
車内で聞こえる「うなり音」の正体
音は、空気の振動が波のように広がることで私たちの耳に届きます。この音の波は、水面に広がる波紋のように、山と谷を繰り返しながら進んでいきます。異なる二つの音が同時に鳴ると、それぞれの音の波がお互いに影響し合い、重なり合う場所では、まるで波紋がぶつかり合うように干渉が起こります。これが「音の干渉」です。
干渉には、二つの種類があります。二つの音の波の山と山、谷と谷が重なった場合、波はより大きな山と谷を作り、音は強くなります。これが「強め合う干渉」です。反対に、山の部分と谷の部分が重なると、お互いを打ち消し合い、音は弱くなります。これが「弱め合う干渉」です。
二つの音の周波数(音の高低を表す尺度)が近い場合、この強め合う干渉と弱め合う干渉が周期的に繰り返されます。そのため、音の大きさが周期的に変化し、まるで音が揺れているように聞こえます。これが「うなり音」です。うなり音の速さは、二つの音の周波数の差で決まります。周波数の差が小さいほど、うなりはゆっくりと聞こえ、差が大きいほど、速く聞こえます。
静かな部屋では、周囲の音に邪魔されずにうなり音をはっきりと聞き取ることができます。楽器の調律では、このうなり音を利用します。二つの音のうなりが聞こえなくなれば、二つの楽器が同じ周波数で鳴っていることが確認できるからです。しかし、うなり音は、常に心地良いとは限りません。例えば、機械の動作音など、複数の音が混ざり合って発生するうなり音は、騒音として感じられ、不快感を与えることもあります。このように音の干渉は、私たちの生活の中で様々な形で影響を与えています。