。新しいオイルは洗浄効果が高いため、スラッジの発生を抑制する効果が期待できます。また、高品質なオイルを使用することも、スラッジの発生を軽減する上で有効な手段です。さらに、日頃からエンジンの回転数を上げすぎないように注意するなど、運転方法にも気を配ることで、スラッジの発生を最小限に抑えることができます。スラッジの蓄積は、エンジンの寿命を縮める大きな要因となります。日頃から適切なメンテナンスを心掛け、エンジンの健康状態を保つようにしましょう。
エンジン

クルマの異常燃焼:ノッキングとデトネーション

火花点火機関、つまり、電気の火花を使って燃料に火をつける仕組みの機関で、火花がなくても燃料と空気が混ざったものが自然に燃え始めることを自己着火と言います。ふつう、ガソリンを燃料とする機関では、点火栓と呼ばれる部品から適切な時に火花が飛び、これによって混合気に火がつき、燃焼が始まります。この燃焼は、機械によって精密に制御されています。しかし、自己着火が起こると、この制御された燃焼とは違うタイミングで、思いもよらない燃焼が起きてしまいます。これは、機関の力が落ちたり、部品が壊れたりする原因となるため、あってはならない現象です。では、なぜ自己着火が起こるのでしょうか。いくつかの原因が考えられます。まず、混合気をぎゅっと圧縮すると、温度が上がります。この温度が、燃料が自然に燃え始める温度に達すると、自己着火が起こります。また、機関の部品が高温になっていると、この高温になった部品に触れた混合気が燃え始めることもあります。特に、圧縮比が高い、つまり混合気を強く圧縮する機関や、周りの温度が高い場所で動かしている機関では、自己着火が起こりやすいため、注意が必要です。自己着火の仕組みを理解することは、機関を正常な状態で動かし続け、故障を防ぐためにとても大切です。近年、燃費を良くするために機関の圧縮比を高める傾向があり、自己着火への対策はますます重要になっています。自己着火を防ぐためには、適切な燃料を使う、機関の温度を適切に保つ、点火時期を調整するなど、様々な工夫が凝らされています。
エンジン

バルブスティック:エンジンの静かな脅威

車の心臓部であるエンジンには、空気と燃料を混ぜた混合気を取り込んだり、燃焼後の排気ガスを外に出したりする重要な部品があります。それが「弁」です。この弁は「弁案内」という筒状の部品の中を上下に動くことで、開閉を繰り返しています。しかし、様々な原因でこの弁が弁案内に焼き付いて動かなくなってしまうことがあります。これが「弁固着」と呼ばれる現象です。 弁固着は、まるで家の扉のちょうつがいが錆び付いて開かなくなってしまうようなものです。ちょうつがいが錆びつくと扉の開閉がスムーズにいかなくなるように、弁が固着するとエンジンの動きが鈍くなってしまいます。具体的には、出力が低下したり、燃費が悪化したり、アイドリングが不安定になったりと、様々な不具合が生じます。さらに、酷い場合にはエンジンが全くかからなくなってしまうこともあります。 では、なぜ弁は固着してしまうのでしょうか?主な原因としては、エンジンオイルの劣化や不足、過度の高温、不適切な燃料の使用などが挙げられます。エンジンオイルは弁と弁案内の間の潤滑油としての役割を果たしており、これが劣化したり不足したりすると、摩擦熱が生じて弁が固着しやすくなります。また、エンジンが高温になりすぎると、金属が膨張して弁と弁案内の間の隙間が狭くなり、固着しやすくなります。さらに、適切でない燃料を使うと、燃焼室にスラッジと呼ばれる汚れが付着し、これも弁固着の原因となります。 弁固着はエンジンの深刻な故障につながる可能性があるため、早期発見と適切な対処が必要です。日頃からエンジンの状態に気を配り、少しでも異変を感じたらすぐに整備工場で点検してもらうようにしましょう。定期的なエンジンオイルの交換や適切な燃料の使用も、弁固着を予防するために有効です。
エンジン

クランクシャフトの耐久性:ねじり振動の脅威

車は、エンジンの中で燃料を燃やすことで力を生み出し、その力で動いています。ピストンと呼ばれる部品が燃料の爆発力で上下に動きますが、この上下運動を回転運動に変える重要な部品が、今回紹介する「回転運動の心臓」クランクシャフトです。 クランクシャフトは、複雑な形状をしています。多くの場合、滑らかに湾曲した複数の腕を持つ、少し変わった形をしています。ピストンとクランクシャフトは、コンロッドと呼ばれる棒で繋がっていて、ピストンが上下に動くと、コンロッドを介してクランクシャフトに力が伝わります。この時、クランクシャフトの腕の部分が、シーソーのように上下運動を受け止め、回転運動へと変換するのです。この回転運動こそが、タイヤを回し、車を走らせる力となります。 クランクシャフトは、常に大きな力に耐えながら回転しているため、非常に頑丈に作られています。硬くて丈夫な金属で作られており、その内部構造も、ねじれや曲げに強いように工夫が凝らされています。しかし、そんな丈夫なクランクシャフトにも、目には見えない敵が存在します。それは「振動」です。エンジンが動いている間、常に振動が発生しており、この振動がクランクシャフトに伝わると、金属疲労を起こし、最悪の場合は破損してしまう可能性があります。 クランクシャフトの振動を抑えるために、様々な工夫がされています。例えば、クランクシャフトのバランスを精密に調整することで、振動の発生を抑えたり、ダンパーと呼ばれる部品を使って振動を吸収したりしています。これらの技術により、クランクシャフトは、より長く、安定して動作することが可能になっています。まるで心臓が規則正しく脈打つように、クランクシャフトは回転運動を生み出し続け、車を動かすための大切な役割を担っているのです。
エンジン

バルブサージング:エンジンの隠れた脅威

「弁躍動」と呼ばれる現象は、エンジンの心臓部である弁機構で発生する振動のことです。この振動は、弁を閉じるためのばねの持つ固有の振動数と、エンジンの回転速度に関係する弁の開閉する周期が近いか、一致してしまうことで起こります。 エンジンが速い速度で回転すると、ばねは圧縮された後、解放されます。この時、ばね自身は固有の振動数で揺れ始めます。通常であれば、この揺れはすぐに小さくなります。しかし、エンジンが高回転で回っている状態では、次の圧縮が来る前に揺れが収まらず、揺れが積み重なって大きな振幅の振動に成長してしまうことがあります。これが弁躍動です。まるで、ぶらんこに乗る人がタイミングよく力を加えることで、大きく揺らすことができるのと同じ仕組みです。 この弁躍動は、エンジンの出力を低下させる原因となります。さらに悪い場合には、弁とピストンが衝突してしまい、エンジンが壊れてしまう恐れもあります。 高性能なエンジンでは、この問題を防ぐために、様々な工夫が凝らされています。例えば、複数のばねを組み合わせることで、共振しにくい構造にしたり、ばねの形状を工夫することで、振動を抑え込んだりする方法があります。また、より軽い素材で弁を作ることで、ばねにかかる負担を減らし、振動しにくくすることも有効な手段です。これらの工夫によって、エンジンは高回転域でも安定して動作し、高い性能を発揮することができるのです。 弁躍動は、高回転型のエンジン設計において避けて通れない課題の一つです。技術者たちは、様々な対策を講じることで、この問題を克服し、より高性能で信頼性の高いエンジンを開発し続けています。