
連桿比:エンジンの隠れた性能向上要因
車は、運動を回転に変換する心臓部となる原動機を持っています。その原動機の中で、上下運動をする部品と回転運動をする部品をつなぐ重要な役割を果たすのが連桿です。この連桿の寸法比率を表すのが連桿比です。連桿比は、連桿の長さをクランクの回転半径、つまり行程の半分で割って求められます。 例えば、連桿の長さが150mm、行程が80mmの原動機の場合、連桿比は150 ÷ (80 ÷ 2) = 3.75となります。この連桿比は、原動機の様々な特性に影響を及ぼします。まず、連桿比が大きい、つまり連桿が長い場合は、ピストンの上下運動がより滑らかになり、横方向への力が小さくなります。これにより、原動機の振動や騒音が減少するだけでなく、部品の摩耗も軽減され、耐久性が向上します。また、燃焼室の形状を最適化しやすく、燃焼効率の向上にも貢献します。高性能車や長持ちさせたい車には、この長い連桿が好まれます。一方、連桿比が小さい、つまり連桿が短い場合は、原動機の高回転化が容易になります。短い連桿は、ピストンの上下運動速度を速める効果があり、高回転域での出力向上に繋がります。しかし、ピストンへの横方向の力が大きくなるため、振動や騒音が増加し、部品の摩耗も早まります。また、燃焼室の形状が制限されるため、燃焼効率の面では不利になる場合もあります。一般的に、スポーツタイプの車など、高い出力を求める車に向いています。このように、連桿比は原動機の性能、寿命、乗り心地といった様々な要素に影響を与える重要な設計要素です。 車の種類や用途に合わせて最適な連桿比が選択されます。高い出力と静粛性、耐久性のバランスをどのように取るかは、まさに設計者の腕の見せ所と言えるでしょう。