
空の道、静止通信衛星
空を見上げると、星々が東から西へとゆっくりと移動していく中で、いつも同じ位置に留まっているかのように見える星があります。これが静止衛星です。まるで空に釘付けされたかのように、地上から見ると動きません。
この不思議な現象は、地球の自転と衛星の動きが深く関係しています。地球は24時間で一回転しますが、静止衛星も地球の自転と同じ周期、つまり24時間で地球を一周しているのです。この見事な一致のおかげで、地上にいる私たちには静止衛星が空の一点に止まっているように見えるのです。まるで、糸で吊るされた提灯のように、常に同じ場所を照らしているかのようです。
静止衛星が配置されているのは、赤道上空約3万6千キロメートルという、とてつもなく高い場所です。この高度は、地球の重力と衛星の速度のバランスが絶妙に保たれる特別な位置で、地球の自転と同期するために必要不可欠です。もしこの高度からずれてしまうと、衛星は地上から見て移動してしまい、静止衛星ではなくなってしまいます。まるで、糸の長さが変わると提灯の位置も変わってしまうように、高度は静止衛星にとって非常に重要な要素です。
この常に同じ位置に見えるという特性は、様々な分野で大変役立っています。例えば、テレビ放送や気象観測、通信など、私たちの生活に欠かせない情報を送受信するために利用されています。もし静止衛星がなければ、安定した通信や放送は難しく、天気予報も正確ではなくなってしまうでしょう。まさに、静止衛星は現代社会を支える、空に浮かぶ縁の下の力持ちと言えるでしょう。