革新的な無段変速機:バリオマチック

革新的な無段変速機:バリオマチック

車のことを知りたい

先生、「バリオマチック」ってどういう仕組みなんですか?ゴムベルトを使うって変わった変速機ですよね?

車の研究家

そうだね。バリオマチックはゴムベルトを使った無段変速機なんだ。エンジンの回転数やアクセルの踏み込み具合に応じて、ベルトがかかるプーリー(滑車)の直径を変化させることで、滑らかに変速するんだよ。

車のことを知りたい

プーリーの直径を変える?どうやって変えるんですか?

車の研究家

ドライブ側のプーリーは、エンジンの回転で生まれる遠心力と、エンジンの吸気圧力(負圧)で制御されるんだ。回転数が上がるとプーリーは小さくなり、アクセルを踏み込むと吸気圧力が下がることで、これもプーリーを小さくする方向に働く。ドリブン側のプーリーはバネでドライブ側に追従する仕組みだよ。

バリオマチックとは。

1960年代にオランダの小さな乗用車ダッフォモビル(通称ダフ)で初めて使われた「バリオマチック」という車の部品について説明します。これは、ゴム製のベルトを使って、変速を滑らかに変化させる装置(無段変速機、CVT)です。エンジンの回転を伝えるプーリー(滑車)の大きさを変えることで、変速を行います。エンジンの回転が速くなると、遠心力とエンジンの吸い込む力によって、動力を伝える側のプーリーは小さくなります。アクセルを踏み込んでエンジンの吸い込む力が強くなると、同じく動力を伝える側のプーリーが小さくなり、一番低いギアと同じ状態になります。しかし、ゴムベルトは伝える力の大きさに限界があり、耐久性も十分ではありませんでした。そのため、後に関連会社のオランダのファンドルネ社が金属製のベルトを開発しました。

無段変速機の登場

無段変速機の登場

かつて、自動車の変速装置といえば、段階的に歯車を切り替える仕組みが一般的でした。手動で操作する手動変速装置や、自動で切り替わる自動変速装置など、いずれも歯車を用いたものでした。しかし、1960年代、オランダのダッフォモビル社が画期的な変速装置を生み出しました。それが、ゴム製のベルトを使った無段変速装置「バリオマチック」です。

このバリオマチックは、従来の歯車式とは全く異なる仕組みを採用していました。ゴムベルトと、直径を変えることができる滑車を用いることで、滑らかに変速比を調整することを可能にしたのです。歯車を切り替える必要がないため、変速時のショックがなく、非常に滑らかな加速を実現しました。まるで水の流れのように、速度が変化していく感覚です。また、エンジンの回転数を常に最適な状態に保つことができるため、燃費の向上にも大きく貢献しました。

バリオマチックの登場は、自動車の変速装置技術における大きな進歩となりました。滑らかで心地よい運転体験を提供するだけでなく、燃費効率を高めることで経済性にも優れていました。この革新的な技術は、その後の自動車開発に大きな影響を与え、様々な自動車メーカーが無段変速装置の開発に取り組むきっかけとなりました。現在も、改良を重ねながら様々な車種に搭載され、快適な運転を支えています。まさに、自動車の歴史に新たな時代を切り開いた技術と言えるでしょう。

時代 変速装置の種類 特徴 メリット 影響
1960年代以前 手動変速装置、自動変速装置(歯車式) 段階的に歯車を切り替える
1960年代 無段変速装置「バリオマチック」(ゴムベルト式) ゴムベルトと直径可変滑車による滑らかな変速比調整 変速ショックなし、滑らかな加速、燃費向上 自動車変速装置技術の進歩、他メーカーの無段変速装置開発促進、現代の自動車にも搭載

バリオマチックの仕組み

バリオマチックの仕組み

無段変速機、バリオマチックの心臓部は、ゴム製の帯と二つの滑車にあります。この二つの滑車は、動力を伝える側と伝えられる側で役割が異なり、その大きさの変化によって変速比を調整しています。

