電子制御変速:快適と効率の両立

電子制御変速:快適と効率の両立

車のことを知りたい

先生、エレクトロニックパワーシフトって、普通のオートマとは違うんですか?

車の研究家

そうだね、普通のオートマとは違うよ。エレクトロニックパワーシフト(EPS)は、手動変速機をベースに、コンピューターでクラッチ操作と変速タイミングをアシストしてくれるシステムなんだ。だから、半自動変速機とも呼ばれるんだよ。

車のことを知りたい

へえ、じゃあ、マニュアル車みたいにギアチェンジするんですか?クラッチペダルもあるんですよね?

車の研究家

うん。発進や後退の時だけはクラッチペダルを使う必要があるけど、それ以外のギアチェンジはクラッチペダルを踏まずに、レバー操作だけでできるんだ。 コンピューターが自動でクラッチを切って繋いでくれるからね。だから、マニュアル車より楽に運転できるんだよ。

エレクトロニックパワーシフトとは。

ダイムラー・ベンツ社が1980年代後半に開発した大型トラックやバス用の、一部が自動化された変速機である『エレクトロニックパワーシフト』(略してEPS)について説明します。この変速機は、動き出しやバックするときなど、繊細な操作が必要な場合はクラッチペダルを使いますが、通常の変速操作では、機械が自動的にクラッチをつないだり切ったりします。変速のタイミングは運転席の計器盤に表示され、速度が上がって一段上のギアに変えるべきタイミングになると、運転手がレバーを前に押すことで自動的にギアが変わります。ギアを一段下げる場合は、レバーを後ろに引きます。変速機の本体自体は従来のものと同じなので、変更を加えることで、手動で操作するタイプの変速機に戻すことも可能です。いすゞ自動車が開発した完全自動変速機『NAVI』とは異なり、EPSは手動と自動の中間的な変速機と言えるでしょう。

変速機の進化

変速機の進化

車の動きを操る変速機は、時代の流れと共に大きく変わってきました。初期の車は、全て手動でギアを変える必要がありました。これは、運転する人に熟練した技術を求め、運転の負担も大きなものでした。クラッチペダルを踏み込み、ギアを適切な位置に動かすという一連の動作は、特に渋滞時などでは大変な労力を要しました。

しかし、技術の進歩と共に、より楽に、そして効率的に車を走らせるための変速機が開発されてきました。画期的な技術革新として登場したのが、自動変速機です。自動変速機は、複雑なギアチェンジを自動で行ってくれるため、運転操作を簡単にして、多くの運転者にとって運転の負担を大きく減らしました。アクセルペダルとブレーキペダルを操作するだけで、スムーズに加速や減速ができるようになったのです。これは、特に街中での運転や長距離運転において、大きな快適性をもたらしました。

その後、自動変速機の快適さと手動変速機の燃費の良さを組み合わせた、半自動変速機が登場しました。半自動変速機は、コンピューター制御によってギアチェンジを自動的に行うと同時に、運転者が手動でギアを変えることも可能です。これにより、運転の快適さと燃費効率の両立を目指した、新しい変速機の仕組みが生まれました。

近年の技術革新は、無段変速機(CVT)にも及んでいます。CVTは、歯車を使わずにベルトとプーリーの組み合わせで変速比を連続的に変化させることで、より滑らかな加速と優れた燃費性能を実現しています。このように、変速機の進化は、車の運転をより快適で、より効率的なものへと変え続けているのです。

変速機の種類 特徴 メリット デメリット
手動変速機(MT) 運転者が手動でギアを変える 燃費が良い、運転の楽しさ 運転操作が複雑、渋滞時などは負担が大きい
自動変速機(AT) ギアチェンジを自動で行う 運転操作が簡単、快適な運転 燃費がMTに比べて劣る場合がある
半自動変速機 自動変速と手動変速の両方可能 運転の快適さと燃費効率の両立 構造が複雑でコストが高い場合がある
無段変速機(CVT) 歯車を使わずに連続的に変速比を変化 滑らかな加速、優れた燃費性能 急加速時のレスポンスが劣る場合がある、エンジン音が単調になりがち

電子制御変速の仕組み

電子制御変速の仕組み

自動で変速する仕組みを持つ乗用車は珍しくありませんが、大型の貨物自動車や乗合自動車では、少し前まで自分で変速操作をするのが当たり前でした。そのような状況で、変速操作を自動化する技術が登場しました。それが電子制御変速です。これは、ドイツの自動車会社ダイムラー・ベンツが開発した技術で、大型の貨物自動車や乗合自動車向けに作られました。正式には電子式動力変速と呼ばれます

この電子制御変速の仕組みは、少し複雑です。動き出す時や後ろへ進む時は、従来の車と同じように、足元の踏板を使って自分で操作する必要があります。しかし、走り出してからは、変速操作が自動化されます。運転席の計器板には、今どの変速段を使うべきかを示す表示があります。運転手は、その表示に従って、変速用の操作棒を動かすだけで変速できます。

