輸出仕様

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車の開発

中近東の車:砂漠を走るための工夫

中近東地域では、灼熱の太陽が照りつける砂漠地帯という、車が走行するには非常に過酷な環境が広がっています。そこで、この地域で走る車は、特別な工夫が凝らされています。高温対策としては、冷却装置を強化することで、エンジンが熱くなりすぎるのを防いでいます。具体的には、ラジエーターを大型化したり、冷却ファンを強力なものにしたりといった工夫がされています。また、吸気口の位置を高くすることで、砂埃を吸い込みにくくする設計もされています。砂漠地帯では、大量の砂塵が舞い上がり、これが車の故障原因となることが多いためです。細かい砂は、エンジン内部の精密な部品に傷をつけ、正常な動作を妨げます。そのため、空気の取り込み口にはフィルターを設け、砂塵の侵入を防いでいます。さらに、車体の下回りも砂漠の過酷な環境に耐えられるように設計されています。砂塵や飛び石から保護するため、耐久性の高い部品を使用しています。また、塗装にも工夫が凝らされており、強い日差しによる劣化を防いでいます。車内にも、中近東の厳しい環境に合わせた工夫が見られます。強力なエアコンは、乗員を暑さから守るために不可欠です。また、窓ガラスには、太陽光を遮断する特別な素材を使用することで、車内温度の上昇を抑え、快適な空間を保ちます。これらの工夫は、過酷な環境下でも車が正常に機能し続けるために、そして乗員の安全と快適性を確保するために欠かせないものです。中近東地域の車は、まさに過酷な環境を克服するための技術の結晶と言えるでしょう。
機能

隠れた名品:フロートマウントワイパー

ワイパー。雨の日の視界を守る、なくてはならない装置です。その進化は、安全運転の向上に直結する重要な要素と言えるでしょう。今回ご紹介する「浮き置き式ワイパー」も、そうした進化の過程で生まれた、隠れた名品です。聞き慣れない名前かもしれませんが、実は1984年、いすゞ自動車が発売したピアッツァターボという車に初めて搭載されました。主にアメリカ向けに輸出されたこの車種が採用したことで、この技術は世に知られることとなりました。当時の自動車業界は、静かな車内空間の実現に向けてしのぎを削っていました。様々な部品が見直され、騒音低減の工夫が凝らされていました。ワイパーも例外ではなく、作動時の騒音は大きな課題でした。そこで開発されたのが、この画期的な浮き置き式ワイパーです。従来のワイパーは、ワイパーアームの支点を車体に固定していました。そのため、ワイパーの動きに合わせてアーム全体が振動し、それが騒音の原因となっていました。浮き置き式ワイパーは、この支点構造を大きく変えました。アームの支点を、バネ仕掛けの浮き構造に変更したのです。これにより、ワイパーアームは車体からわずかに浮いた状態になり、ワイパーの動きによる振動を吸収するようになりました。まるで水面に浮かぶ木の葉のように、ワイパーアームは滑らかに動き、騒音を抑えることに成功したのです。この技術は、単に騒音を低減するだけではありませんでした。ワイパーゴムと窓ガラスの密着性を高める効果もあり、拭き取り性能の向上にも貢献しました。静粛性と拭き取り性能、相反する二つの性能を両立させた浮き置き式ワイパーは、まさに技術革新の象徴と言えるでしょう。現在では多くの車種で採用されるようになり、雨の日の運転をより快適で安全なものにしてくれています。