バイアスタイヤ

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駆動系

タイヤの動的負荷半径:知られざる性能への影響

車は、路面と接するタイヤによって支えられ、その回転によって前に進みます。このタイヤの働きを理解する上で、「動的負荷半径」という考え方が重要になります。タイヤは、ただ丸いゴムの塊ではなく、路面からの力を受け、変形しながら回転しています。そのため、実際のタイヤの振る舞いは、単純な円の回転とは異なります。動的負荷半径とは、タイヤが実際にどれだけ回転し、どれだけ進んだかという、実際の移動量から計算されるタイヤの有効半径のことです。平たく言えば、タイヤを一回転させた時に車がどれだけ進むかを計測し、その値を円周率の二倍で割ることで求められます。例えば、タイヤを一回転させたら車が2メートル進んだとします。この時、円周率の二倍は約6.28なので、2メートルを6.28で割ると、動的負荷半径は約0.32メートルとなります。この動的負荷半径は、タイヤの空気圧や車の重さ、路面の状態など、様々な要因によって変化します。例えば、空気圧が低いとタイヤはより潰れた状態になり、動的負荷半径は小さくなります。逆に、空気圧が高いとタイヤはより膨らんだ状態になり、動的負荷半径は大きくなります。また、重い荷物を積むとタイヤは路面に押し付けられて変形し、動的負荷半径は小さくなります。動的負荷半径を理解することは、車の速度計や走行距離計の精度を保つ上で重要です。これらの計器は、タイヤの回転数に基づいて速度や距離を計算しています。もし、動的負荷半径が想定と異なると、実際の速度や距離と計器の表示値にずれが生じてしまいます。例えば、タイヤの空気圧が低い状態で走行すると、動的負荷半径が小さくなり、実際の速度よりも計器の表示値が速くなってしまいます。このように、動的負荷半径はタイヤの性能を評価する上で非常に重要な指標となります。タイヤを選ぶ際や、車の整備を行う際には、動的負荷半径について理解しておくことが大切です。
機能

車の安定性に寄与するキャンバースラスト

車が走るとき、タイヤは地面と接しています。この接し方に工夫を凝らすことで、車の動きを良くすることができます。その工夫の一つが、タイヤを傾けることです。これを「キャンバー」と言います。タイヤを傾けることで生まれるのが、キャンバースラストという横向きの力です。タイヤが地面に対して垂直ではなく、傾いていると、その傾いた方向に力を生み出します。これがキャンバースラストです。タイヤが地面を押す力は、ただ真下に向かっているだけではありません。タイヤを傾けると、この力が斜めになり、地面を横向きにも押す力が生まれます。これがキャンバースラストです。この力は、カーブを曲がるときに発生する横向きの力と比べると小さいですが、車の安定した走りには大切な役割を果たします。例えば、急なカーブを曲がるとき、キャンバースラストは車の傾きを抑え、安定して曲がるのを助けます。まっすぐな道を走る時でも、キャンバースラストは車のふらつきを抑え、安定した走行を助けます。道のわだちで車がふらつくのを抑えるのも、このキャンバースラストの働きです。タイヤの傾き具合、つまりキャンバー角が大きいほど、キャンバースラストは大きくなります。しかし、キャンバー角を大きくしすぎると、タイヤの一部だけが地面に強く接することになり、タイヤの寿命が短くなることもあります。ですから、車の設計者は、車の性能とタイヤの寿命のバランスを考えて、最適なキャンバー角を決めるのです。これは、車の種類や走る道によって変わってきます。例えば、レースカーは大きなキャンバー角をつけて、カーブでの踏ん張りを強くしますが、普通の乗用車は、タイヤの寿命も考えて、小さなキャンバー角で設計されています。
消耗品

クロスプライタイヤ:往年の名タイヤ

交差重ね合わせ構造を採用したクロスプライタイヤ、別名バイアスタイヤは、かつて主流だったゴム引きクロスに比べ、格段に優れた耐久性と快適な乗り心地を実現しています。タイヤの骨格であるカーカスは、何層にも重ねられたプライコードで構成されています。このプライコードは、タイヤの回転方向に対して斜めに交差するように配置されています。ゴム引きクロスは、布をゴムで覆っただけの単純な構造でした。しかし、クロスプライタイヤは進化した構造です。細い横糸で繋ぎ合わせたコードを、簾のように並べたプライを何枚も重ね合わせることで、強固さとしなやかさを両立したのです。この高度な技術は、タイヤの強度と柔軟性を高め、より薄い偏平タイヤの開発へと繋がる重要な一歩となりました。タイヤを輪切りにした断面を見ると、プライコードが互いに交差している様子がはっきりと確認できます。この交差構造こそが、クロスプライタイヤの強度と柔軟性の秘密です。互いに支え合うことで、路面からの衝撃を効果的に吸収し、安定した走行を可能にします。また、タイヤの変形を抑制することで、耐久性も向上させています。クロスプライタイヤは、製造が比較的容易で、価格も抑えられています。そのため、現在でも一部の車種や用途で使用されています。例えば、建設機械や農業機械など、悪路を走行する車両には、その耐久性が評価されています。また、クラシックカーの愛好家からも、その独特の乗り心地が好まれています。しかし、高速走行時の安定性や燃費性能では、ラジアルタイヤに劣る面もあります。そのため、乗用車では、徐々にラジアルタイヤへと置き換わっていきました。それでも、特定の用途においては、クロスプライタイヤの優れた特性が活かされています。
消耗品

乗り心地と耐久性の融合:ハーフラジアルタイヤ

車の発達と共に、タイヤの構造も大きく変わってきました。 最初期のタイヤは、自転車と同じように空気を入れるだけの単純なものでした。路面からの衝撃を吸収する能力は低く、乗り心地は快適とは言えませんでした。その後、内部に布を何層にも重ねたバイアス構造のタイヤが登場しました。これは、カーカスと呼ばれる繊維の層を斜めに交差させて重ねる構造で、タイヤの強度と耐久性を高める上で大きな役割を果たしました。特に、未舗装道路が多かった時代には、バイアスタイヤの頑丈さは大変重宝されました。しかし、カーカスが斜めに配置されていることで、タイヤが変形しやすく、乗り心地や操縦性に課題がありました。その後、カーカスをタイヤの回転方向にほぼ垂直に配置したラジアルタイヤが登場しました。この構造により、路面からの衝撃を効率的に吸収できるようになり、乗り心地と操縦性が飛躍的に向上しました。また、接地面積が増えることで、グリップ性能も向上し、より安全な走行が可能となりました。しかし、初期のラジアルタイヤは、バイアスタイヤに比べて側面の強度が弱く、耐久性が低いという側面もありました。そのため、バイアスタイヤとラジアルタイヤ両方の利点を組み合わせた、ハーフラジアルタイヤも開発されました。これは、トレッド面はラジアル構造、サイドウォールはバイアス構造としたタイヤで、乗り心地と耐久性を両立させることを目指しました。現在では、材料技術や製造技術の進歩により、ラジアルタイヤの耐久性も大幅に向上し、ほとんどの車にラジアルタイヤが装着されています。タイヤの進化は、車の性能向上に大きく貢献してきただけでなく、安全性や快適性も大きく向上させてきました。今後も、更なる技術革新によって、より高性能で環境にも優しいタイヤが登場することが期待されています。