ビスカスカップリングユニット:その仕組みと特徴
ビスカスカップリングユニットは、四輪駆動車やセンターデフに使われる、動力を自動的に振り分ける装置です。車には前輪駆動や後輪駆動といった種類があり、四輪駆動車は状況に応じて全てのタイヤを駆動させることで、力強い走りを生み出します。しかし、四輪全てに同じだけの動力を送ると、タイヤの回転差によって車が不安定になることがあります。ビスカスカップリングユニットはこの問題を解決し、安定した走行を実現するために開発されました。
ビスカスカップリングユニットは、主にシリコーンオイルという粘り気のある液体で満たされた密閉容器の中に、多数の薄い金属板が重ねて配置された構造をしています。この金属板は、入力側と出力側にそれぞれ接続されています。通常の状態では、前輪と後輪の回転速度に差がないため、シリコーンオイルはほとんど動きません。しかし、雪道や凍結路面など、タイヤが滑りやすい状況になると、前輪と後輪の回転速度に差が生じます。
例えば、後輪が空転を始めると、シリコーンオイルをかき混ぜる力が生まれます。すると、シリコーンオイルの粘度が上昇し、抵抗が大きくなります。この抵抗によって、空転している後輪への動力伝達は抑制され、前輪への動力伝達が増加します。その結果、車は安定した走行を続けることができます。
ビスカスカップリングユニットの最大の利点は、機械的な制御ではなく、シリコーンオイルの粘度変化を利用している点です。このシンプルな構造のおかげで、特別な操作を必要とせず、路面状況の変化に合わせて自動的に作動します。また、小型軽量で耐久性にも優れているため、多くの四輪駆動車に採用されています。路面状況を常に監視する必要がなく、安全で快適な運転をサポートしてくれる縁の下の力持ちと言えるでしょう。