旧式技術

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エンジン

姿を消した縁の下の力持ち:スロットルオープナー

車を滑らかに走らせるための様々な工夫は、乗り心地を大きく左右する要素です。かつては「吸気量調整装置」と呼ばれる部品が、縁の下の力持ちとして活躍していました。この装置は、エンジンの空気を取り込む量を調整する弁が完全に閉じないように、あるいは少し開いた状態を保つ働きをしていました。運転者がアクセルの踏み込み具合を調整する板から足を離すと、エンジンの回転数が下がり始めます。この時、空気を取り込む弁が急に閉じると、強いブレーキがかかったような状態になり、車ががくがくすることがあります。吸気量調整装置は、このような急な変化を和らげ、滑らかに速度を落とすために重要な役割を果たしていました。特に、トルクコンバーター式自動変速機を搭載した車では、この装置の存在は欠かせませんでした。トルクコンバーターは、エンジンの回転力を滑らかにタイヤに伝えるための装置ですが、速度を落とす際に変速がスムーズに行われるように、吸気量調整装置が補助的な役割を担っていたのです。近年は、電子制御技術の進歩により、吸気量調整装置の役割は電子制御の弁に取って代わられました。コンピューターが様々な状況に合わせて空気の取り込み量を細かく調整することで、以前より更に滑らかで効率の良い運転が可能になったのです。そのため、吸気量調整装置は、表舞台から姿を消しました。しかし、かつて多くの車に搭載され、快適な運転を支えていたことを忘れてはなりません。まるで職人が長年培ってきた技術のように、機械式の装置が持つ奥深さを感じさせる存在でした。