2本リングピストンの秘密
二本輪環活塞とは、読んで字の如く、活塞に二本の輪環溝が設けられた活塞のことです。輪環とは、活塞に取り付けられた金属製の輪のことで、シリンダーと活塞の間の隙間を塞ぎ、気密性を保つ重要な部品です。従来の活塞には、主に三本の輪環が用いられていました。燃焼室からのガス漏れを防ぐ最上輪環、潤滑油の消費を抑える油輪環、そして油輪環の補助をする第二輪環の三本です。二本輪環活塞は、この第二輪環をなくし、最上輪環と油輪環の二本で構成されています。
三本輪環活塞の場合、第二輪環は油輪環の補助として、過剰な潤滑油を掻き落とす役割を担っていました。しかし、二本輪環活塞ではこの第二輪環がないため、油輪環には潤滑油を筒の内壁に適量供給する機能と、過剰な潤滑油を掻き落とす機能の両方が求められます。そのため、二本輪環活塞では、この油輪環に求められる性能、すなわち潤滑油の制御性能がより高くなります。油輪環の形状や材質も、より高度なものが求められます。
一方、最上輪環は、燃焼ガスがクランク室に吹き抜けるのを防ぐ、いわば防波堤の役割を担っています。燃焼室で発生した高い圧力に耐えうる強度が求められます。二本輪環活塞では、最上輪環にもより高い強度と耐久性が求められます。このように、二本輪環活塞は、三本輪環活塞に比べて輪環の数が少ない分、それぞれの輪環に求められる性能が高くなっていると言えるでしょう。二本輪環にすることで、摩擦抵抗を減らし、燃費向上に繋がるなどの利点があります。しかし、それぞれの輪環にかかる負担は増えるため、耐久性や潤滑油の管理といった課題も存在します。