具体的には、車の速度が上がって変速のタイミングになると、操作棒を前に押すと自動的に変速段が上がります。逆に、速度を落とす時は、操作棒を引くと変速段が下がります。この時、足元の踏板を操作する必要はありません。自動で変速段を切り替えてくれます。つまり、電子制御変速は、足元の踏板による操作と、手による操作棒の操作を組み合わせた方式と言えます。これにより、運転手の負担を減らしつつ、スムーズな変速を実現しています。

電子制御変速の利点は、運転手の負担軽減だけではありません。燃費の向上にも貢献します。最適な変速段を自動で選択することで、エンジンの効率を最大限に引き出すことができるからです。また、変速時のショックも軽減されるため、乗り心地も向上します。大型の貨物自動車や乗合自動車にとって、これらのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

項目 内容
名称 電子制御変速(電子式動力変速)
開発 ダイムラー・ベンツ
対象 大型貨物自動車、乗合自動車
発進・後退 従来通り足元のペダル操作
走行中 自動変速
操作方法 計器板の指示に従い操作棒を前後に操作
変速操作 操作棒の前後操作のみ(ペダル操作不要)
方式 ペダル操作と操作棒の併用
利点 運転手の負担軽減、燃費向上、乗り心地向上

運転操作の簡素化

運転操作の簡素化

電動式動力舵取装置(電動パワーステアリング)は、従来の油圧式に比べ、より繊細な制御を可能にし、運転操作の簡素化に大きく貢献しています。例えば、駐車時や低速走行時などハンドル操作が重い場面では、電動モーターがアシスト力を高めることで、少ない力でハンドルを回すことができます。逆に、高速走行時などではアシスト力を抑えることで、安定した操舵感を得ることができます。

また、電動パワーステアリングは、単なるアシスト機能だけでなく、様々な運転支援機能の実現にも役立っています。車線逸脱抑制装置では、車両が車線を逸脱しそうになると、電動パワーステアリングが自動的にハンドルを修正し、事故を未然に防ぎます。さらに、自動駐車システムでは、ハンドル操作を自動で行うことで、駐車操作の負担を大幅に軽減します。

電子制御式自動変速機(自動クラッチ)も、運転操作の簡素化に大きく寄与しています。特に、大型貨物自動車や乗合自動車などの大型車両では、変速操作が頻繁に発生するため、運転者の負担が大きくなりがちです。電子制御式自動変速機は、これらの変速操作を自動化することで、運転者の疲労軽減に大きく貢献します。また、最適な変速タイミングを自動的に判断することで、燃費向上効果も期待できます。

さらに、計器盤に表示されるシフトスケジュールは、運転者に最適な変速タイミングを知らせ、スムーズな運転を支援します。発進時や後退時を除き、繋ぎ操作の必要がないため、運転者は運転操作に集中することができます。これらの技術革新により、運転操作はますます簡素化され、安全性と快適性の向上に繋がっています。

装置 メリット 具体例
電動パワーステアリング 繊細な制御による運転操作の簡素化 駐車時や低速走行時のハンドル操作を軽くする
安定した操舵感 高速走行時のハンドル操作を安定させる
様々な運転支援機能の実現 車線逸脱抑制、自動駐車
電子制御式自動変速機(自動クラッチ) 運転操作の簡素化(特に大型車両) 変速操作の自動化による運転者の疲労軽減
燃費向上効果 最適な変速タイミングの自動判断
最適な変速タイミングの表示 シフトスケジュールによるスムーズな運転支援
発進・後退時以外は繋ぎ操作不要 運転操作への集中

手動変速への変換

手動変速への変換

電動パワーステアリング(EPS)搭載車は、特別な条件下で手動変速機構に戻せるように設計されているものがあります。これは、EPSの機構全体を改めて設計するのではなく、既存の手動変速機の土台を活用して作られているためです。この元々の設計思想が、いざという時に手動操作を可能にする鍵となっています。

EPSの大きな長所の一つは、この手動変速への切り替えと言えるでしょう。例えば、滑りやすい雪道やぬかるんだ泥道など、路面状況が複雑な場合、運転者は繊細な速度調整を必要とします。このような状況では、自動制御よりも、自身の感覚でギアを選び、エンジンの回転数を直接操作する手動変速の方が、より確実な走行制御を行うことができる場合があります。また、上り坂で強い駆動力を得たい時にも、手動変速で低いギアを選択することで、より力強い加速を得ることができます。

さらに、EPSのシステムに何らかの不具合が発生した場合にも、手動変速機構は大きな安心材料となります。電子制御系統のトラブルでEPSが正常に作動しなくなったとしても、手動変速に切り替えることで、安全に車を動かし続け、修理工場など安全な場所まで移動することが可能になります。これは、車が走行不能になるリスクを大幅に低減し、ドライバーの安全を守ることにも繋がります。

このように、状況に応じて手動変速と自動変速を使い分けられる柔軟性は、EPSの信頼性を高める上で非常に重要な要素です。予期せぬトラブルや特別な運転操作が必要な状況でも、ドライバーは安心して運転を続けることができるため、EPS搭載車は様々な場面で頼りになる存在と言えるでしょう。