動力を伝える側の滑車は、原動機の回転数と吸気圧によってその大きさが制御されます。原動機の回転数が上がると、回転による遠心力で錘がおもりのように外側に移動します。錘が外側に移動することで、滑車の溝が狭まり、まるで滑車が小さくなったように、ゴム製の帯が滑車の上の高い位置で動くようになります。同時に、アクセルを踏むと原動機の吸気圧が高まり、この圧力も滑車を小さくするように働きます。これにより、高速回転時には変速比が高くなり、力強い加速を生み出します。

一方、動力を伝えられる側の滑車は、渦巻き状のバネの力で、動力を伝える側の滑車の大きさに合わせて変化します。動力を伝える側の滑車が小さくなると、ゴム製の帯が押し出されて、伝えられる側の滑車では低い位置に移動します。すると、伝えられる側の滑車はあたかも大きくなったように、ゴム製の帯は滑車の下の低い位置で動くようになります。

このように、原動機の回転数やアクセルの踏み込み具合によって、ゴム製の帯が滑車の上を動く位置が変わり、滑車の有効径が変化することで、連続的に変速比を調整することが可能になります。まるで複雑な歯車機構を用いることなく、滑らかな変速を実現できる点が、バリオマチックの画期的な点です。この巧妙な仕組みは、当時の技術の高さを示すものであり、後の無段変速機の開発に大きな影響を与えました。

ゴム製の帯と二つの滑車、そして錘とバネという単純な部品で構成されたバリオマチックは、そのシンプルな構造の中に、高度な技術と思考が凝縮されています。滑らかな加速と効率的な動力伝達を実現するこの革新的な機構は、今もなお、多くの乗り物で活躍しています。

ゴムベルトの課題

ゴムベルトの課題

画期的な無段変速機として登場したバリオマチックですが、その機構の中核を担うゴムベルトには、いくつかの乗り越えるべき難題がありました。大きな力を伝えることが難しいという点が、まず大きな課題として立ちはだかりました。金属製の歯車と比べて、ゴムベルトは伝えられる力の大きさに限界がありました。小さな車であれば、それほど大きな力を伝える必要がないため、ゴムベルトでも十分に機能しました。しかし、車体が大きく、より強い力が必要な車になると、ゴムベルトの力不足は深刻な問題となりました。必要な力を十分に伝えられないため、車の性能を十分に発揮させることができませんでした。

耐久性の不足も、ゴムベルトの大きな弱点でした。ゴムという素材の特性上、使っているうちにすり減ったり、劣化したりする速度が速く、金属製の歯車に比べて寿命が短いという欠点がありました。そのため、長く安定した性能を保つことが難しく、交換の手間が頻繁に発生するという問題を抱えていました。さらに、ゴムは熱や薬品に弱いという性質も持ち合わせています。エンジンの熱や、様々な液体による影響を受けやすく、思わぬ劣化を引き起こす可能性がありました。これらの問題は、バリオマチックの普及を妨げる大きな要因となりました。より広く使われるためには、ゴムベルトの強度と耐久性を向上させる必要があり、技術者たちは更なる改良に挑むことになりました。改良を重ね、より丈夫で長持ちする素材の開発や、ベルトの構造を工夫することで、これらの課題を解決しようと試みました。革新的な技術ではありましたが、実用化に向けては、材料技術の進歩が不可欠だったと言えるでしょう。

課題 詳細 影響 対策
力の伝達 ゴムベルトは金属製歯車より伝達力に限界があり、大型車では力不足に。 車の性能を十分に発揮できない。 より丈夫で長持ちする素材の開発や、ベルトの構造を工夫。
耐久性 ゴムベルトは摩耗・劣化しやすく、熱や薬品にも弱い。 寿命が短く、交換の手間が頻繁。安定した性能維持が困難。

金属ベルトの開発

金属ベルトの開発

動力伝達に用いる帯状の部品は、以前はゴムで作られていました。しかし、ゴム製の帯にはいくつかの問題点がありました。強度が不足しているため、大きな力を伝えることが難しく、エンジンの高出力化に対応できないという点が大きな課題でした。加えて、ゴムは摩擦や熱に弱いため、耐久性が低く、頻繁に交換が必要でした。交換作業は手間がかかるだけでなく、費用もかさむため、所有者にとって負担となっていました。

これらの課題を解決するために、ダッフォモビルの関連会社であるオランダのファンドルネ社は、金属製の帯の開発に取り組み始めました。金属はゴムよりもはるかに強度が高いため、より大きな力を伝達することが可能です。これにより、高出力のエンジンにも対応できるようになりました。さらに、金属は耐久性にも優れているため、ゴム製の帯のように頻繁に交換する必要がなくなり、所有者の負担軽減にも繋がりました。

ファンドルネ社が開発した金属製の帯は、薄い金属板を多数つなぎ合わせて作られています。この構造により、柔軟性を保ちながら高い強度を実現しています。この革新的な技術により、従来のゴム製の帯では不可能だった高出力エンジンの動力伝達が可能となり、無段変速機の性能向上に大きく貢献しました。金属製の帯の開発は、無段変速機の進化における重要な転換点となり、自動車業界に大きな影響を与えました。この技術は、燃費向上や乗り心地の向上にも繋がり、将来の自動車開発に大きく貢献していくものと期待されています。

項目 ゴム製の帯 金属製の帯
強度 不足、高出力に対応できない 高い、高出力に対応できる
耐久性 低い、摩擦や熱に弱い、頻繁な交換が必要 高い、交換頻度が少ない
柔軟性 高い 高い
その他 交換の手間と費用がかかる 無段変速機の性能向上、燃費向上、乗り心地向上

現代の無段変速機への影響

現代の無段変速機への影響

旧オランダの自動車会社である、バン・ドールネが開発した無段変速機「バリオマチック」は、その後の無段変速機の開発に大きな影響を与えました。滑らかな変速と燃費の良さが注目され、多くの技術者に刺激を与えたのです。バリオマチックは、二つのプーリー(滑車)と金属ベルトを用いて変速比を連続的に変化させる機構を備えていました。この機構は画期的で、従来の歯車式自動変速機とは一線を画すものでした。

現代の多くの無段変速機は、このバリオマチックの基本的な原理を受け継ぎ、さらに進化を遂げています。金属ベルト式に加え、チェーン式やトロイダル式など、様々な方式の無段変速機が登場しました。これらの無段変速機は、それぞれに利点があり、車種や用途に合わせて使い分けられています。例えば、チェーン式は小型軽量で、比較的小さな排気量の車に適しています。一方、トロイダル式は大きな力を伝えることができ、大型車やスポーツカーにも搭載可能です。

バリオマチックは、無段変速機の草分け的存在として、その後の技術発展の土台を築いたと言えるでしょう。現代社会においては、環境保護の観点から燃費の良い車が求められています。また、運転時の快適さも重要な要素となっています。これらの要求に応える上で、無段変速機の役割はますます重要になっています。滑らかな変速によって、燃費の向上と快適な運転体験を両立できるからです。アクセルペダルを踏む力加減だけで、速度を自在に調節できるため、運転時のストレスも軽減されます。

バリオマチックが切り開いた無段変速機の技術は、今もなお進化を続けています。より小型軽量化、高効率化、耐久性の向上など、様々な改良が加えられ、幅広い車種に搭載されています。バリオマチックの革新的な精神は、現代の自動車技術にも確かに受け継がれているのです。

項目 説明
バリオマチックの開発会社 旧オランダの自動車会社である、バン・ドールネ
バリオマチックの特徴 二つのプーリー(滑車)と金属ベルトを用いて変速比を連続的に変化させる機構。滑らかな変速と燃費の良さ。
バリオマチックの影響 その後の無段変速機(CVT)開発に大きな影響を与え、現代のCVTの基本原理となっている。
現代のCVTの種類 金属ベルト式、チェーン式、トロイダル式など
チェーン式CVTの特徴 小型軽量で、比較的小さな排気量の車に適している。
トロイダル式CVTの特徴 大きな力を伝えることができ、大型車やスポーツカーにも搭載可能。
CVTの利点 滑らかな変速による燃費の向上と快適な運転体験。アクセル操作の簡素化による運転ストレスの軽減。
CVTの今後の展望 小型軽量化、高効率化、耐久性の向上など、進化と改良が続けられている。