EPSのメリット 説明 具体的な場面
手動変速への切替 自動制御よりも、自身でギアを選びエンジン回転数を操作することで、より確実な走行制御を行うことができる。 滑りやすい雪道、ぬかるんだ泥道、上り坂
システム不具合発生時の対応 EPSが正常に作動しなくなっても、手動変速に切り替えることで安全に車を動かし続けられる。 電子制御系統のトラブル時
EPSの信頼性向上 状況に応じて手動変速と自動変速を使い分けられる柔軟性。 予期せぬトラブルや特別な運転操作が必要な状況

全自動との比較

全自動との比較

自動で変速する装置の進化は目覚ましく、いすゞ自動車が開発した『NAVI』という完全自動変速機は、まさに時代を先取りした技術と言えるでしょう。この『NAVI』と、今回ご紹介する『EPS』を比較することで、それぞれの持ち味が見えてきます。『NAVI』は、どんな状況でも機械が自動で変速してくれる優れものです。アクセルを踏む、ブレーキを踏むといった基本操作だけで車がスムーズに走り、運転はとても楽になります。まるで運転手が運転技術を持っているかのように錯覚するほど、滑らかな走りを実現してくれるでしょう。一方、『EPS』は、自動と手動、両方の特徴を併せ持った変速機です。基本的には自動で変速してくれますが、運転手が手動で変速操作を行うことも可能です。自分の思い通りに操りたい、運転の楽しみを味わいたいという人に向いていると言えるでしょう。『NAVI』のような完全自動変速機は、複雑な機械の組み合わせでできており、開発には高度な技術が必要です。部品点数も多いため、どうしても車両価格が高くなってしまうという側面もあります。また、機械がすべてを制御するため、燃費の面で不利になる場合も見られます。対して『EPS』は、『NAVI』と手動変速機の中間に位置するシステムです。ある程度の自動化と、手動操作による自由度の高さを両立させています。価格と性能のバランスを考えると、『EPS』は魅力的な選択肢の一つと言えるでしょう。どちらの変速機が良いかは、車の使われ方や運転する人の好みによって変わるでしょう。例えば、長距離運転が多い人や、運転に慣れていない人は、『NAVI』のような完全自動変速機を好むかもしれません。一方、スポーツカーのように、車を操る楽しみを重視する人は、『EPS』のような手動操作の要素が残る変速機を選ぶ傾向があります。このように、運転の快適さと運転する楽しみという、相反する要素をどのように組み合わせるかが、変速機の進化における永遠の課題と言えるでしょう。

項目 NAVI (完全自動変速機) EPS (自動/手動変速機)
変速方式 完全自動 自動/手動
運転操作 アクセル、ブレーキ操作のみ 自動変速をベースに手動操作も可能
運転感 滑らか、楽 思い通りに操れる、運転の楽しみ
価格 高価 NAVIと手動変速機の中間
燃費 不利な場合も 記載なし
メリット 運転が楽、滑らかな走り 価格と性能のバランス、運転の楽しみ
デメリット 高価、燃費が不利な場合も 記載なし
向いている人 長距離運転が多い人、運転に慣れていない人 車を操る楽しみを重視する人

効率と快適性の調和

効率と快適性の調和

人の手による仕事を機械に置き換えることで、楽に運転ができるようにし、同時に燃料の節約も目指した仕組みが、動力伝達効率制御です。

人が操作していた繋ぐ、切るといった複雑な操作を自動で行うことで、運転する人の負担を軽くし、心地よい運転を実現します。さらに、あらかじめ決められた手順に沿って、一番良いタイミングで動力の伝わる速さを変えることで、燃料の無駄な消費を抑えます。

大きな貨物自動車や乗合自動車のような、車体の大きな乗り物にとって、燃料をどれくらい使うかは、とても大切なことです。動力伝達効率制御は、快適な運転と燃料費の節約を両立させることで、荷物を運んだり、人々を運んだりする仕事の効率を高めます。

この仕組みは、単に動力の伝わる速さを変える装置を進化させただけではありません。荷物を運ぶ、人々を運ぶといった仕事全体を、より良くするために大切な役割を担っています。たとえば、長距離を走る運転手の疲労を減らすことで、安全な運行に繋がります。また、燃料消費を抑えることは、地球環境にも良い影響を与えます。

このように、動力伝達効率制御は、運転する人の負担を軽くし、燃料の無駄な消費を抑え、ひいては輸送の仕事全体の効率を上げるだけでなく、安全運行や環境保護にも貢献する、大変優れた技術と言えるでしょう。

項目 内容
動力伝達効率制御の目的 運転の負担軽減、燃料節約
仕組み 繋ぐ・切る操作の自動化、最適なタイミングでの動力伝達速度変更
メリット
  • 運転手の負担軽減による快適な運転の実現
  • 燃料消費の抑制
  • 輸送効率の向上
  • 長距離運転手の疲労軽減による安全運行への貢献
  • 燃料消費抑制による環境保護
効果を発揮する場面 大型貨物自動車、乗合自動車など、車体の大きな乗り物